困難乗り越えた女性起業家が振り返る「ひとりで働くことの難しさ」

ランジェリーの会社を起業した麻生幸子さん(撮影・西島本元)

女装小説家・仙田学が、自立したフリーランスや起業家の女性にインタビューをするこの連載。今回は、女性起業家として、またコミュニティのリーダーとして活躍する麻生幸子さん(42)に話を聞きました。

子育てと仕事を両立し、バリバリ働く

麻生さんは大学卒業後、大手企業で営業職に就きました。20代のうちに2人の子を授かり、産休・育休を取得した時期もありましたが、0歳のうちに子供を保育園に預けて仕事に復帰しました。

「子育てに追われている時期は毎日大変でした。定時に仕事を終わらせて急いで保育園に迎えに行って。自分の時間なんて全くなかったですけど、仕事をしている間だけは、充実した自分の時間が持てていると感じていました。目標値を目指して結果を出したり、問題を解決するために本やセミナーで勉強したり、もともとそういうことが好きだったんですね」

大企業の社員として仕事をしているときにこそ、自分らしい自由な時間を過ごしていると感じていた麻生さんですが、36歳のときに夫の転勤で東京から大阪に引っ越すことになり、仕事を辞めざるを得なくなりました。

「友達も知り合いもいない大阪で、専業主婦として暮らすことになったわけですけど、想像以上に辛かったです。子どもは2人とも小学生で、転校して慣れるまで時間がかかったし、私自身、ひとりで何もしない時間が際限なくある生活が苦痛でした。それで、引っ越しの数カ月後には、オーガニックシャンプーを扱うベンチャー企業の大阪支部をひとりで立ち上げたんです」

知り合いの会社の事業を手伝う形で、大阪支部を立ち上げた麻生さん。シャンプーの営業をしていましたが、1年ほどで辞めてしまいます。

「いろいろありましたけど、現場の実態を社長と共有できなかったことが大きかったですね。ひとりでやることの大変さや孤独は、大企業にいた頃には感じたことがなかったものですが、起業の下積みになったと思っています」

「ふんどしランジェリー」の会社を起業

(撮影・西島本元)

ベンチャー企業の営業職を辞めた後に、麻生さんは起業を思い立ちます。大企業の社員として働くことに自分らしさを感じていたずなのに、大企業への再就職は選択しませんでした。

「諦めていたのかもしれません。仲間も知り合いもいない土地で、30代で、子どもがいて、という状況で自分の評価を上げていくのは大変だろうなと。かといってパートはしたくなかった。プライドなんでしょうね。一流企業でトップの成績を上げてきましたから。その意味では仕事は私にとって、単にお金を稼ぐとか社会と関わるとかって以上に、アイデンティティのひとつなんだと思います」

麻生さんは、ひとりで事業を始めるにあたって、まずは自作のアクセサリーとオリジナル商品の「ふんどしランジェリーrelaxy」を売ることにしました。ふんどしランジェリーとは、ゴムを使わない下着のこと。ゴムがないことで、血流やリンパの流れを妨げないので、子宮系の疾患がある女性、冷え症、妊活温活中の女性に人気があるといいます。

「ものづくりをしている女性3人と一緒にイベントを開いて、そこで販売したら10万円くらい売り上げたんです。お客さんのほとんどはフェイスブックで繋がった女性たち。『自分らしく生きたい』というメッセージを発信しているうちに、似たような価値観を持つ女性たちとたくさん出会ったんです」

ひとりで仕事をすることの難しさ

(撮影・西島本元)

ふんどしランジェリーの販売は軌道に乗り、売り上げは順調に上がっていきました。その一方で、忙しさが増すにつれて、家事や育児との両立が難しくなっていきます。

「ストレスで散財してしまったこともあります。人を雇えばよかったんですけど、怖くてできませんでした。いわれのない批判をされたり裏切られたり、そういうことが起業してから増えたので、人を信じられなくなっていたのかも。2年間続けた後に、少し休むことにしました。東京にいた頃は大企業に守られ仲間もたくさんいたのに、大阪では本当にひとりなんだと打ちのめされました」

精神的に追い込まれていた麻生さんは、夫に弱音を吐くようになります。そこで初めて夫と向き合うようになりました。

「特に夫とは、それまでお互い自由に好きなことをして、その代わり不満も言わないという関係だったのが、私のことをちゃんと受け止めてくれないとか、話が通じないとか、いろんなところが見えてくるようになりました。喧嘩もたくさんしました」

夫と向き合ううちに、自分の意見をぶつけることができる家族がいることの大切さを実感した麻生さんは、ひとりで事業を行うことの大変さや孤独を受け入れられるようになったといいます。そして休業から半年、ふんどしランジェリーの事業を再開しました。

女性の生き方をアップデートする

(撮影・西島本元)

その後、ふんどしランジェリーの事業は成功し、自立した女性として活躍の幅を広げていきます。今年に入ってからは、「女性の生き方をアップデートし、女性のエンパワーメントで世の中を変える」というビジョンを掲げるコミュニティ「Woman’s Update Project!」を立ち上げました。

「『Woman’s Update Project!』は女性の価値観のアップデートを目指します。女性の生き方に多様性をもたらすために、社会的な枠組みや女性自身の『女性とはこうでなきゃいけない』という思い込みを変えていきたいんです」

ことし5月には大阪で初めてのフォーラムを開催しました。

「若干29歳で徳島県上勝町のゴミのリサイクル率80%に引き上げた坂野晶さんをゲストに迎えました。彼女は世界を股にかけた活躍をしながら、1児の母でもあります。『いいお母さん』像をもっと多種多様なものにするために、ロールモデルのひとつとして提示したかったんです」

女性起業家としての知見を共有すべく、「Woman’s Update Project!」では今後、起業したい女性を対象にしたコンサル、スクール事業を中核に据えていくという麻生さん。

「女性が自分らしく生きられる社会にしたいです。それから、夢を持てる社会。自分らしく生きている人が頑張れば、本当の意味で夢を叶えることができると思います」

 

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