夏こそ、うなぎ! ミシュランに選ばれた「うな富士」でひつまぶし

「うな富士」のひつまぶし

夏に食べたいもの。誰が何と言おうが、私はうなぎを食べたい。

うなぎの価格が高騰して、気軽に食べられなくなってから、ずいぶんと経つ。1年に1回くらい、思いっきりゼイタクをしてもバチは当たらないだろう。せっかくだから、本当に美味しい店で食べたい。

【連載】魅惑の名古屋グルメ

フードライターとして本格的にグルメ取材をはじめてから16年。名古屋市内で旨いと評判のうなぎ店はほとんど食べ歩いた。蓄積されたデータベースの中から今回私が選んだのは、名古屋市昭和区にある『炭焼 うな富士』。

間違いなく、ここは私の中でベスト3に入る。

また、今年5月に発売された『ミシュランガイド』でビブグルマンにも選ばれたので、平日でも多くの客で賑わっていると聞く。

土用の丑の日、並ぶ覚悟で

無謀にも私が店へ向かったのは、今年の土用の丑の日(7月26日)の前日。一年で最もうなぎ店が忙しい今のシーズンは、昼の休憩なしで通し営業する店も多い。

心配だったのは、店の駐車場に車が停められるか否か。店から100メートルほど離れた場所に20台分あるものの、駐車場が空くのを待つ車で大渋滞しているかもしれない。考えた結果、飲食店でもっとも客が少ない時間帯の夕方4時くらいに到着するように車を走らせた。

東新町方面から、国道41号線「東郊通2」交差点を西へ曲がる。あれ? 駐車場待ちの車が見当たらない。それどころか、駐車場内には2、3台停まっているだけで、すんなりと停めることができた。いったい、どうなっているんだ? まさか、休み?

店の前まで行くと、大きなテントが張ってあり、その中で3、4組の客が待っていた。やはり、店は営業していたのだ。店の入り口に目をやると、「受付の順番は16:50より始めます」という貼り紙があった。

通し営業ではなく、昼の休憩をしていたのだ。と、いうことは、夕方5時の開店と同時にうなぎにありつけるということだ。3時間は並ぶ覚悟をしていたので、50分待つことなんて余裕だ。

16時50分となり、店員さんから来店した順番に名前を聞かれた。私は5番目。間違いなく1巡目に店へ入ることができる。ラッキー!

完璧な焼き加減

17時となり、店内へ案内された。エアコンが効いていて、まるで天国。

メニューを見ると、「夏の特別メニュー」とあった。かき入れ時だからと値上げするアコギなことはせず、通常のメニューを絞り込んであるようだ。「上ひつまぶし」や「肝入りうなぎ丼」など、うなぎや肝をたくさん使用するメニューはない。一人でも多くの客に丼やひつまぶしを食べてもらいたいという気持ちが伝わってきた。

私はここに限らず、うなぎ屋では必ず丼か重を注文する。うなぎの質や焼き加減など、職人の技術を堪能したいのだ。しかし、名古屋といえば「ひつまぶし」。読者の皆様もそれを期待していると思うし、ミシュランも認めたひつまぶしがどんなものなのかも気になる。

ってことで、「ひつまぶし」(4700円)に決定。

完璧な焼き加減

20分ほど待ったところで、ひつまぶしが目の前に運ばれた。これ、これ!この焼き加減。焦げ目がしっかりついたうなぎがよいという方もいると思うが、私は焦げる寸前が好み。この焼き加減はまさに完璧。

うなぎは肉厚でやわらかく、味が濃厚な「青鰻」を使用。その名の通り、体の色が少し青みがかっているのが特徴だ。出荷数が少ないものの、安定的に仕入れているという。

ひつまぶしはうなぎを細かく刻むので、サイズが小さくてもお櫃(ひつ)にびっしりと敷き詰めるとボリュームがあるように見える。そのため、丼や重に使ううなぎと使い分ける店もあると聞く。しかし、隣の席の人が注文した「上うなぎ丼」(4700円)と見比べても遜色ない。ここはかなり良心的といえる。

タレのバランスも秀逸

1杯目はそのまま茶碗によそって

まず、1杯目。そのまま茶碗によそっていただく。うん、口に入れた瞬間、香ばしい香りがふわっと広がる。身はとろけるようにやわらかく、皮と身の間の脂が甘い。ご飯の炊き加減も文句なし。あっという間に平らげてしまった。

特筆すべきはタレの味付け。甘すぎず、辛すぎず、バランスが秀逸なのだ。以前、取材したとき、タレは糖度や塩分濃度を数値化して、緻密に計算されていると聞いて驚いた。うなぎ好きの間ではタレの好みも分かれるが、ここのタレは誰もが旨いと唸るはずだ。

2杯目は薬味のネギとワサビをのせて

2杯目は薬味のネギとワサビをのせて。ひつまぶしでは、この食べ方が最高に旨い。ネギの香りと食感、ワサビの刺激がくわわると味がガラリと変わるのだ。わが家ではうなぎを食べるとき、必ずネギとワサビを用意するほど。考えた人は天才だと思う。

また、店によっては刻み海苔も用意しているが、ここのひつまぶしには刻み海苔がご飯の上に敷いてあり、その上にうなぎがのっている。

漬物もしっかり

ひつまぶしにはネギとワサビの薬味とだし汁のほか、吸い物と漬物がつく。旨いうなぎ屋はメイン以外のものも決して手を抜かない。

ある有名店へ行ったときのこと。うなぎの味は抜群だったが、漬物が「きゅうりのキューちゃん」だったことがあり、閉口した。うなぎさえ美味しければよいというわけではないのだ。ここの吸い物や漬物は箸休めになり、次のひと口がまた美味しく感じるのだ。

3杯目はだしをかけて

3杯目はだし汁をかけて

そして3杯目。だし汁をかけて。ひつまぶし最の特徴であり、大醍醐味とされるが、私はどちらかというと否定的。だし汁によってうなぎの香ばしさが失われてしまうからだ。だから、普段はだし汁をかけず、味変は薬味まで。しかし、今回は読者様のためにだし汁を使ってみることに。

うん。美味しい(笑)。ほのかに香る和風だしとタレ、ワサビが混ざり合って何とも上品な味わいになった。

4杯目はいちばん気に入った食べ方で。もちろん、私は薬味をのせて、と……。うん、やっぱり、旨いなぁ!

今回、久しぶりに美味しいうなぎを食べた。これで暑い夏を乗り切ろうと思うが、次に食べられるのはいったいいつになることやら。

 

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