「自分はラッキーだっただけ」Tehuさんが語る「お金と人生」

(撮影:高澤梨緒)

ネットでの「承認欲求」が引き金となって、誹謗中傷や「炎上」を経験してきたTehu(テフ)さん。現在、メディアに出ることがほとんどなくなったTehuさんは、Netflixなどのサブスクリプションサービス(以下、サブスク)がその欲求の「はけ口」になっていると語ります。いったいどういうことでしょうか? 前編にひきつづき、後編では、自分の欲望との向き合うためのお金の使い方と生き方について聞きました。

※インタビュー前編:「炎上」を乗り越えたTehuさん「いまは身近な人に……

承認欲求をサブスクが満たす

——Tehuさんは今、インターネットで承認欲求を満たそうと思わないのですか?

Tehu:単純にネットの世界から去ったので、承認欲求を満たす場が減りました。ただ、サブスクリプションのサービスが、そのはけ口になっていたりします。これはすごく浅い話ですけど、NetflixやApple Musicに課金して、世の中にあるコンテンツにアクセス可能であるっていう状態が、自分にとってすごく幸せで居心地がいいんです。

——サブスクが「承認欲求のはけ口」ですか。たとえば、どんなサービスを利用しているのですか?

Tehu:Amazonプライム、Netflix(ネットフリックス)、Hulu(フールー)には加入してますね。Apple Music、Spotify(スポティファイ)、LINE MUSIC、AWA、radikoも入ってます。DAZN(ダゾーン)、NewsPicks、日経電子版……。朝日新聞は無料版だな。

——すごい量ですね……。

Tehu:月にいくら絞り取られてるんだろう、って感じですよね(笑)。ついつい課金しちゃうんですよ。簡単に、クレカ(クレジットカード)の番号を入力しちゃう…。

——映像系にしても音楽系にしても、かなりの数ですが、それとは別に、コンテンツを個別に購入することもあるのですか?

Tehu:ありますね。所有欲もすごくあるので、サブスクで観たり聴いたりして、よかったものは買います。DVDとかBlu-rayだけじゃなく、iTunesとかのダウンロード販売も使います。映画館で観て、いいなって思ったやつは、発売された瞬間に買っちゃったり。全部オフラインに置いておくのが好きなんです。疲れたときに、好きなシーンだけ観たりしています。

——どのサービスが好きというのは、ありますか?

Tehu:音楽系だと、Apple Musicが一番好きです。理由はiTunesを立ち上げたら、自分の持っている曲がライブラリとして最初に出てくるから。Apple Musicは、そこにサブスクで聞きたい曲を「追加していく」っていう概念じゃないですか。もちろんラジオ的に音楽を流す機能もありますけど、いっさい使わないです。お金を払っている限り、自分のライブラリに大量の音楽を追加できる。それが好きなんですよね。

——確かに、Apple Musicは音楽を所有している感覚が強いかもしれませんね。ただ、解約したら消えちゃいますよね。

Tehu:過去2年分くらいの音楽のライブラリが全部消えちゃいますね(笑)。だから、怖くて解約できない…。ただ、自分がAppleにコントロールされているという怖さを、便利さが越えちゃっています。気になった曲が大体ありますから。

安心感と優越感を売ることに対する違和感

——Tehuさんは、最近流行りのオンラインサロン、つまり自分のファンクラブのようなものを作ろうと、考えたことはありますか?

Tehu:ないですね。もしサロンを作ったら、自分の発信する情報に興味がある人が集まってくるわけですよね。それによって、自分から見える景色が狭まってしまう気がするんです。周りにいる人を固定化させるのがイヤというか……。

そういう環境にいても、周りにいる人を固定化させずに新しいことができる人もいると思います。ただぼくは自分の性格をわかっているので、「固定化しまうんだろうな」と。心地よいところにいたくなる性分なので。ぼくがサロンを作ったとして、人が集まるかどうかわからないですが、もし来る人がいたら、たぶんそこが居心地がよくなって、変化しなくなってしまうと思います。

(撮影:高澤梨緒)

——では、「コミュニティビジネス」と呼ばれるものをどう見てますか? あれも一種のサブスクと呼べるのではないでしょうか。

Tehu:まあ、ビジネスとしては面白そうですよね。ただ、あれは要するに安心感を売るビジネスだと思っています。たとえば、自分が時代についていけていないというような心配があったとしますよね。そういう人が、「いま話題の人」のサロンに入ったりするんだろうなと思います。

コミュニティビジネスでは見せ方として、「時代を理解しているかどうか?」という二項対立が必要になってくるじゃないですか。サロンに入ることで、「わかっている」側に自分が立てるっていう安心感と、優越感を買えるのかなと。

ただぼくは、それは本質的なことじゃないと思うんです。単純にいえば、サロンに入って、言われた通りにしているだけじゃないですか。しかも、サロンの主催者が言ってることを知っているかどうかという選民思想にもつながりかねない。要するに自己啓発の進化形態なんじゃないかなと。自己啓発と同様、コミュニティビジネスもに善悪両方の側面があると思います。

——心地よいところにいたいけど、未来のことを考えると、そこにいない方がいい、という決意はすごいですね。子どもたちに対する「天才プログラマーで終ってほしくない」という感情と似ているかもしれません。

Tehu:チームボックスという会社は、まさにそれがテーマになっているところがありますね。たとえば、社内では自分の意見をさらけ出すことが多くあります。お互いに辛辣なフィードバックをガンガンしますし、そのなかで人がどう成長するのかみたいなところを、実際に自分たちで体現してみたいという気持ちがあります。

包み隠さずに言ってくれるという安心感があるので、逆にそれがすごく心地よくなってくるんです。

自分の運を世界に還元するために

——ところで、先ほどのサブスクの話を聞いていてふと思ったのですが、お金に無頓着すぎませんか?

Tehu:確かに、お金に対する執着は薄いですね。自分でお金を稼げるようになったタイミングが早かったからかもしれません。中学生のころからアプリの収入で、サラリーマンくらいは稼いでましたから。しかも、ほとんど使うことがなかった。飲みに行くこともないし、ひたすら貯まっていく状態でした。

(ネット上で)叩かれてたころは、寄付をしてみたりもしていたんですよ。ただ、寄付するのはなんか違う、自己満足なんじゃないかなと思うようになって、途中で自分の身になるものに使おうと決めました。聴いたり観たりしたいものが多い中学・高校生時代に、自由に使えるお金があったのは大きいかもしれません。

——「自分は恵まれている」という感覚があったのでしょうか?

Tehu:「運が良かったな」と思うところがあります。自分がいまのように稼げるようになったのは、本当にいいタイミングで、いいところにいただけなんです。つまり、中学3年のあのタイミングで、端末を持っていたという強運が人生に一度だけあった。

iPhoneのニュースを観た強運。App Storeにデベロッパー登録できた強運。灘(高校)じゃなかったらニュースになってないであろうことも考え合わせると、学歴も強運のうちのひとつです。強運づくしの人生を歩んでいるので、ある意味、人の運を吸いとっている側面もあるんだろうと思います。ぼくが世に出ちゃったから、同じパターンで話題になる中学生は、あとから絶対出てこれないですし。ラッキーにも、いま自分にお金が集まってきているから、できる限り配分したいと思っているんです。

コンテンツにお金を払うことも、その延長線上にあります。サブスクは、ちゃんと作者にお金が入るところが素晴らしい。一応自分でも努力をしているつもりですし、(その上で)お金も稼がせてもらっています。ただ、今もらっているお金が自分の価値に見合っているかというとまだまだだなと思うんです。

 

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