映画出演で未来の大女優と共演~元たま・石川浩司の「初めての体験」

未来の大女優と共演(イラスト・古本有美)

2001年だから今からもう18年も前。僕に突然、映画のオファーが舞い込んできた。それまで舞台演劇やテレビのドラマでちょい役をやったことはあったが、ちゃんとした映画に出るのはそれが初めてだった。

国民的女優との共演

『害虫』というタイトルの映画で、監督は僕と同い年の塩田明彦さん。その後『黄泉がえり』や『どろろ』などで売れっ子になっていく人である。

そして主演は、女優の宮崎あおいさん。その頃はまだ中学生だったので、「あおいちゃん」と呼んでいた。この作品が初主演ということで、まさかこの後に国民的な大女優さんになるなんて想像もしていなかった。

ちなみに、南海キャンディーズの山里亮太さんと結婚して話題となった蒼井優さんも出演していて、これまた国民的な女優さんになる遥か前のことである。

僕の役は、少し知的障害があるキュウゾウという男。ホームレスっぽいが、一応ボロボロの小屋に住んでいるという設定で、作中ではかなり重要な役どころであった。

役作りのため、撮影中は無精髭を伸ばし、頭も坊主より少し髪の毛が伸びただらしない感じにしなければならなかった。メイクさんに中途半端に伸びた髪の毛をディップで固めてよりそれらしくしてもらったり、スタイリストさんに服をわざとだらしなく直してもらったりした。こんな役なのにメイクさんやスタイリストさんがついてるのがおかしかった。

撮影日と撮影日の間が1週間近くあるときは、伸びた髭を前回の撮影時と同じくらいの長さになるように、メイクさんに切り揃えてもらうこともあった。なんせ映画は進行通りに撮っているわけではないので、スクリーンの中で髭が伸びたり縮んだりしたら、それはもう一種の化け物になって、ホラー映画になってしまうからな。

困ったのは、撮影期間中にバンドのライブがあったとき。役作りのために、いつもより汚らしい姿でステージに出なくてはならないからだ。しかし、理解のあるメンバーたちは一緒に無精髭を伸ばしてくれて、「ヒゲのある暮らし」という僕のボーカル曲から初まるライブをしてくれた。遊び心のあるメンバーに感謝。

印象深いさまざまなシーン

映画のスタッフは数十人とかなり多かった。ロケ地によっては交通整理だけでも10人くらいの人手がいる場合もあり、近所のおっさんやおばはんも見学していた。そのため、どんなに孤独そうな”ひとりぼっち”のシーンでも、現実には僕の周りを大勢の人たちが取り囲んで見守っている。こうした環境の中で演じなければならないのだ。当たり前だけど、初めての体験だと、とてもおかしな感じだった。

僕が演じるキュウゾウとあおいちゃん演じるサチ子はひょんなことから仲良くなる。一緒に空き缶を蹴って遊ぶシーンなどを撮影したのだが、特に印象的だったのは一緒に火炎瓶を作って投げるラストシーンだ。火炎瓶は本当に作って投げたので、「映画じゃなきゃこんな犯罪行為できないよなー」と妙に興奮してしまった。

ガマガエルを空き缶の中に入れて爆発させるなんてシーンもあった。最終的にはカットになったが、そのガマガエルを僕が捕まえるシーンを撮影したときのことだ。カエルがピョンピョン跳ねる姿を撮ろうとするのだが微動だにしない。「もっと、左方向に歩かせて!」と言ったところで、カエルである。動くのを待ち続けて、小一時間経つなんてこともあった。

機材の調整などで待ち時間がそこそこあるので、僕は椅子に座って待っていることが多かった。しかし、あおいちゃんは若いスタッフとキャーキャー鬼ごっこなどをやっていて、ずっと駆けまわっていた。そんな姿を見て、「僕にもあんな元気な年頃があったな~」と妙に感慨にふけってしまった。

複雑な褒め言葉!?

いろいろなシーンを撮影したが、一番気楽だったのは、ただ寝転んだままじっと動かないシーンだ。

子供の頃に読んだある雑誌の中で、「世界で一番楽な職業」というものが紹介されていた。オーストラリアの「昼寝をする仕事」だった。これは観光地の芝生の上かなにかで、一日中、ゴロッと寝転び、「誰でも昼寝したくなるほど、良い場所ですよ~」と宣伝する観光局の仕事だった。

その日の僕は、限りなくそれに近かった。グータラな僕はずっとこのシーンの撮影なら良いのになーと思っていた。

このシーンでは、あおいちゃんがちょっと小高い場所に座っていた。ミニスカートが少し気になる様子で、さり気なく時々手で押さえたりしていた。そして本番。塩田監督は、ギャグではなく、つい口走ってしまった。

「それじゃ、本番。用意、ス、スカート!!!」

スタッフ一同、みんな必死で笑いをこらえた。

そんなこんなで撮影は無事に終わり、映画は公開された。そして、映画が公開された後、僕は監督に「演技が良かった」と褒められた。

「いやあ、映画会社の人から『どこからあんな本物連れてきたんだ?』と言われたんだよ」

それって・・・褒め言葉だよね!?

 

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