野菜の力を引き出す辰巳芳子さん「基本のポタージュ」(DANRO×通販朝日)

材料となる野菜とチキンスープ

カタログ『通販朝日』を発行する「朝日新聞SHOP」とDANROの共同企画です。日本各地を歩き回り、いいものを知り尽くしている新聞記者出身のバイヤーが選んだ、こだわりの品々をご紹介します。

前回に引き続き、94歳の料理家・辰巳芳子さんのスープの紹介。今回はポタージュ。自宅でスープ教室を開催して、メディアでも「食といのち」をテーマにした発言を続けている。スープという料理の奥深さ、幅の広さ、そして社会的意義を見抜いている料理家の第一人者だ。

【第1回】辰巳芳子さんがひとり身に推す「滋味のスープ」

「ポタージュ・ボン・ファム」は、辰巳さんのポタージュの基本。コツはじっくりゆっくり炒めることだ。「野菜に汗をかかすようにね」と辰巳さんはいう。

これで、野菜の持ち味だけをうまく引き出す。チキンスープと野菜のうまみがあるので、塩も少量ですむ。「お一人で暮らす男性の食生活のために、何とかしてあげたいの」。

「蒸らし炒め」がポイント

ポタージュ・ボン・ファム

辰巳さんのポタージュの代表作、「ポタージュ・ボン・ファム」。絶対に欠かせない料理のポイントは「蒸らし炒め」。蒸らし炒めとは、厚手の鍋に少量の油と切った野菜類を入れて弱火にかける手法。ふたをして時々、木べらで混ぜます。「これで野菜の持ち味を引き出すのです。人間も一緒よ。じっくり持っている力を引き出さないと」。

野菜を小松菜など葉物にかえればバリエーションも広がる。日曜のブランチにおいしいパンとポタージュというのもすてきだ。

ポタージュ・ボン・ファムのレシピ

(2~3人前)
ジャガイモ………150g
タマネギ……………50g
ニンジン……………60g
セロリ………………50g
ローリエ1…………1枚
鶏のブイヨン(無塩)520㏄
牛乳………………60cc
塩………………小さじ1
オリーブ油……大さじ1

①ジャガイモは7㎜厚さ、ニンジンは5㎜厚さのイチョウ切りにし、それぞれ10分以内で水にさらす。
たまねぎは縦に薄切りにする。セロリは3㎜厚さの小口切りにする。
②鍋にタマネギ、オリーブ油大さじ半分を入れて弱火にかけ、ふたをする。
時々、ふたを開け、木べらで静かに中を混ぜ、七分とおり蒸らし炒めにする。
タマネギの刺激臭が消えたら、ニンジン、セロリ、ジャガイモの順に加え、蒸らし炒めを続ける。
ローリエも加える。途中でオリーブ油大さじ半分を回し入れ、野菜類に七分どおり火が通るようにする。
③ブイヨンをひたひたまで注ぎ、塩半量を加えて、中火の強にかける。
煮えがついたら、丁寧にアクをとり、ふたをして弱火で煮る。
野菜が十分煮えたら火を止める。
④③の鍋からローリエを除き、温かいうちにミキサーにかける。
なめらかになったら、こし器を通してきれいな鍋に戻す。
鍋を火にかけ、残りのブイヨンと牛乳を加えて濃度を調整し、残りの塩で味を調える。

辰巳スープの原点は「父の笑顔」

辰巳芳子さん=神奈川県鎌倉市の自宅で

実は、「辰巳さん=スープ」といわれるのには理由がある。

1996年8月13日の朝日新聞。家庭面の「辰巳芳子の旬を味わう」で、スペインのスープ「ガスパチョ」を取り上げたとき、こう話していた。「寝たきりだった父が、冷たいガスパチョを飲み終え、ほっと私に向けた笑顔。今も、あのきらめく星のように、めんどくさい日の励ましになっています」

そう、辰巳さんのスープの原点はお父さんの介護にある。以来、ずっとスープに力を注いできた。特に野菜や雑穀をチキンスープで煮て、牛乳で伸ばしたポタージュは栄養満点。何より、とにかくおいしい。いくら栄養価が高くても、おいしくなければ、食べたくない。病気や高齢の方ならなおさらだ。

「ポタージュ・ボム・ファム」には個人的にも強い思い出がある。

もう5、6年前だろうか。当時、80歳ぐらいだった母親は認知症になり、体調も悪くなって入院していた。加齢に伴って、かんだりのみ込んだりする力が弱くなる。のみ込みにくくなることは「嚥下(えんげ)障害」と呼ばれる。母は総入れ歯だし、のみ込む力も衰えている。

すると、起こるのが誤嚥性(ごえんせい)肺炎だ。高齢者のおもな死亡原因のひとつになっている。母もこれまで何回か、誤嚥性肺炎を起こして施設から病院へ移り、入院した。食が細り、ただでさえやせた体が、さらにやせた。輸液で栄養分を補給して、なんとか持ちこたえていた。

そんなとき、思い出したのが辰巳さんのこのスープ。スープジャーに入れて、病室に持ち込んだ。妻がスプーンですくって、母の口に運ぶ。「おいしい?」と聞くと、うなずいて、もっと欲しそうな顔をする。結局、カップいっぱいあったスープを全部食べた。
母はすでに他界したが、満足そうな顔が、今でも忘れられない。「食」記者をしていた私も、食べ物や食べることの力を改めて実感できた。

簡単に作れるマシンと材料は

材料となる野菜とチキンスープ

辰巳さんのポタージュの多くは、ベースがチキンスープ。でも、自宅で鶏ガラからスープをとるのは大変。そこで、朝日新聞SHOPでは、日本スープの「丸どりだし」を用意した。常温で保存も利くので便利。カレーやシチュー、しゃぶしゃぶのときにも使うと、ぐーんとうまみが増す。今春の発売以来、リピーターの多い商品となった。

具材を混ぜるには、岩谷産業の「サイレントミルサー」がおすすめ。何より軽く、動作音が静か。刃先に加工を施しているので、洗うときに手を切る心配もない。

《たつみ・よしこ》 料理研究家の母・辰巳浜子さんに家庭料理の教えを受けて料理家に。「蒸らし炒め」「展開料理」など独自の調理法を提唱する。父親の介護体験をもとにスープ料理の普及に取り組むほか、食料の自給や安全についても、幅広く提言している。

 

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