日本でうつ病になった25歳の僕が、アフリカで人道支援して気づいたこと

起業したNGOの代表としてウガンダ北部で難民支援に携わっていた

「終わった。もうダメかもしれない」

昨年5月末、僕は目の前が真っ暗になっていた。

学生時代に起業したNGOの代表として、アフリカに戻る直前のことだった。プレッシャーや疲労が限界に達し、会議中に泣き叫んで、そのまま過呼吸になった。パニック症状に陥ったのだ。

正確にはうつ病ではなく「適応障害抑うつ」という病気なのだが、次の日から闘病生活を送ることになる。気持ちは暗く沈み、食欲も失せ、日常生活すら満足に送れない体になってしまった。

在学中にNGO起業、卒業後にうつ発症

早稲田大学在学中の2017年5月、僕は就職する道を捨て、アフリカ支援のNGOを起業した。大学に通い授業に出席するかたわら、日本各地で講演活動や資金調達に奔走し、夏休みに入るとすぐにアフリカに飛んで、現地では難民の人道支援に携わった。

自分で言うのもおこがましいが、学生という立場にしてはバリバリ働いていた方だと自負している。活動の様子は地上波のメディアにも取り上げられ、周りからは「原くんはNGO界の若手ホープだね」と期待されていた。正直、自分でもいい気になっていたと思う。

しかし、大学卒業から2か月が経とうとしていた5月末。在学中から続いていたハードワークに加え、周りから感じるプレッシャーに、24歳の体は耐えることができなかった。起業してからわずか1年、「一度休んだほうがいい」と心にブレーキがかかった。

そして、僕はうつ病になった。

病気になった経験は、僕の人生の中でも大きなターニングポイントになった。

半年以上の休養生活を送り、うつの症状もほとんど出なくなったが、結局起業した団体は自ら離れ、今年からフリーランスとして働くことにした。フリーランスになるまでの詳しい経緯については、こちらの記事を読んでほしい。

うつ発症から1年以上が経ち、今では仕事も問題なくできるようになった。「フリーランス国際協力師」という肩書きを名乗るようになってからは仕事も順調で、最近は起業した時と同じくらい忙しい毎日を送れている。

アフリカでは「立ち止まる」ことに焦りを感じにくい

この記事を書いている今、僕は東アフリカのウガンダ共和国に滞在し、クラウドファンディングで資金を集めながら活動している。日本と全く異なる生活環境は決して楽なものではないが、毎日の仕事はとても楽しく、病気だったことを忘れてしまうくらい充実している。

「うつ病を抱えながらアフリカで働くなんて、大変ではありませんか?」そう質問されることも多い。

もちろん生活環境を考えると、身体的には日本よりも大変なことは多い。でも、社会に漂う空気感だけを考えると、生きることに焦りを感じることが少なく、精神的には過ごしやすい。

実はアフリカから日本に帰国すると、いつも感じることがある。日本には「立ち止まっている人」がほとんどいないのだ。

街中を見ても、道端で何もせずにボーと過ごしている人なんて、ほとんどいない。みんな目的地に向かって早足で歩いているか、スマホの画面に夢中になっている。

言い方を換えれば、日本では「何もしていない人」がほとんどいない。通勤時間帯の品川なんかを想像してみたら、僕の言っている意味が何となく想像できると思う。

その一方、僕が暮らすウガンダ、いやアフリカ全体に言えることかもしれないが、街中にふと目を向けてみると、「立ち止まっている人」がたくさんいる。

例えば、売り物の服を頭にかけて寝ている屋台の店主。初めて出会った時はあまりにも衝撃的だったが、こういった光景はアフリカではよく見る。スマホを持っている人も多くはないので、仕事がないときには誰かと世間話をしているか、本当に、何もせず時間をつぶしている人も多い。

売り物の服を頭にかけて昼寝する店主

もちろん失業率が高いからとか、十分な雇用がないからとか、そういった負の側面もあるだろう。でも、この「何もしていない人」の存在も、アフリカの好きなところの一つだ。僕自身、仕事に疲れた時には近所の子供たちと地べたに座り、何もせずボーっと過ごすこともある。

日本では常に何かをしていないと気が気でない、どことなくそんな雰囲気さえ感じることもある。だからこそ、そんなアフリカのゆったりとした空気に魅力を感じるのかもしれない。

でも、今もメンタルには波がある

筆者が活動するウガンダ共和国北東部のカラモジャ

ただ、うつ病になってから1年以上が経った今も、メンタルを崩す時が定期的に訪れる。気分が乗らないとか、やる気が出ないとか、そんな易しいものではなく、仕事が全く手につかないくらい気持ちが沈み、ベッドから抜け出せない日もある。

今年春ウガンダに滞在していた時も、2回ほどメンタルを崩し、抑うつ症状に苦しめられた。

僕は今、ウガンダの中でも最も経済的に貧しい地域で支援活動をしているのだが、うつの症状が出たのは2回とも、活動地域から首都の自宅に戻った時だ。治安も決して良好とは言えず、気温40度近い厳しい環境の中で、無意識に緊張感を持ち続けているため、張り詰めた糸が切れた瞬間、一気に疲れが出てしまう。

うつのような病気は、よくなって、また悪くなって、そんな浮き沈みを繰り返しながら少しずつ快方に向かっていく病気だ。風邪のように分かりやすい完治がないため、今でもこの病気とうまく付き合っていく方法を模索している。

しんどい時は「休む勇気」を持つ

ウガンダ北東部の小学校で手洗い指導をする筆者(写真左端)と現地パートナー

僕は仕事が好きだ。「国際協力」という、自分がやりたいことを仕事にしているからこそ、四六時中働いている。体力的にしんどいことはあるが、気持ちはいつもワクワクしているため、「まだ行けるぞ」と自分自身を鼓舞しながら仕事に取り組んでいる。

でも、自分の心とは裏腹に、体の疲れが溜まれば心にも影響し、気分がドッと沈むことがある。起業家時代は、そんな時も無理して働き続けていたために体を壊してしまったが、病気を経験してからは、メンタルが不調な時はしっかり休むようにしている。

普段からバリバリ働いている人間だからこそ、「何もしないで休む」ことに罪悪感や焦燥感を覚えてしまうこともある。でも、心の調子が悪い時は、脳が「休め」とSOSの信号を出していると割り切り、今では意識的に休むことを心がけている。

うつや適応障害といった病気と付き合っていくには、間違いなく「休む勇気」が必要だ。

立ち止まっても、焦らない。日本とアフリカ、その両方で働く人間だからこそ、気づいたことでもある。

 

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