TOEICの「スピーキングテスト」はこうして採点されている! 運営団体の担当者に聞く

国際ビジネスコミュニケーション協会の田渕仁志さん(左)と大坂文雄さん(右)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催や近年の外国人観光客の増加を受け、国際語である英語のニーズが高まっています。「今年こそ、しっかり英語を勉強したい!」といる人も多いのでないのではないでしょうか。ひとりの時間を“英語を学ぶ時間”に充ててみるのもいいかもしれません。

社会人が英語を学ぼうとした際に、よく話題になるのが英語能力を測るテスト「TOEIC」です。筆者の場合、学生時代に1度、TOEICを受験しましたが、それを最後に英語学習から遠ざかってしまったので、それまで積み重ねてきた英語力はきれいに失われてしまいました。

もう一度挑戦しようとモチベーションを高めたいところですが、ここでひとつの疑問が浮かびました。それは、「リーディングとリスニングのテストであるTOEICで、本当に英語が話せるようになるのか」ということです。

そこで、国内でTOEIC Programを運営している国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)の田渕仁志さんと大坂文雄さんに、TOEICの内容や受験者の傾向、これから学びたい人へのアドバイスなどを聞きました。

TOEICには「スピーキング」と「ライティング」が存在していた

――まずは、現在のTOEICの内容について教えてください。

田渕:TOEIC Programには、大きく分けて「TOEIC Tests」と英語学習初級~中級向けの「TOEIC Bridge Tests」という2種類のテストがあります。そして、「TOEIC Tests」の中には、「TOEIC Listening & Reading Test」「TOEIC Speaking & Writing Tests」「TOEIC Speaking Test」「TOEIC Writing Test」という4つのテストが存在します。

皆さんが「TOEIC」としてイメージされるのは、この中の「TOEIC Listening & Reading Test」で、1979年から実施されています。2017年度は248万人の方に受験していただきました。

TOEIC Programの内容

――TOEICには、「スピーキング」と「ライティング」のテストもあるのですね。

田渕:そうですね。「TOEIC Speaking & Writing Tests」は2007年1月に始まり、2017年度は3万8000人に受験いただきました。「TOEIC Bridge Tests」でも、「TOEIC Bridge Speaking & Writing Tests」の導入を2019年6月に予定しています。

――スピーキングのテストは、どのように試験を行うのでしょうか?英検のように面接試験を行うのでしょうか?

田渕さん:パソコンを使って行います。ただ、採点については機械採点ではなく、ETSの厳しい基準を通過した採点者が採点します。受験者は出題された問題に回答する際に、パソコンに取り付けられたマイクに向かって英語で話します。すると、その音声データが採点者に送られ、オンライン上で採点を行うのです。

出題内容は、音読問題、質疑応答問題といったものから、写真を見て状況を説明する問題、ある情報やテーマをもとに自分で考えて意見を述べるといった問題まであります。

TOEIC Speaking Testの例題。ビジネスセミナーの案内状を見て会話の相手の質問に答える。

――コンピューターを使うと伺って、人工知能などによる機械採点かと想像しましたが、あえてアナログな方法をとることで採点のクオリティを担保しているということですか?

田渕:そうですね。採点者は学歴や英語指導経験などによる書類選考、ETSが開発したトレーニングなどをクリアして資格を取得します。さらに、採点精度を維持するため、実際の採点開始前に「カリブレーションテスト」というサンプル問題の採点を行い、それに合格してはじめてテストの採点をすることができます。

また、ひとりの採点者がひとりの受験者の回答をすべて採点するということはしません。受験者の情報を伏せた形で1問ずつ別々の採点者が採点を行い、採点者の先入観によるヒューマンエラーの発生を抑えるようにしています。採点基準は、コミュニケーション能力を重視する傾向にあります。例えば、発音が完璧でなくても、“しっかりと伝わるか”といった部分を見ています。

「TOEICの良いところは合否判定がないところ」

――TOEICは社会人も多く受験していると思いますが、どのような傾向があるのでしょうか。

大坂:楽天やユニクロといった大手企業が英語での社内コミュニケーションを導入し始めた2012年頃から、全体の受験者数は大きく伸びています。IPテスト(団体用のテスト)の内訳をみると、30代後半から40代が多いと言えると思います。

IPテストの社歴別受験者数と平均スコア。濃い青はリスニング、薄い青はリーディングのスコアを指す。(出典:TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2018)

また、TOEICのスコアは企業の人材評価指標として定着しているのではないかと思います。企業ではグローバル人材を育成するなかで、英語力の向上を重視しており、TOEICのスコアを管理職や国際部門に登用する条件にしたり、海外赴任者選定の基準にしたりしているケースも少なくありません。

――TOEICの最高スコアは990点ですが、どのような人が900点以上の高得点を取っているのでしょうか?

大坂:IIBCとして統計を取ってはいませんが、ネイティブスピーカーでも900点以上を取るのは難しいという話はよく耳にします。また、高校や大学ではTOEICで900点以上を取った学生を表彰する学校もあります。学習するモチベーションとしてTOEICを取り入れる良い例だと思います。

企業では、900点以上の社員にインセンティブを出しているところもあるようですね。高いスコアを出すには相当な努力の積み重ねが必要になりますので、こうした企業ではスコア以上に“努力して目標を達成する”という取り組みそのものを評価するという考えが強いようです。

――世の中には、“900点ホルダー(900点以上取得者)”というステータスに憧れて挑戦する人もいると思いますが、ハイスコアを出すことにはどのような意味があるのでしょうか?

田渕:TOEICのスコアは、英語力の指標としてさまざまな分野でご活用いただいており、世の中に定着していると思っています。TOEICの良いところは“合否判定がない”という点だと思うのです。つまり、自分自身の英語能力の現在地を知り、目標を設定してそこに向かって努力する。そして、努力の中で得た手ごたえを次の試験で活かしていく。こうした努力を積み重ねるうえでの道しるべになるのが、TOEICのスコアなのだと思います。

もちろん、テストである以上は、最高点を目指したいという気持ちは理解できます。その挑戦をネットなどで発信している“TOEICファン”の存在も、私たちにとってはありがたいことです。ただ、どの程度の英語力を目指したいかは、人によって異なると思います。ハイスコアでなければ価値がないというものではありません。あくまで継続的な英語学習の目標として、TOEICを位置づけてほしいですね。

「TOEICのスコアを、努力を積み重ねる道しるべにしてほしい」と語る大坂さん

大坂:視点を変えると、TOEICのスコア取得だけを目標にするよりは、「スコアの先に何を実現したいのか」ということを大切にしてもらえたら嬉しいです。

例えば、仕事など明確な理由があれば目標設定はしやすいと思います。また、今は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えて訪日外国人も増加しているので、困った人を英語で助けてあげたいといった、身近な目標設定はしやすいのではないでしょうか。

そのためにも、インプットとアウトプットのバランスは非常に重要だと思います。英語を話す機会というのは、日常生活では多くはありません。そのため、アウトプットする能力を磨いていただくスピーキングのテストは、今後どんどん推進していきたいと思います。

――最後に、これからTOEICに挑戦してみようという人に対して、英語力を身につけるためのアドバイスをください。

大坂:TOEICは問題文や説明文も含めてすべて英語だけで行われるとてもタフなテストですが、がんばればスコアが少しずつ伸びていき、それがモチベーションになります。まずはテストを受けて自分の現在位置を知り、現実的な目標を設定するといいと思います。今はネットを通じてすぐに世界中とつながれる時代になりました。英語ができることで、情報を得たり発信したりすることができるようになり、可能性が大きく広がります。TOEICをそのきっかけにしてほしいです。

「SNSやYouTubeにあふれるリアルな英語に触れてみて」と話す田渕さん

田渕:まず、リアルな英語に触れるところから始めることをお勧めします。日常生活ではなかなか英語を使う機会はありませんが、ネット上にはSNSやYouTubeを通じて、リアルな英語があふれています。好きなジャンルでいいと思いますので、観て聴いてみて、リアルな英語をどんどんインプットしてみてください。アウトプットについては、最近では身近に外国人も増えてきていると思いますので、少し心のバリアを外して話しかけてみると、モチベーションを高めるきっかけになると思います。

 

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