奇書『エロ本自販機探訪記』の有害図書指定 著者「そんなものかなと思った」

薄暗いエロ本自販機小屋で怪しく光るアダルトグッズやDVD(提供:黒沢哲哉さん)

いまも全国各地に残る「エロ本自販機」。かつてはエロ本を、いまはおもにアダルトDVDやアダルトグッズを販売する自動販売機のことです。一見、人けのない道路脇にポツンと立つ小屋でじっとお客さんがやってくるのを待っています。ライターで編集者の黒沢哲哉さんは、エロ本自販機小屋を400カ所以上も取材したつわものです。

しかし、黒沢さんの著書『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』(双葉社)は、滋賀県で「有害図書指定」されてしまいました。黒沢さんは、そのことをどう捉えているのでしょうか。聞いてみると、黒沢さんの「エロ本自販機」に対する熱い思いのこもった答えが返ってきました。

【インタビュー前編】消えゆく「エロ本自販機」 ロードサイドの掘っ立て小屋を追え!

高齢化が進む「エロ本自販機」の利用者

ーーエロ本自販機小屋は自治体の境界線、つまり「エッジ」に多いということですが、ほかにはどのような場所にあるんでしょうか?

黒沢:僕が見つけた法則としては、「幹線道路と幹線道路をつなぐ道」というのがあります。たとえば、東京から北に向けて東北自動車道と常磐自動車道が走っています。こういう道を横に結ぶ道路沿いにあることが多いんです。あとは、ごみ焼却施設の近くとか低湿地とか、地価が安くて、飲食店を出すのが難しそうな場所ですね。その一方で、住宅街だったり農道だったり、地元の人しか通らない道にあることもあるんです。そういう場所は「熟女モノ」の商品が多いので、たぶん地元のおじいちゃんたちが使っているのでしょう。

ーーやはり利用者はネットに疎い高齢者が多いのでしょうか?

黒沢:「ネットが使えない=高齢者」と思いがちですが、エロ本自販機業者の話では、東北にはブロードバンドの普及が相当遅かった地域があったらしいんです。ネットが使えるといってもADSLでちょろちょろとやっているのでは、エロ動画が快適に見られない。だからそれまでは、いろんな人がエロ本自販機のDVDに頼っていたようですね。ただ、さすがにいまは、そうでもなくなっているので、お客さんが高齢化しています。

エロ本自販機を撮影しに行くときの装備を身につけた黒沢哲哉さん

ーーエロ本自販機を訪ね歩くなかで、発見はありましたか?

黒沢:僕らの時代は、若い人の間にエロ本を「シェア」する文化がありました。いらなくなったエロ本を公園とかに置いておいて、誰かにドキドキしながら拾ってもらうわけです。お兄さんは若い連中にそうやってエロを伝えていく。それと同じことがいま、自販機で起きているんです。

ーーどういうことでしょうか。

黒沢:僕は「お土産」って呼んでるんですけど、エロ本自販機に行くと、ゴミ箱のところに本が積んであったり、開封してないDVDがぽいっと置いてあったりするんです。「持っていっていいよ」って感じで。九州の小屋を訪ねたときは、雑誌のおまけDVDの未開封のやつが、紙袋にいっぱい入れて置いてあって。「さあどうぞ!」みたいな。それがうれしいかどうかは、人によるんでしょうけど。

エロ本自販機も「誰かがとどめておかなければ」

ーーそうやって取材を重ねて書いた黒沢さんの著書『エロ本自販機探訪記』は、滋賀県で有害図書指定されてしまいました。そのことは、どうとらえていますか。

黒沢:「あ、そんなものかな」と思いました。僕は「表現の自由がどうの」と言うつもりはないんですね。向こうの言い分としては、せっかく絶滅させたエロ本自販機がまた注目されるのはいかがなものか、というものでしょう。滋賀県はゼロなんですよ、エロ本自販機が。向こうも「そっとしておいてくれ」と思っているわけじゃないですか。僕もことを荒立てるつもりはないので、そこは気持ちが一致しているんです。むしろ変な風に注目されて、ほかの地域からもエロ本自販機が撤去されたら嫌なので、静かにしていようと思っています。

ーーエロ本自販機は今後、増えることはないのでしょうか。

黒沢:エロ本自販機自体が、もう作られていないんですよ。中古の自販機から部品を取りながら、やりくりしている状況でして。エロ本自販機の寿命って2、30年らしいんです。ドリンクの自販機のようなエアコンプレッサーがないので故障率は低いらしいですけど、それでも寿命がきているんです。

ーー消えゆくエロ本自販機に、どのような思いがありますか?

黒沢:エロ本自販機のピークのころ、僕は大学生だったので、自販機本自体に郷愁があるんですよね。自販機で買ったエロ本をシャツの下に隠して、家まで持って帰った思い出がある。それが消えていくとなると、「記録しておかなきゃ」という思いが強くなります。僕がこれまでやってきたことは、昭和レトロなものとか漫画とか、わりと子供っぽい趣味が多いので、エロ本自販機だけが異質に見えるかもしれないんですけど、僕のなかでは一緒です。「昆虫採集セット」と一緒で、誰かがとどめておかなければならないんです。僕がここで記録しておけば、これが足がかりとなって、次の世代に資料として残せるんじゃないかと思っています。

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