軽井沢で大人のワークショップ 不器用な私がレザークラフトやってみた

JR軽井沢駅(長野県)から車でおよそ10分。緑に囲まれた気持ちのよい場所に、土屋鞄製造所(本社:東京都)の軽井澤工房店はあります。

土屋鞄製造所は、1965年の創業以来、職人によるていねいな手仕事で、オリジナルのランドセルをはじめ、革鞄や革小物を手掛けてきました。

軽井澤工房店にはランドセルの工房も併設。来店者が見学できるようになっています。

今回、私がここを訪れた目的は、革のパスケース作りを体験するため。

この数年、土屋鞄製造所では夏に革小物を作るワークショップを開催してきました。革のパスケース作りもそのひとつ。これまでのワークショップではブックカバーやキーケースなどを作ったそうですが、回を増すごとに、より本格的なレザークラフトを体験できる内容へとグレードアップしてきたといいます。

レザークラフト初体験で、手先が不器用な私。果たして、無事にパスケースを完成させることができるのでしょうか……。

熱中のあまり黙々タイム突入

まずは、パスケース本体の革と縫い糸の色の組み合わせを考えます。本体の牛革は茶色、ベージュ、ブルーから、縫い糸はダークブラウン、ブラウン、ベージュと、それぞれ3つのカラーから選択可能。私は、ベーシックで使いやすそうな茶色の革と、ステッチがアクセントとなるベージュの縫い糸を選びました。

「今回のパスケースは、作るだけでなく、ずっと使い続けてほしいという思いから、使うごとにツヤや味わいの変化が楽しめる牛革を選んでいます」と土屋鞄製造所・広報の前田さん。

早く作って使ってみたいと、俄然やる気が出てきました。

ここから、いよいよ本格的な作業がスタート。今回のワークショップを担当する辻本店長の説明に従い、手を動かしていきます。

土屋鞄製造所 軽井澤工房店の辻本店長。

はじめに、革の切りっぱなし部分(コバ)を整えるために、コバ磨き剤を綿棒で塗って、布を使ってまんべんなく磨いていきます。

革製品を作る際に、こんな作業が発生していたとは露知らず。ものづくりのワークショップは、職人さんの工夫や作業工程を知る絶好の機会とも言えそうです。

続いて、革を縫い合わせる際に必要となる穴を開けるため、ガイドラインを目打ちで引いていきます。革はデリケートな印象があるので、恐る恐る目打ちに力を入れていると、「けっこう力を入れても大丈夫ですよ」と辻本さん。

その言葉を信じて、強めに線を引いてみると、しっかり跡が残っていい感じに。どうやら、レザークラフトには時には大胆さも必要なようです。

次はホックの取り付けへ。穴あけポンチを使ってホック穴を開ける作業は、きれいに革がくり抜かれるのでちょっとした快感が味わえます。

開いた穴にホックをはめて、ホック打ちの上からはハンマーで打ってホックを固定。特にか弱いわけでもないのですが、思った以上に力がいる作業です。

すると辻本さんからすかさずアドバイスが。

「ちょうど机の脚の上にあたる角の部分など安定感がある場所でやったり、立ってやったりすると力が入りやすいですよ」

こんな細やかなアドバイスがもらえるのも初心者にとっては心強いところです。

ホックを取り付け終えたら、パスケースのポケットになる革を細い両面テープで本体に仮止めし、ローラーを上からかけてしっかりと固定させます。

次に、歯が多いフォークのような形をした「菱(ひし)目打ち」という道具で縫い糸を通す穴を開けていきます。今回のパスケースづくりで、前半のハイライトとも呼べる工程でした。

刃先が鋭いので、取り扱い注意な菱目打ち。職人さんが見本を見せてくれました。職人さん直々のレクチャーが受けられるのは、土屋鞄製造所のなかでも工房を併設している軽井澤工房店の特典です。

いつもは併設の工房でランドセルや鞄を作っている職人さんがワークショップをサポート。

ポイントは、菱目打ちの根元をしっかり固定して垂直に革に当てること、革から引き抜く際は革を押さえてゆっくり抜くことだそう。

初めて手にする道具だけに緊張しましたが、「思い切りのよさも大事!」と調子に乗ってハンマーをガンガン叩いていたら、いつの間にか菱目打ちが斜めに入っていました。均等に力がかかるようにハンマーを打っていくのもひと苦労です。

「重なっている革の枚数によって厚みが変わるので、ハンマーを打つ回数や力加減を調整すると穴のサイズがきれいにそろいますよ」

そう言われたものの、やはりそれは職人でないと難しいところ。

とはいえ、コツをつかんだのか、作業のスピードは上がっていきます。口数も少なくなり、「黙々タイム」へと突入。

ところが、あともう少しで穴あけ作業も終了と思った最後の最後で、痛恨のミスをしてしまいました。

しっかり固定したと思い込んでいた菱目打ちが、いつのまにかズレてしまったようです。縫い合わせることができなさそうなくらい、ギリギリのところに穴が空いてしまいました。

「職人さん、助けてください!」

こんなことができるのも軽井澤工房店だからこそです。

何とか職人さんにリカバーしてもらい、ひと安心。

気がつけば、パスケース作りに取り掛かってから、すでに1時間半以上が経過していました。初めてのことやらハプニングやらで疲れたなと思っていたところ、「いったん、休憩をしましょうか」と辻本さんがお茶を出してくれました。まさか休憩があるとは思っていなかったので、この気遣いにちょっと感動してしまいました。

針の「二刀流」で作り上げたパスケースの出来は……

お茶と一緒に出された、革のコースター。ワークショップのお土産として持ち帰られるそう。

冷たいお茶としばしの談笑で英気を養い、ワークショップ後半戦へ。

後半戦のハイライト、手縫い作業に入ります。

「針山から2本、針を取ってください」と辻本さん。

なんと、針を2本使って二刀流で手縫いしていくのだそうです。

蝋(ろう)引きした糸を針に通して糸どめの処理をし、ひとつ目の同じ穴にそれぞれ糸を通してかがります。左右の糸の長さを同じくらいに調整したら、開けた穴に沿って、2本の糸をクロスさせるように縫っていきます。

ひとつの穴に2本の糸を通すので、先に通した糸をやや斜め下に引っ張ってから2本目の糸を通すのがポイントだそう。

はじめこそ、2本の糸と針にもたついてしまったものの、穴あけ作業同様、慣れてくると縫うスピードが上がっていきます。

リズミカルに針を運んでいると、自然と無口になり、目の前の作業だけに意識が集中していきます。ここで2度目の「黙々タイム」。森の中にある軽井澤工房店なだけに、時折、鳥のさえずりが聞こえてくるのも心地いいです。

最後まで縫い終えて糸処理をすれば、残すは仕上げの作業のみ。最初と同じように、縫い終えた両辺の断面をコパ磨き剤で磨けば、完成です。

完成までの所要時間はおよそ2時間半。

わりとマイペースに作業を進めても、少人数のワークショップということもあり、スタッフさんや職人さんが細やかにフォローしてくれるので、安心してじっくりとレザークラフトに取り組めました。

そして、何より、できあがったパスケースが愛おしくてたまりません。

ちょっぴりガタガタな縫い目もご愛嬌。手作りならではの味わいでもあり、ワークショップでの思い出のしるしです。まさにプライスレスな体験となりました。

できあがったパスケースをレザークラフトの道具と一緒に撮影できるフォトスポットも。

残念ながら、こちらのワークショップは大人気で、どの実施店舗でも予約が埋まってしまったとのこと。まずは「キャンセル待ち」にエントリーして吉報をお待ちください。そして、来年にも行われるワークショップはいち早くチェックすることをおすすめします。

〈店名〉
土屋鞄製造所

2019 Summer Workshop 革のパスケース作り【要予約】

〈開催期間〉
8/31(土)までの金・土・日・祝
(軽井澤工房店のみ、土日祝)

〈参加費〉
4,000円(税込・キット代含む) 

 

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