女ひとり博多遠征。目的は大相撲九州場所「砂かぶり席」での観戦でした

相撲が好きすぎて博多まで遠征した

横綱・稀勢の里関が休場を発表したのは、11月15日朝のこと。そのころ、私は、大相撲九州場所が開催されていた福岡市博多区にいました。幸い、九州場所5日目の溜席(たまりせき、詳しくは後述)が取れたので、博多まで遠征していたんです。

4日連続で負けを喫するという、横綱としては87年ぶりの異例の事態が起きていました。引退会見をするか、このまま出場し続けるか、あるいは、休場するか……。3つしかない選択肢のうち、稀勢の里関がどれを選ぶのか、日本中が注目していたと思います。

博多駅西日本シティ銀行前のバス停から会場に向けて出発

結果は休場、という選択肢でした。私がそれを知ったのは、10時前に福岡空港へ到着してからでした。稀勢の里関を生で見られないのは残念だけれど、また負ける姿は見たくない……。

そんな複雑な思いを抱えながら、博多駅に荷物を預け、駅前からバスに乗って、会場となる福岡国際センターへ向かいます。揺られること十数分。

大相撲が開催される福岡国際センターはバス停からすぐ

会場付近に着くと、関取たちの名前が書かれた「相撲のぼり」がはためいています。

華やかな相撲のぼり

これを見るたびに大相撲を観にきたぞ、という気持ちになるんですよね。相撲ファンにはたまらない風景です。

「溜席」と「マス席」から見える世界は全然違う

会場入りしたのは、11時少し前。今回、溜席(別名「砂かぶり席」)という土俵に最も近く、金額的に高い席(といっても、マス席より+4000円程度)を手配していたせいか、スタッフさんが席まで案内してくれます。

日本相撲協会の公式マスコットキャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の主人公「ひよの山」が溜席用のシールに

溜席専用のシールも渡され、見えるところに貼りました。少し特別な感じですね、溜席。ただ、私が案内された溜席は、溜席とはいっても、土俵から力士が転げ落ちた際に接触する可能性のある前方の席ではなく、溜席最前列から5番目です。

後ろに背もたれ的な木がありラッキー

ただ、今までマス席から見ていた者としては、土俵や力士、審判役をしている親方との距離がかなり近いものに感じられます。

溜席の前から5列目でも、土俵や控え力士との距離の近さたるや

出番を前に控えている力士と私との距離は、3メートルくらいでしょうか。とても近いです。

溜席最後列にも、力士のいい香りが届く

ところで、力士はとてもいい匂いがするのをご存知ですか? 髷(まげ)を結うときに使う「鬢(びん)付け油」は、甘さの度合いがちょうど良い香りで、品の良い和の香水、という感じ。

会場入りする力士たち。みんないい香り

会場付近で数人の力士とすれ違ったときも、ぷーんと香りが漂いました。これがクラクラするくらい、素敵な香りなんですよね。

その鬢付け油が香ってくる距離感、とでもいうのでしょうか。力士が入場してきたり、下がったりするたびに空気の振動が起こるせいか、甘い香りがふわわ〜っと香ってくるんです。

溜席5列目の私の席にすら届く香り……。鬢付け油の香りが好きな者としてはたまりません。最高。

取組中の力士、控え力士の表情を観察する楽しみも

嗅覚に訴えるものだけではありません。当然、視覚に訴えかけてくる要素もあります。たとえば、背中の肌の質感も肉眼で見えるし、取組直前の稽古中にできたと思われる大きな「手形」も、真っ赤な状態でくっきりと残っています。

取組中の力士の表情もじっくり見ることができました。

大相撲の会場には、「東」「西」「正面」「向正面」の4方位があります。テレビ中継などで映るのは、行司が立っている「向正面」。その反対側の「正面」にテレビカメラが配置されます。

私は「西」に座っていたので、東の花道から入場する「東方力士」の正面からの表情と、西の花道から入場する「西方力士」の仕切り時の右側の横顔がしっかり見えました。

力士の表情や目線はそれぞれ違って面白い。土俵下に控えている際、対戦相手の方をじっと見ている力士もいれば、目を閉じて精神統一しているように見える力士もいます。

土俵に上がってからも皆、異なる顔をします。たとえば、幕内力士の石浦関。この日は対戦相手の若隆景関を鬼の形相で睨みつける目が印象的でした。

インタビュー等で見る石浦関はとても温厚なので、土俵上であんなに怖い表情をするなんて、想像もしていませんでした。そういった細かいことは、マス席に座っていたときには見えなかったのです。

力士の息遣いも近くで感じられる距離感

聴覚で感じ取れるものもあります。それは力士たちの息遣い。すぐそばから聞こえてくるのです。十両力士の取組で、長時間にわたる熱戦がありました。この九州場所から新十両になった極芯道関と、13場所ぶりに十両復帰した豊ノ島関の取組です。

「はぁ、はぁ」とか「ん、ん」みたいな呼吸が、私の席まで届くんです。紅潮してゆく顔、荒くなる息遣い……手に汗を握ってその取組を見続けて、ようやく決着が付いたときには、両力士に心からの拍手を送りました。この席で見られて良かったな、と思った瞬間です。

土俵が思いの外、高さがあることにも驚きました。土俵の高さは『大相撲手帳』(杉山邦博監修、東京書籍)によると、66cm(2尺2寸)と規定されています。ネット上には「34〜60cm」という情報が目立ちますが、確実に30数センチどころではないと感じます。やっぱり高い。

取組中に土俵の外に出されて、100kg超、いや100kg台後半の肉体が、そこから転げ落ちるとなると、力士本人にも負担はあるし、下に控える力士や親方にも相応のダメージがあると想像します。

いやはや、見る席が変わると、これまで見えなかったことが見えてくるなぁ、と感じながら見ていました。ただ、大相撲は8時半ごろから18時までの超長丁場。

オリジナルグッズやお土産などを売る物販コーナー

私の場合は11時ごろに来場し、三段目の取組途中から見ているわけですが、ずっと座っていると腰やお尻がカチコチになります。そのため、ときどき休憩をとることが必要です。

物販コーナー横の入口は関取の入り待ちスポット。撮影するお客さんが集合している

全部見るのは無理。適宜ウロウロして休憩を

見たい取組はできる限り(無理をしない程度に)見て、他の取組は惜しいけどあえて「捨てる」。捨てるというと言葉は悪いですが、昼食を食べに外へ出ている間、見たい取組があったとしても、それは諦める。あまりにも長時間続く興行ゆえ、ある程度、諦めることは必要です。

出番の前にウォームアップする力士たち

前回訪れた名古屋場所(愛知県立体育館)のときと同様、ときどき会場をウロウロします。入ってきたときと逆の道を通ると、西方力士が入場する花道があります。そこは力士の通路でもありますが、お客にとっての通路でもあります。

そこを通ると、自分の取組を前に控えている力士が6〜7人はいたでしょうか。四股を踏んだり、腰割りをしたり、それぞれのペースでウォームアップしていました。

三段目〜幕下の取組の際、そこを通りましたが、付き人が付く十両・幕内力士の取組中だと、もっと大人数の力士で溢れかえっているのではないでしょうか。ひとりの関取に1人〜数人、横綱クラスだと10人近くは付き人が付く、と考えると、それはもう大勢でしょう。

名古屋場所以来、久々に間近で目にする巨大な力士たち。またもや「すごい迫力あるボディだな……こんな肉体を作るまで、どれだけ大変なことがあったんだろう……すごい」と感激しつつ、力士たちの間をすり抜けてお手洗いに向かったのでした。

マス席用に組まれた足場が通路から見える

解説付きの大相撲を自宅でゴロゴロしながら見るのも快適で、かつ勉強になって、とても楽しい時間ではありますが、会場でしか見えない景色、裏舞台があります。だからこそ、できることなら会場へ観にいきたい。

厳しいチケット争奪戦を勝ち抜いて、一月場所の両国国技館も一度は観戦に行きたいですが、再び溜席を取るかどうかは悩んでいます。溜席は飲食禁止、撮影禁止、力士個人への声援も禁止とNG事項が多いので……。

ただ、興味のある方には、一度は溜席からの景色を見ていただきたいです。マス席とは全然違う景色が見えるはずですよ。

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