JR福島駅周辺で「ふくしまの日本酒」をたらふく飲んで日帰りした話

駅から6~7分のところに夢のような空間が

先日、福島へ無計画なひとり旅をして楽しめたので、DANRO読者のみなさんにも共有しようと思う。しかし、福島といっても、会津でも郡山でもなく、いわきの海水浴場でもない。観光地としては馴染みの薄い、県庁所在地の「ザ・福島」である。

念のために確認すると、磐梯山も見ず、五色沼も眺めず、大内宿にもスパリゾートハワイアンズにも行かなかった。新幹線で午前中のうちにJR福島駅に降り立ち、駅構内と近場の街を徒歩でうろうろして、日帰りで帰ってきたのである。

「絶対に外せない福島県の観光スポット」には、絶対に入らないコースである。好みはそれぞれなので、みなさんに合うかどうか分からないが、中には気に入る人もいるかもしれないので、思い出しながら行程を書いてみたい。

6年連続日本一の実力はいかに

朝7時。土曜日なのに予定より早く目覚めてしまったので、仕方なく顔を洗い、ぼんやりしていると、無性にうまい酒が飲みたくなった。

そういえば今年の全国新酒鑑評会は、福島県の酒蔵が金賞受賞数6年連続日本一を獲得したんだっけ。福島のお酒をたくさん、それもいろんな蔵のものが飲めたらーー。

そう思ったら、なんとなく福島に行きたくなった。どこなら一番たくさん飲めるのだろう。スマホで「福島 日本酒 飲み比べ」を検索すると、「県観光物産館リニューアル」という新聞記事がヒットした。

JR福島駅近くの複合施設「コラッセふくしま」の中に福島県の観光物産館があり、昨年末のリニューアルで日本酒の飲み比べができるラウンジができたという。県の施設なら間違いないだろう。大宮から新幹線で1時間足らずなら近いものだ。

車両が大宮駅を離れると、東京に置いてきた仕事の山や重いしがらみが、後ろ髪を引かれるようにしながら少しずつはがれていくのが分かった。やはり、たまには長い距離を移動するのは必要なことなのだ。

全10種制覇しても2400円のお得感

10時46分福島駅着のつばさ131号を降りると、観光物産館はすでに営業を始めていた。朝9時半からやっているという。朝から何も食べていないので空腹だが、新幹線でひと眠りしたので頭はすっきりしている。

フロアには、県内の名産品がところ狭しと並んでいる。お菓子や加工肉、ラーメンや果物などなど。採れたての桃とプラムの出張販売をしていて、試食したら甘くておいしかったので購入した。

店の奥には大きな冷蔵庫があり、聞くとここには福島県内のほぼすべての酒蔵のお酒が集められているそうだ。やはり、間違いなかった。

ラウンジにはカウンターがあり、日本酒の飲み比べのメニューが2つあった。6種類の中から3種類を選ぶ「週替りコース」が500円(税込み。以下同じ)。4種類の中から2種類を選ぶ「プレミアムコース」が700円。それに、おつまみが300円というラインナップだ。

まずはどれを選ぼうか。いや、今回の旅の目的は、もともと「多くの種類を飲むこと」ではなかったか。ここで飲めるのは合計10種類。全部飲んでも2400円だ。そうと決まれば、順番など迷う必要もない。

芳醇な吟醸香に陶酔

まずは週替りコースの上から3つ、「花泉 吟醸」と「東豊国 大吟醸 幻」。それに「TOYOKUNI 純米吟醸原酒」を注文した。どれも素晴らしい吟醸香が漂う。上質なお酒をちゃんと管理して出してくれている感じがして、満ち足りた気分になる。

特に「TOYOKUNI」は、焼酎を醸すときに使われる白麹を使って強い酸味を出しており、これが食欲を刺激した。週替りのおつまみを頼むと、魚の練り物と、ゆず大根の漬物が出てきた。特にゆず大根は最高の酒のアテであるので、みなさんにもおすすめしたい。

ひととおり飲み終え、今度はプレミアムコースの下から2つを注文することにした。「名倉山 大吟醸」と「寿々の井 大吟醸」。こちらもフルーティな香りがするが、プレミアムというだけあって芳醇というか、白い花のように鼻を強く刺激する。

このあたりになると、だいぶ酔いが回ってきて、味を細かく分析することが難しくなってきた。これは何か腹に入れなければならない。テーブルの上のものを平らげると、まだ昼前だというのに千鳥足で駅の方に戻った。

福島県観光物産館の「飲み比べセット」プレミアムコース。左のおつまみはごぼうの黒ごま和え

駅ビルには回転寿司やスーパー銭湯も

改札に向かう途中に「うまか亭」という回転寿司があった。そこでさんまや生だこ、赤いか、さめがれいに、あぶった鰆(さわら)、活き締めした鱸(すずき)、黒鯛などを食べた。そして、飲み比べメニューにはなかった「金水晶」というお酒の小瓶を頼んだ。

さらに、宮城のホヤの酢の物と、大将おすすめのプチトマトの天ぷらを食べた。どれもネタが新鮮で、味がいい。特にホヤはお酒との相性が抜群だ。旬のアジとカツオを追加すると、さすがにお腹がいっぱいになったので、少し散歩をすることにした。

駅ビルの魚屋をのぞくと、岩手の生カツオや、宮城のキハダマグロが売っている。茨城から来た魚もあった。福島市には海はないが、流通がよいのだろう。

線路にかかる陸橋から、きれいな山が見えた。山が見える生活も悪くないと思った。何百年、何千年も前から変わらない悠大な自然が常にそこにあると、こせこせした人間の営みを相対化できる。こういう感覚は、東京ではなかなか得られにくい。

ずいぶん散歩したが、一向にお腹がこなれる気配がしないので、風呂に入ることにした。福島駅ビル内にあるスーパー銭湯「極楽湯」である。何でも揃う駅ビルだなあ。露天風呂で伸びをすると睡魔が襲ってきて、ベンチで少し眠った。

JR福島駅構内の回転寿司で味わえる宮城のホヤの酢の物。日本酒との相性が抜群

「ふくしま屋台村」は一見の価値あり

ここまでずいぶん字数を使ってしまったので、この後は端折らざるをえないが、結局その後、観光物産館に戻り、日本酒の飲み比べの残りの5種類を飲んで全種類制覇した。本当にどれも完璧なお酒だった。おつまみは、ゆず大根の漬物がごぼうの黒ごま和えに差し替えられており、これがまたよかった。

そして帰りの新幹線までの残された時間で、できるだけ街に出てみようと考えた。良さげな店を訪ねるが、早い時間からどこもいっぱいだ。そのうち街は暗くなり、「ふくしま屋台村」という提灯の下がった一角に来た。

ここがとてもよかった。渋谷ののんべえ横丁の店の昭和の雰囲気そのまま、ひとまわりくらい大きくしたような感じなのだ。きれいな若い女性がやっている店もあったが、一番手前の「あねさの小法師」という店に入った。会津出身のお母さんがひとりで切り盛りしていた。

ここで「寫楽(しゃらく)酒未来」や「千功成(せんこうなり)純米吟醸」などを飲み、馬刺しや円盤餃子、ニシンの山椒漬けなどをおいしくいただき、酩酊して新幹線で爆睡して帰った。飲んだお酒は、たぶん13種類。いや14種類だったかもしれない。みなさんにもぜひ試していただきたい。

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