ひとり暮らしで「土鍋」を育てる。なんでも作れる「自炊のパートナー」に

新品の土鍋

土鍋を育てている。寒い季節から初夏まで、鍋料理で活躍してくれる。一方で土鍋はごはんやケーキも作ることができる万能調理具。ひとり暮らしの自炊を支える、強い味方に育てたい。

土鍋を手にいれたらまずやることがある。それは下煮だ。目止めとも呼ばれ、土鍋を割れにくくして長持ちさせるために、粘り気のあるものを煮ることだ。使い始める前にまず、お米や小麦粉を炊く。

穴が肝心。何でも吸収する。

土鍋は穴とのつきあいが肝心なのだ。穴とは気孔のことだが、焼き物に無数にある気孔は水分を吸収する。その気孔の穴に、粘り気のあるものを染み込ませておく「目止め」が、土鍋を長持ちさせるのに有効なのだ。

いわゆる「土鍋伝説」もこの穴から生まれている。漫画「美味しんぼ」に出てくるエピソードのことだ。長年、毎日すっぽんを煮続けた土鍋に煮汁が染み込み、その土鍋でごはんと水を入れて炊くだけで、すっぽん雑炊ができるそうだ。つまり、穴に長年の煮汁が染み込んでいるという話である。穴、恐るべし。

まずは目止めにおかゆを炊いてみた。ところが、いきなりここで土鍋を焦がしてしまった。せっかくのやる気が削がれる。でも慌てなくていい。そのまま軽く洗って普通に使っていれば、焦げは自然に剥がれてくる。

ネットで検索すると、重曹で焦げを取る方法が出てきたりするが、あまり適切ではない。重曹を使ってしまうと、この穴に重曹液が染み込み、次回食べるときに多少なりとも染み出してしまう。

では、毎日の手入れはどうするか。洗剤を使わずに、お湯とたわしでさっと汚れを取れば十分である。穴のことを考えれば、洗剤を使うなんてありえない。脂分はそのうちに鍋に馴染んでくる。問題の焦げはどうするか。気にせず、普通に使えばよい。

使えば使うほど丈夫になる。

麻婆豆腐もできる

一年も使い込むと土鍋は強くなる。しっかりと黒くなった土鍋には貫禄さえある。使い始めの頃の、置き場所のおぼつかなさはもうない。強火で炊いても蒸し煮を作っても、もう大丈夫。大抵のことではもう割れない。

目玉焼きさえできるようになると、フライパンも片手鍋もいらなくなる。土鍋は加熱するとしばらく熱をもつので、保温性だけで目玉焼きができる。土鍋を充分に熱して卵を入れたら、ガスを止めて放置すればできあがり。こうなると朝から晩まで土鍋一個で生活が賄える。

土鍋だけで生活ができるようになると、ますます土鍋を使い込むようになる。どんどん黒くなって使いやすくなってくる。毎日、土鍋を見ない日はない。麻婆豆腐も、含め煮も、ぜんぶ土鍋が美味しく作ってくれる。なんでもできるのでこれ一つで他の鍋はいらなくなる。いろり感が出て、しぶくなる。うまくいけば10年以上もつらしい。

愛情をかけすぎて、土鍋生活から離れたくなくなるが、暑い夏は冬眠ならぬ「夏眠」につかせる。夏が終われば、またどっしりと貫禄を増して姿を現す。毎日使った土鍋を休ませるのは、土鍋を育てる一環でもある。秋になればまた忙しくなる。それまでしばしのお別れだ。

 

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