「役に合わせて香水をつける」元宝塚の男役トップスター・凰稀かなめの今

2015年に宝塚歌劇団を退団した元男役トップスターの凰稀かなめさん。宝塚時代には、端正なスタイルと細やかな演技でファンを魅了、特に『ベルサイユのばら』で演じたオスカルは、原作から抜け出たようなビジュアルも話題になりました。

退団後は、舞台やドラマに出演。昨年は、主演を務めた舞台『さよなら、チャーリー』で文化庁芸術祭の新人賞を受賞するなど演技力も評価されています。女優に転身しても多忙な毎日ですが、宝塚時代に比べると時間の余裕ができたそう。ひとりで過ごす自由な時間をどのように過ごしているのか、話を聞きました。

宝塚退団後は、心にゆとり。花で女性らしさを取り戻す

――宝塚を退団して4年が経ちました。ご自身の中で大きな変化はありますか?

凰稀:自由な時間が増えたことで、心にゆとりができましたね。宝塚にいたときは、外を歩いていても斜め下をじっと見て、舞台のことばかり考えていましたが、周りを見る余裕ができました。散歩をすれば花が咲いていることに気がついたり、雲を眺めたり。日常のことに目が向くようになりました。

あと、絵を描くことが好きなので、シンプルな革のバッグに絵を描くこともあります。こういう時間は、退団してから持てるようになりました。

凰稀かなめさん(撮影・斎藤大輔)

――時間や心にゆとりができたことで変わったことはありますか?

凰稀:15年ほど男役を演じて、常に男性らしく見えることを考えていたので、女性らしいことをしてみたくなりました。私にとって、それはお花。ユリやカラーなどの好きな花を買ってきて、心のおもむくままに活けています。宝塚の舞台で『ベルサイユのばら』のオスカル役をやったこともあって、(タイトルにちなんだ)赤や白のバラが好きでしたが、今はユリの香りが一番好きです。

香りへのこだわりから香水作りを手がける

――花の香りは癒されますよね。

凰稀:花に限らず、香りや匂いはすごく大事にしていることです。外国の空港に降り立ったときって、その国の匂いがありますよね。旅行に行っても、日記をつけたり写真を撮ったりということをあまりしないので、匂いで記憶しています。

あと、香りは役作りの要素にもなっています。役が決まると、その役をイメージした香りをつけているんです。宝塚に在団していたときは、兵庫と東京の2カ月の公演のあいだに6本使ったこともあるくらいです。

――香水はどのように選ばれているのですか?

凰稀:百貨店などに行って、実際に自分で確かめて探していました。でも、退団してからは自分で作ってみたくなって、香水作りを始めたんです。ネットで探した調香師さんに香水作りについて教えてもらって、今は、舞台やコンサートのときに、役柄に合わせて香水を作っています。観客席にも香らせたときは評判が良くて、私も嬉しかったです。

香水は商品化して、販売もしている。香水について語る凰稀さん(撮影・斎藤大輔)

――ご自身で調合されているんですか?

凰稀:キットを使って、自分で試しに作ってみます。多いときで5、6種類ですが、何種類混ぜるかはそのときによって違います。種類だけでなく、分量を少し変えるだけでも違ってくるので、調合し始めるとあっという間に時間が過ぎてしまうんです。

決まったら、調香師さんにお願いしてサンプルを作ってもらいます。でも、出来上がってみるとちょっとキツイなとか、甘めだなとかイメージに合わないこともあります。それに、自分でつけるとまた香りが変化するので、納得いくまで調整します。

――舞台が決まるたび香水を作っているのですか?

凰稀:時間的に間に合わないこともありますし、9月10日から始まる舞台『かなめのカタチ』は、3役を演じるので作っていません。昨年、文化庁芸術祭で新人賞を受賞した『さよなら、チャーリー』も、お稽古期間が短かったので、作る時間が取れませんでした。チャーリーという遊び人の役だったので、作ったら軽やかな香りになっていたでしょうね。

ひとりで過ごす時間も仕事につながることをする

――香水作りの他には、どのように過ごされていますか?

凰稀:仕事につながることをしている時間がほとんどですね。自分が出演した舞台やテレビドラマなどを録画したものを見ています。

例えば、女将役で出演しているテレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』(TBS)では、このとき目線をもう少し落とせば、もっと気持ちを表現できたなと反省したり、撮影のときのカメラの位置は大体覚えているので、あのときカメラはこの角度で撮っていたからこう動けば良かったのかもと改善点を探したりします。

凰稀かなめさん(撮影・斎藤大輔)

音楽を聴いたり本を読んだりというのも、仕事関係ばかりです。退団後に出演したミュージカル『1789 バスティーユの恋人たち』では、(『ベルサイユのばら』の主役のひとりでもある)マリー・アントワネットの役をやりました。

舞台で描かれる場面は、人生におけるほんの一瞬の点です。でも、彼女の一生や時代背景といった線を捉えていないと、その点に深みを出せません。ですから、いろいろな視点で書かれた本を読みます。点を演じながらも、それが線におけるどのような場面だったかを表現して、観客のみなさんに伝えられることを目指しました。

――ずっとお仕事のことを考えていらっしゃるんですね。買い物や舞台鑑賞などはいかがですか?

凰稀:散歩は好きですけれど、ぶらぶら買い物をするのは苦手なんです。欲しいものを買ったら、さっと帰ります。舞台も、お誘いいただいて行くことが多いですね。約束がなければ、家からほとんど出ないんです。家では、好きなオレンジの香りをディフューザーで漂わせています。好きな香りでリラックスしながら、じっくり演技について考える、それが私の一番楽しいひとり時間です。

●凰稀かなめさんプロフィール
女優、元宝塚宙組トップスター。舞台やテレビドラマを中心に活躍中。出演作に、ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち』やテレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』(TBS)などがある。2018年の舞台『さよなら、チャーリー』では、主人公のチャーリーを演じ、文化庁芸術祭で新人賞を受賞した。

 

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