もっと広く伝えられるべき米軍「性暴力」の歴史~沖縄・東京二拠点日記13

沖縄の街並み(Photo by Getty Images)

10年ほど前から東京と沖縄の間を往復する「二拠点生活」を送っている。那覇市内のマンションをもう一つの自宅として、沖縄の人々と交流しながら、フリーランスのノンフィクションライターとして取材し、原稿を書いている。そんな生活を日記風に書きつづる連載コラム。今回は、新著『沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち』のプロモーション活動と並行して、沖縄の「重い歴史」が沈んでいる場所を訪ねた。

ハンセン病療養施設「愛楽園」へ

【10月23日】琉球新報社へ。文化部の新垣(あらかき)梨沙記者のインタビューを受ける。ぼくが世に出した『沖縄アンダーグラウンド』で書いた夜の街の世界を、どうして地元紙がこれまで取り上げてこなかったのか。なぜ「取り締まる」側の意見しか書いてこなかったのか、がテーマだった。

インタビューを終え、帰ろうとして泉崎の交差点を渡ろうとしたら、携帯にノンフィクションライターの安田浩一さんから電話。「もし那覇にいたらメシ行こうよ」というお誘い。安田さんといえば、著書『ネットと愛国』等でネット右翼と対峙するジャーナリストというイメージが強いが、今回は沖縄にはびこる中国脅威論を検証・取材にしきたという。

中国脅威論は、沖縄に米軍基地を置いておきたい側のロジックだが、沖縄ではどう語られているのか。安田さんらしい取材だ。彼と栄町で待ち合わせをして焼き鳥屋の「チェ鳥」へ。京都から移住してきた崔泰龍さんのとびきり美味い焼き鳥を食べる。

「チェ鳥」にて、ジュンク堂の森本店長(左)と安田浩一さん(中央)と筆者(右)

そこに、ジュンク堂の森本店長や毎日新聞の記者も合流して、神里原(かんざとばる)の「もえぴ」という妖しい(?)バーへ。

「もえぴ」は西平萌恵さんがオーナーで、彼女の趣味で店中がぜんぶピンク。朽ちた雑居ビルの一室をデコレーションした、かっこよすぎるセンスに浸りながら一杯飲んで、取り壊されゆく神里原やのうれんプラザ(旧農連市場)周辺を酔い醒ましにぶらぶら歩いた。

店中がピンクのバー「もえぴ」

かつて沖縄の戦後復興の象徴の1つといわれた農連市場は取り壊され、コンクリートの立派な建物になった。それにともない周辺の老舗飲食店もずいぶん廃業して、街の空気ががらっと変わった。

【10月24日】カメラマンの深谷慎平くんと合流して、名護を目指す。高速道路の伊芸サービスエリアで「チーイリチー」を食べ、「沈黙の声を聴く 沖縄の日本軍慰安所と米軍の性暴力パネル展」を見に行った。

占領米軍の性暴力のひどさについては、拙著『沖縄アンダーグラウンド』でも「レイプの軍隊」という章を設けて詳しく書いたが、こういう展示はとても重要で、もっと広く伝えられるべきだと痛感した。できれば県外も巡回して、多くの人が見るべきだと思う。

沈黙の声を聴く 沖縄の日本軍慰安所と米軍の性暴力パネル展

そのあとは橋を渡って屋我地島にある「愛楽園」へ。言わずと知れたハンセン病療養施設である。園内は広大で自由に散策できる。沖縄愛楽園交流会館で歴史を見たあと歩いた。

生まれた子供を埋めていたという浜があり、「声なき子供たちの碑」が立てられていた。激しい差別を受け、隔離されたこの島で一生を過ごすことを強制された人生を思うと、こらえきれない気持ちになる。園にはまだ多くの人が暮らしている。理容室や食堂、郵便局、教会、農園などがあり、ここが一つの「街」であることがわかる。長らく人たちを閉じ込めてきた「街」だった。

重たい気持ちを引きずりながら泊にある「串豚」へ行き、彫刻家のの若山大地さんと合流して、モツ焼きを食べた。そういえば「愛楽園」の中に食堂があった。のぞいて、調理場にいた女性に声をかけると、「今度はゴーヤーチャンプルを食べにおいで」と言われた。

串豚のあとは、牧志駅近くのネパール料理屋へ流れた。この店は長粒米を何種類も揃えていて、カレーというより、米を食べ比べた。

ロングセラー化しつつある『沖縄アンダーグラウンド』

【10月25日】那覇のライブハウス「アウトプット」のオーナーの上江州修さんがFM那覇でやっている「アウプーな日々」に出演。上江州さんとは、彼が東京で「ロフト」というライブハウスのスタッフをやっていたころからの付き合い。沖縄に戻り、自分でライブハウスを始めた。

ラジオのスタジオは沖映通りの中にある。お笑い芸人のメガネロック大屋さんと『沖縄アンダーグラウンド』についてトーク。ライブハウスについてぼくが思いつく曲を1曲選べと言われていたので、セックス・ピストルズをかけた。

ベルリンの壁が壊れる2年ほど前、ぼくは西ベルリンのクロイツベルク地区という移民街にしばらく滞在していた。そのときに通ったライブハウスでバンドが演奏していたのが、ピストルズばかりだったからだ。

いったん帰宅してシャワーを浴びて、「すみれ茶屋」に寄って、生ビールを飲みながら玉城丈二さんと世間話。そして、栄町「ブーシェ」で、琉球朝日放送の島袋夏子さんと比嘉夏希さん、新人アナウンサーの女性と、ホルモンフレンチをがっつきながら、ワインをがぶ飲みした。

琉球朝日放送は夕方のニュースで拙著を7分にわたって特集してくれた。ほんとうにありがたい。

『沖縄アンダーグラウンド』は9月初旬に沖縄で書店に並んでから、最大書店のジュンク堂那覇店でずっと1位(結果的には7週連続1位)で、その後、ベスト10から外れたけれど、すぐに返り咲く。ジュンク堂以外の書店でも上位に入っている。ロングセラー化しつつある。沖縄の人々の中でじっくり読まれていることを実感している。

明日からは京都。『沖縄アンダーグラウンド』でも取り上げた1970年公開のドキュメンタリー映画『モトシンカカランヌー』(沖縄の方言で元手がかからない仕事。つまり売春のこと)をめぐって、富山一郎さん(同志社大学)と田中雅一さん(京都大学)とミニシンポのようなことを、両学の大学院生相手におこなうことになっている。

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