女装小説家が感じる快感「男性としての自分が消える」

女装する小説家・仙田学さん(撮影:岩切卓士)

女装を趣味として楽しんでいる小説家・仙田学さん(43)。2002年に文芸誌「早稲田文学」の新人賞を受賞して以来、前衛的な純文学の小説やライトノベルを発表しています。仙田さんは「女装」と「小説」で通じ合う点があるといいます。それは一体何なのでしょうか? 東京・新宿二丁目の女装サロンバー『女の子クラブ』で、話を聞きました。

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男性の自分が消える快感

――女装をしていて特に楽しさを感じるのはいつでしょう?

仙田:「女装した自分」を流通させている時でしょうか。最近、呼ばれたイベントや大学の授業などで女装をすることが多いんです。特に人前に出るのが好きなわけでもないんですが、女装をして出ていると、自分で「自分を生んで、育てている感じ」がします。

――新しいものを生み出すという意味で、小説などの表現活動にも近いのでしょうか?

仙田:小説もそうですね。新しいものを生み出す前に「自分を一回消す」作業も似ているかもしれません。小説を書くとき、身近で起きた経験だけをネタにしていると、すごく狭い世界になってしまう。だから「普段の自分」から「作家の自分」に変身して小説を書いている感じなんです。

白いワンピース姿の小説家・仙田学さん

――まず「自分を消す」作業があるんですね。

仙田:女装をして、女性として見られるということは、男性の自分は消されたということ。自分が消える快感があります。あと「男らしさの否定をしたい」という側面もあるのかもしれません。私は父がとても威圧的で、ずっと折り合いが悪かったんです。父は高度成長期にサラリーマンになって、定年までずっと同じ会社に勤めていました。よく言われたのは「いい大学に行って、いい会社に入れば幸せになれる」と。でも「それは絶対に違う」と思っていました。私はそれに対して「自分なりの価値観を見出さないといけないな」と。

「寂しさ」と向き合いたい

――「自分なりの価値観」を見つけるために、女装をしたり、小説を書いていると。

仙田:人間は最終的には一人で死ぬし、一生寂しい存在だと思っています。特に小説を書くのは孤独な作業。子どもは「寂しい」と言ってもいいけれど、大人になったら言わなくなりますよね。でも、寂しさから目を背けるのではなく、向き合いたいと思っています。

――今後のご活動の展望を教えてください。

仙田:一番やりたいのは、女装がテーマの小説を書くことです。私が書きたいのは純文学。その定義には色々あると思いますが、私の定義は「その人にしか書けないものを突き詰めて書くこと」。自分の寂しさと向き合いながら書くことで、他のどんな作品にも似ていない作品ができ上がるのではと思っています。

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