「炎上」を乗り越えたTehuさん「いまは身近な人に深く認められたい」

かつて中学生のアプリ開発者として話題となったTehu(テフ)さん(撮影:高澤梨緒)

今から10年前の2009年、中学生のアプリ開発者としてiPhoneアプリ「健康計算機」をリリースして話題になったTehu(テフ)さん(23歳)。その後、インターネット上での誹謗中傷や「炎上」を経験してきました。「休憩」と称し、メディアに出ることの少なくなったTehuさん。現在は、自分の承認欲求と向き合っているといいます。くわしく話を聞くと、回復のための「欲望との向き合い方」が見えてきました。

※インタビュー後編:「自分はラッキーだっただけ」……

いろんな「わかりやすさ」に揉まれて

——まず、現在Tehuさんが何をしているのかについて、聞きたいのですが。

Tehu:今は……休憩中ですね。基本的には、メディアに出るのをやめています。露出することで得をした時期もあったと思うんですけど、今はそうじゃないと思っています。仕事としては、4年前に立ち上げたチームボックスという会社でCCO(チーフ・クリエィティブ・オフィサー)として働いています。

——会社では、リーダー育成など、人材開発を手がけられているんですよね。

Tehu:そもそも、なんで人材育成の会社で立ち上げに関わったのかというと、教育に思い入れがあったからです。まだ中学生だったころに作ったアプリのおかげで名前が売れたこともあって、高校から大学にかけて中高校生向けのプログラミング教育サービス「Life is Tech!」を手伝っていたこともありました。

ただ、そこでプログラムを学んで人生が変わる子供たちをたくさん見て、自分の中にさらなる課題意識が芽生えたんです。その子たちが若くして華々しいスタートを切るのはいいけど、今の世の中の状況だと、力を得て、実際に社会構造を変えられるようになるのは、大概40代になってからですよね。ごくわずかにいる革命的な起業ができる人以外は、年功序列のシステムのなかで力を得ていくことになりますから。

で、その子たちにとって40歳っていうのは、25年後なんです。25年後にもしその子たちが、「俺はプログラミングで人生が変わったんだ」と言ってたら、よくないですよね。その頃は、プログラミングも自動化が進み、自分の手でコードを書く価値はほとんどなくなっているか、もしくはそれ以上の、私たちがまだ想像もし得ない状態になっている可能性が高いでしょうから。

——それを、プログラミングで成功した20歳前後のTehuさんが言うのは、すごいですね。チームボックス以外のお仕事は、どんな感じでしょう。

Tehu:チームボックスが半分だとすると、残りの半分でいろいろって感じですね。講談社では、Webメディアの『現代ビジネス』がある第一事業戦略部でクリエイティブディレクターという役職についています。

(撮影:高澤梨緒)

——メディアの側に立ってみて、インターネットの見方が変わりましたか?

Tehu:基本的に、今のインターネットは嫌いです。それでもWebに携わるのは、完全に「世直し」のモチベーションですよね。すべてのものが、どんどんわかりやすくなっていく最近の傾向がすごく大嫌いなんですよ。だから世の中みんなその方向にいくのかもしれないけど、ぼく自身は抗いたいなと思ってます。

——「わかりやすい答え」みたいなものを提示するメディアが嫌いということでしょうか。

Tehu:唯一正しい正解なんてどこにもないと思うんです。けど、解がないからこそ、それを諦めるんじゃなくて、今の自分にとって一番正しい解を探し求め続けなければならない。しかも、それは刻一刻と変わっていくものですよね。だから、「AがBである」みたいな論法は大嫌いですね。インフルエンサーを信奉するような風潮も苦手です。世の中そんな単純じゃないでしょって、すごくシンプルに思います。

——いつぐらいから、そういう感覚があったんですか?

Tehu:ちょっとこじつけになるかもしれないですけど、「わかりやすい論調」みたいなものの犠牲になってからかもしれないですね。中3で出身地を明らかにしたときも、(ネットでは)わかりやすく「中国人」って書かれたりしましたから。いろんな「わかりやすさ」に揉まれた経験がやっぱりあります。ただ、そのバックグラウンドは全然わかりやすくなくて、「中国人である」なんてひと言で片づけられるものではないと考えています。

「有名人になりたいわけじゃない」

——以前のTehuさんの発言を見ていると、承認欲求が強いのかな? と思うことがあります。

Tehu:今もすごく強いですね。承認欲求ゼロで、技術の探求だけしてればOKな友人のエンジニアを見ていると、羨ましく思います。「あんなに他人に惑わされず生きていけるタイプの人間がいるんだな」と。ぼくは常に欲望に追いかけ回されて生きてますから。

——もしかするとTehuさんは、ネットで叩かれることで満たされているところもあったのではないでしょうか。

Tehu:振り返れば、叩かれることは自分の存在を認めてもらっていることでもあったなとは思います。小学校時代、ぼくは物静かで友達も少ないタイプだったんです。中学・高校で素晴らしい友達にたくさん出会えましたけど、ただ単に(ネット上で)自分のことを知ってくれている人がすごく増えるのは、シンプルに嬉しかった。その感覚が、承認欲求につながっているんだろうなって気はします。

今はシンプルに誰かに頼られるみたいなことで、承認欲求が満たされることが多いですね。あまり表だって何をやっているかは言ってないですけど、友達に会ったら普通に今やっている仕事の話をします。それで、何か一緒にやろうと盛り上がることがあるのが、うれしいですね。頼られることが承認を満たしているというか。結局、すごく単純なところに戻ってきたなと思います。多くの人に承認を求めるよりも、身近な人に深く認められることの喜びを噛みしめている感じです。

もしかしたら、身近な人から認められることは初めてかもしれません。いきなりバズった人間なので、最初から広く浅く認められていただけだった。もちろんその楽しさは理解しつつも、結局自分が持っているのは有名人になりたいという欲求じゃないことに、ようやく気付きました。もちろん承認欲求はあるんですけど。

——承認欲求と仕事とは、切っても切り離せないものですよね。

Tehu:この3年くらいの自分の人生での一番の成果は、承認欲求を目的にせずに仕事ができていることだと思っているんです。仕事の依頼があることは嬉しいですが、仕事をしているのは誰かに頼られたからではありません。社会課題を解決するような、大きな目的に向かって仕事をするというか。昔はすべての仕事を、話題づくりのためにやっていましたからね。

中学・高校時代に開発したアプリや、炎上したWebサイト「どうして解散するんですか?」は、その典型ですね。あのサイトは、素性を隠してやったけど、本質的な目的は承認欲求だったような気がするんです。今、冷静に考えたら、他のやりようがあったじゃんと思います。

あのとき台湾では(学生が中心となった)「ひまわり運動」が、香港では(同じく学生による)「雨傘革命」がすごく盛り上がっていた時期で、ぼくは革命を起こすアーティストみたいな気持ちでいたんです。ただそこにあるのは、義憤じゃなかった。ただの承認欲求でしたね。

「自分はラッキーだっただけ」Tehuさんが語る「お金と人生」に続く)

 

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