酒に溺れる生活をやめて、自分と向き合った女性「離婚して寂しかったんだと思う」

アルコールをやめたハルカ

お酒をやめて、自分と向き合えるようになったことで、やっと「離婚してからずっと寂しかったんだ」と気がつきました――。

「女性の自由と孤独」をテーマにさまざまな女性たちにインタビューするこの連載。今回は、離婚してシングルマザーとして暮らすうちにアルコールに溺れるようになったが、50代になってその習慣を断ったハルカ(55)に話を聞いた。

シングルマザーになった屈辱

九州出身でもともと酒に強かったハルカは、バブル時代に20代を過ごした。大学生の頃から飲んだり踊ったり騒いだりが好きで、仕事を始めてからも男性に負けじと朝まで飲むことも多かった。

ハルカが結婚したのは24歳のときだった。

「元夫は、飲む打つ買う、借金もするで、手に負えない人でした。結婚して6年後に別れたんですけど、直接のきっかけは向こうの浮気。女性としての自信まで奪われた気がしました。お金はいらないから離婚してと言うと、向こうはすぐに応じました。子どもはその頃、4歳と1歳半。元夫は浮気相手と結婚したんですけど、養育費はもらわず、いっさい縁を切りました」

「やっと自分の人生を取り戻せた」という気がして嬉しかったというハルカ。同時に、離婚してシングルマザーになったことは屈辱的に感じられた。同じバブル時代に20代を過ごした女性たちの間では、どれだけいい夫を手に入れられるのかがステータスのひとつになっていたからだ。

それを失ってしまったことを忘れようとするかのように、ハルカはIT業界で働き始め、仕事に没頭する。夕方になると子どもたちを保育園に迎えに行き、ご飯を食べさせて寝かしつけてから、また会社に戻った。深夜1時頃まで仕事をして、その後に飲みに行くこともあったという。

「いま思えば強いストレスがかかっていたんでしょうね。30代半ば頃から、家に帰ってから毎日缶ビールを飲むようになりました。そのうち子どもが大きくなってお金がかかるようになって、ますます仕事に打ちこんでお酒を飲んで、っていう生活を変えることができなくなったんです」

自分をごまかすように酒を飲む

47歳のときに、ハルカは再婚した。15年ほど付き合った男性がその相手だった。付き合っていた間、経済的にも子育ての上でも甘えることはせず、楽しいことだけで繋がるようにしていた。全てを見せれば離れていくような気がして怖かったという。

再婚して経済的に楽になり、子どもたちも手がかからなくなった。それでもしばらく、ハルカは晩酌を続けていた。同時に「お酒が邪魔だ」と思うようにもなった。

「飲みに行くのは金曜日だけで、家では毎日晩酌をしていたんですけど、翌日辛くなることが多くなったんです。でもやめられなかった。毎日、缶ビール1本とワインボトル半分くらい飲んでました。週末にはボトル1本空くこともあったかな」

アルコールによって、何かをごまかしている感覚があったとハルカは言う。

「『飲まなくていいのに、なんで今日も飲むのかな』と思いながら飲んでいました。頑張ったご褒美にビールを飲む…というより、1日の最後のビールのために頑張っていた気がします。本当は頑張りたくないけど、そのことを認めたくなくて飲んでいたのかもしれません。自分と向き合わなくて済むっていうのかな。昼間は仕事に打ちこんで、夜になったらお酒を飲んで、という生活を続けていると、ずっと何も考えずにいられるんですよね」

社会生活は営めているし、人間関係を失ったわけでもない。だが「酒を飲むことをやめたくてもやめられない」という状態は、いわゆるアルコール依存症の症状のように思える。だがハルカが酒をやめたのは、専門の医療機関や自助グループによるものではなく、断酒する生き方を推奨するブログとの出会いによってだった。

「ブログを書いていたのは私と同じ年齢で、同じようにお酒に苦しんだことのある女性でした。彼女が開いていた断酒セミナーに参加したんです。そこでお酒に対する認識を改めながら、生活習慣を変えていきました。早起きして散歩して、家中の床を雑巾がけすることにしたんです。最初は大変だったけど、慣れてしまえば楽になりました。早起きするためにはお酒なんて飲んでいられない、という生活を続けるうちに、いつの間にか飲まないのが普通になっていました」

酒をやめて気がついたこと

ハルカにとって酒は、自分と向き合わずにいるための手段だった。しかし、断酒をすることで自分と向き合わざるを得なくなる。どんな自分と向き合うことになったのだろうか。

「いろいろ見えてきましたけど、一番大きかったのは『寂しかったんだな』ってこと。離婚してからずっと、寂しくて飲んでたんだと思います。寂しいというか、なぜ人生が思い通りにならないんだろう、というやるせない気持ちですね。この宇宙の中にぽつーんと、自分と子どもたちだけがいる。居場所も、所属するところもない。寂しそうと思われたくなくて、たくさん仕事をして、元気なふりをしてきたんです」

酒をやめて等身大の自分と向き合うことができるようになったハルカ。それと同時に、他人にも愛情を持って接することができるようになったという。
「お酒をやめて、自分自身を受け入れられるようになったから、自分を肯定できるようになりました。そして、いろんな人のことを愛おしいと思えるようになりました」

酒をやめることで初めて自分を肯定できるようになったというハルカ。30年近く付き合ってきたお酒は、いまでは懐かしい友達のように思えるし、感謝しているという。

【連載】女性の自由と孤独

 

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