ロスジェネ世代が老後を生き抜く「4つの稼ぎ方」 藤野英人さんに聞く・上

藤野英人さん(撮影・斎藤大輔)

「夫婦そろって65歳から30年間生きると、老後資金が総額で2000万円不足する」

こんな金融庁の金融審議会報告書のニュースを耳にして、「死亡フラグが立った」と思った人も多いのではないだろうか。日々の暮らしで精いっぱいでそんな貯えあるわけないし、年金は破綻しないんじゃなかったっけ……? でもそもそも、2000万円ないと幸せに生きることはできないのだろうか? 

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不安しかないけれど、それでも生きていかなくてはならないなら。2000万円は無理だとしても、どうやって今から資産を増やしていくのか、そして幸せはお金で左右されるものなのか。

『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)『お金を話そう。法』(弘文堂)などの著書を持つお金のプロ、レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さんに、お先真っ暗な未来を生き抜く知恵を聞いた。

そもそも「年金で暮らせる」ではなかった

――自分の話で恐縮ですが、いわゆる就職氷河期のロスジェネ世代です。1年で会社を辞めてからずっとフリーランスだし、周囲も非正規雇用の人が多くて。幸せな未来が、全然思い描けません。

藤野:語りにくい雰囲気があるのですが、最近、孤立した40~50代男性の、背景に人生への絶望があるとみられる事件が続きましたよね。この世代が抱えた問題は、とても大きいと思っています。

先日秋田で旧友に会ったのですが、その友人の妻が、受刑者の出所後の生活をサポートする仕事をしていました。刑期を終えて出所しても、約半数の人が再び罪を犯すんです(2017年度の再犯率は48.7%)。

なぜそうなるかというと、高齢者の貧困問題があるから。一度社会的に失敗するとなかなか這い上がれないし、生活保護を受給できる人ばかりではないので、シャバが天国とは言い切れない。むしろ刑務所の方が食事も出るし寝る場所もあるし、何より人とのつながりができるので、居場所になってしまう。だから出所してもすぐに何かの罪をわざと犯して戻ってしまう人がいると言います。

とはいえ今の60代以上の世代は貧困老人もいますが、概して所得水準も高くて相対的に恵まれた世代です。一方で今40代の人は彼らよりも生涯年収の少ない人が多いから、彼らが高齢者になると刑務所がパンクするかもしれません。

ーー絶望しかないじゃないですか……。

藤野:でも、老後2000万円問題ですが、「夫婦が健康で90歳まで生きたら、年金以外に2000万円が必要」というのは、以前からずっと言われていたことです。なのにメディアで取り上げられたことで、多くの人が驚いてしまった。

政府は「年金は100年安心」と言っていますが、これは人々が安心して年金で暮らすことを言っているのではなく、財源がなくなったら支給額を減額してでも制度を維持するということです。

「誰かに助けてもらう」は最後の手段

――老後苦しまないようにするために、今からできることってありますか?

藤野:資産を増やすためにできることは4つあります。まずは若いうちに老後資金を全部稼いでしまうこと。これはアスリートや起業家のように、才覚と頑張りが必要不可欠です。

――それはもうちょっと無理な気が……。

藤野:2番目は細く長く、一度に多額を稼げなくても、身体が動くうちは働き続けること。3番目は倹約をすること。爪に火をともすような、つましい生活を心がけることです。これは難しいと思うのですが、なぜか好きな人が多いですね(笑)。

4番目は投資をすること。少しずつお金を貯めながら増やしていく。資産を増やすためには、この4つを組み合わせるしかありません。だからこの4つから目をそらさないで、向き合っていくしかないんです。

――「誰かに助けてもらう」という方法はナシですか?

藤野:それは5番目。家族や公的扶助に頼る方法はありますが、資産は自力で増やしていかないとならないものです。そうなると一番大事なものは実は健康で、健康だと細く長く稼ぎ続けることができますが、長く生きるということは長く支出をすることでもあります。

でもそのための稼ぎ方や投資の方法って学校では教えてないし、親から学ぶ機会もほとんどないと思います。会社でも仕事の仕方は教わっても、お金の稼ぎ方は教わりませんよね。

生活するために、お金をどう稼いでいくかを1人1人が考えることは、自立することにつながるし、それこそが経営学だと思っています。会社の経営だけではなく、自分の人生をどうマネジメントするのかについて考えるのも経営なんですよね。

ーー4番目の「投資をする」について知りたいです。いまだに「投資は損するだけ」「働かないでお金を得るのは悪」みたいな考えの人も多いから、なかなか踏み切れなくて。

藤野:投資の話をすると「お金でお金を増やすのは汚い」という人もいるけれど、投資は金で金を増やすという単純なものではありません。投資はその会社を信頼して応援することであり、社会をよくすること。ですが、そう言ってもピンとこない人も多くいます。

なぜなら日本には、会社嫌いな人が多いから。会社が嫌いだから、会社にお金を託して育てることがイメージできない。そもそも、働くことも嫌いだから、働いて得られるお金をネガティブに捉えている。でもお金のことで頭がいっぱいで、お金しか信用していない。誰も信用していないから預けることもできない、残念な状態だと思います。

でも投資で一番リターンが高いものって、金融商品ではないんですよね。

一番リターンが高い投資は「自己投資」

――えっ? 

藤野:「投資で一番リターンが高いものはなんですか」とよく聞かれるのですが、それは自己投資です。自分ができることを増やして、稼ぐ力を養うのが一番の投資です。

それにウォーレン・バフェットも言っていますが、自己投資には税金がかかりません。たとえばTOEICで990点を取っても、うち2割を国が持っていくことはないですよね? だから自分の付加価値を高めることが、一番の投資と言えます。

――投資=金融商品とばかり思ってました……。

藤野:世界は「投資」で成り立っている、といえます。だってスマホも服も、この世の中にあるもののすべては、誰かが資本と人を集めて試行錯誤をした上で生み出したものですから。

現代社会では、投資の恩恵を受けずに生きることはほぼ不可能です。だから投資は悪でも汚いものでもなく、すでにもう自分も関わっているものと思ってください。

ランチをどこで食べるか、その消費行動だって、投資の一部ですし、健康のために早寝することだって自分の体への投資です。そういう意味では、僕らは、誰もが既に投資家なんです。投資という概念を広げるだけで、見える世界は変わりますよ。

――とはいえ「何から始めていいのかよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。

藤野:この先、年金だけでは暮らしていけない人たちが増えることは国も分かっているから、つみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)が作られました。いずれも投資にかかる税金を優遇しましょうというものなので、まずはこの2つから初めてみることをお勧めします。とくに自営業者は万が一倒産してもiDeCoで積み立てた分は差し押さえられないので、ぜひ始めて欲しいと思います。

後編に続く)

 

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