巨砲3000mmズーム、ニコン COOLPIX P1000を試してみた(後編)

ニコン COOLPIX1000と楠芽瑠さん(東京都港区・シンボルプロムナード公園 夢の広場)

鳥や虫などの超望遠撮影を中心にお送りした前編に続き、ニコン P1000の使い心地をレポートします。今回は筆者の夏休みの旅行に連れ出しているので、信州・清里方面の旅先スナップショットを中心に、人物撮影やカメラの機能を使った月や花火の作例もお送りします。

【前編】巨砲3000mmズーム、ニコン COOLPIX P1000を試してみた

特殊低分散レンズで広角・望遠も自在

黒が締まって美しい松本城

1504年に建てられた国宝「松本城」。(長野県松本市)。4.30mm(35ミリ判換算で約24mm相当)、F5.6、1/800秒、ISO100。手持ち撮影。以下、いずれもAdobe Lightroomで露出、シャープネスなどを調整しています。

3000mm相当という超望遠ばかりに気を取られがちですが、P1000のレンズは広角端24mm相当。レンズ構成は12群17枚。 前玉(最前面のレンズ)は大きくフィルター径は77mm。贅沢にも、プリズムの色分解作用を少なくするED(特殊低分散 Extra-low Dispersion)レンズ5枚とより低分散で、優れた色収差補正能力を実現したスーパーEDレンズ1枚を採用しています。

このため、出てくる画像は好印象。高倍率ズームレンズの場合、広角端(このカメラの場合24mm相当)では、四隅に黒く見えてくる周辺光量落ちと像の歪みが気になってくるものですが、少ないレベルに抑えて良好な画像を生み出しています。

国宝「松本城」の鯱瓦

鯱瓦は2018年の改修で取り付けられた新しいものだそうです。(長野県松本市)。180mm(35ミリ判換算で約1000mm相当)、F5.6、1/800秒、ISO100。手持ち撮影。

普通のカメラでの「松本城に行きました」という写真ならお城を撮って満足するところですが、せっかく超望遠があるのですから、屋根の鯱瓦をズームアップ。鯱瓦や避雷針だけでなく、城主だった戸田松平家の家紋「はなれ六ツ星」の鬼瓦、「左巴」の巴瓦もはっきり見えます。

お堀に咲いていた蓮や睡蓮(すいれん)も300mm相当まで気軽にズーム。快晴でシャッタースピードも稼げているので、3000mmのブレを止めるのに慣れると、このくらいの焦点距離は楽勝です。

松本城の堀に咲いていた蓮

優雅に咲く蓮の花(長野県松本市)。54mm(35ミリ判換算で約300mm相当)、F8.0、1/400秒、ISO100。手持ち撮影。

国の重要文化財・旧開智学校

屋根瓦を持つ洋館、明治時代の擬洋風建築が面白い旧開智学校(長野県松本市)。6.30mm(35ミリ判換算で約35mm相当)、F8.0、1/800秒、ISO100。手持ち撮影。

旧開智学校は、1876(明治9)年に建てられ、1963(昭和38)年まで小学校校舎として 90年近く使用され、現在は教育博物館として使用されています。1961(昭和36)年、国の重要文化財指定を受けています。2019年中に国宝に指定される見込みです。

先ほどの松本城の鯱瓦のように、八角塔のてっぺんにある風見もズームアップしていました。フィールドスコープや双眼鏡のように使えて便利ですね。

旧開智学校の風見

旧開智学校の八角塔中央に配された「東西南北」の風見。62mm(35ミリ判換算で約345mm相当)、F8.0、1/640秒、ISO100。手持ち撮影。

信州の自然も色鮮やかに

筆者は、大学時代から社会人になって30歳になる直前までの11年を長野県内で過ごしています。特にお気に入りなのが安曇野です。北アルプスを背に澄んだ流れる清流。温泉も美術館もあって、何よりご飯、特に米が美味しい。離れてからも何度も旅行に訪れています。

被写体を探したのは、絵本画家いわさきちひろと世界の絵本画家の作品を展示する、「安曇野ちひろ美術館」(長野県松川村)。黒柳徹子さんが自伝的物語を書いたベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」の表紙絵や挿絵を描いています。美術館の隣にある「安曇野ちひろ公園」には、中央にトットちゃんが通った「トモエ学園」の世界を再現した「トットちゃん広場」があります。

写真の中央奥に見える電車は、「トモエ学園」の電車の教室。その左にある白い壁の建物は「トモエの講堂」。美術館の中にも電車の教室を模した部屋があります。いわさきちひろさんの両親の故郷・松川村の風景によく馴染んでいます。

安曇野の自然に馴染む「トットちゃん」の世界

「安曇野ちひろ美術館」の隣にある「安曇野ちひろ公園」。(長野県松川村)。4.3mm(35ミリ判換算で約24mm相当)、F5.6、1/640秒、ISO100。手持ち撮影。

まだ青い実の栗

公園の中央には大きな栗の木が立っていた。(長野県松川村・安曇野ちひろ公園)。270mm(35ミリ判換算で約1500mm相当)、F5.6、1/125秒、ISO450。手持ち撮影。

ちょっと長め 7mの最低撮影距離

広角や望遠を自在に操り、自分の足で寄っていかなくても撮れてしまうカメラですが、近くにあるものを寄せるときには「最低焦点距離」を意識しなければならない場面が出てきます。

3000mm相当の望遠にした場合の最低撮影距離は7m。レンズの先端から7メートル離れないとピントが合いません。広角側では約30cmなのですが、距離が伸びるごとに最低撮影距離が伸びていきます。ピントが合わない場合はずっとピンボケして合わないままになるので、後ろに注意をしながら後ずさりするしかありません。7mは2階建ての天井より少し高いくらい、その距離感をつかむのには、少し慣れが必要です。

月の撮影はフレーミング枠で合わせやすい

シーンモードも試してみました。撮影モードダイヤルを月のマークに合わせると画面中央に四角い枠が表示されます。初期設定では1000mm相当になっています。その中に月を合わせて、OKボタンを押すと、ぐぐっと1000mm相当までズームします。

そこから微調整して画面に月を合わせてシャッターを切ると、セルフタイマーが3秒(こちらも初期設定)にセットされてシャッターが切れます。三脚で固定していても、シャッターを押した瞬間にカメラが動くことも考慮されているのですね。

ほぼ満月で撮った月。467mm(35ミリ判換算で約2600mm相当)、F7.1、1/500秒、ISO250。三脚で撮影。トリミング済み

花火撮影はシーンモードでも難しい

諏訪湖の花火

諏訪湖サマーナイト花火を「花火モード」で撮影。(長野県諏訪市)。5.4mm(35ミリ判換算で約30mm相当)、F8.0、4秒、ISO100。三脚で撮影。水平を直すためにトリミング済み。

花火は難しいです。いろんなテクニックを駆使しないといけないので、このカメラに限らずなかなか上手く撮れないものです。諏訪湖で15分だけ開催されていた「諏訪湖サマーナイト花火」を「花火モード」で宿の窓から撮影してみました。(「諏訪湖サマーナイト花火」は、「諏訪湖祭湖上花火大会」の8月15日を除く、7月21日~8月25日に開催されていました)

「花火モード」を選ぶとセルフタイマーが3秒効いて、その後4秒のシャッタースピードで切ってくれます。本来は外に出て「ポン」とか「バン」とかいう合図でシャッターを切り始めればいいのでしょうが、信州の方言でいうところの「ズクなし」(ぐうたら)な私は、エアコンの効いたホテルの部屋から窓越しに撮影していますので、いまいち音がうまく聞こえません。しかも、三脚を家に忘れてしまうというだらしなさ。

部屋にあったテーブルの上にカバンを置いて固定し、15分間とにかく押しまくった中から比較的マシなものを選んだ数枚のうちの1枚です。ほんと難しいですね、シーンモードでも花火は練習が必要です。

人物撮影、肌色の発色もきれいに

カリブラコアと楠芽瑠さん

(東京都港区・お台場のシンボルプロムナード公園「夢の広場」)。9mm(35ミリ判換算で約50mm相当)、F5.6、1/160秒、ISO100。手持ち撮影・レフ板使用。

次は、ポートレート撮影で一般的に使われる焦点距離で、人物撮影も試してみました。トップ画像にも登場して頂きました、アイドルの楠芽瑠さんです。

この日は朝から雨がぽつぽつ降る天気でしたが、撮影開始から少しずつ天気が回復してきました。まずはお台場のシンボルプロムナード公園で撮影。東京五輪に向けて、「花と緑のおもてなしプロジェクト」が進められており、暑さに強い園芸植物を鑑賞できる「おもてなしガーデン(サマーガーデン)」で、たくさんの花が植えられていました。

肌色の自然さ、花の鮮やかな発色もよく、旅行スナップにも十分能力を発揮します。ユニコーンガンダムを背景に撮った頃には日差しも持ち直して強く照っていたのですが、白飛びしがちなガンダムも綺麗に写していて、自動露出も優秀です。

人待ち顔

(東京都港区・お台場の「夢の大橋」)。13mm(35ミリ判換算で約72mm相当)、F5.6、1/320秒、ISO100。手持ち撮影・レフ板使用

実物大ユニコーンガンダム立像と記念撮影

(東京都港区・お台場のシンボルプロムナード公園から)。9mm(35ミリ判換算で約50mm相当)、F5.6、1/250秒、ISO100。手持ち撮影。

近づけないからズームで手繰り寄せる

最後の作例は鉄道写真です。一眼レフやミラーレスだとレンズを取り替えているうちにチャンスを失うことも出てくるでしょう。ぶらぶら散歩しているときに偶然出くわす場面も多いのですが、必要な焦点距離のレンズを必ずしも持って出かけているとも限りません。

P1000は電動ズームなので、望む焦点距離まで伸びる時間が少しじれったい部分もありますが、旅の荷物を軽くしたい場合や、これ1台しか持っていけない場面なら、十分な性能を発揮してくれることでしょう。

力強く坂を登るディーゼルカー

甲斐大泉駅を出発し、小諸方面に坂を登る列車。「八ヶ岳高原線」の愛称が付く小海線(JR東日本)は小淵沢駅(山梨県北杜市)から小諸駅(長野県小諸市)までを結ぶ全長78.9 km。102mm(35ミリ判換算で約567mm相当)、F8.0、1/125秒、ISO4000。手持ち撮影。
ニコン COOLPIX P1000

<評価>

◎よくできました◎
軽くて持ち運びしやすい超望遠3000mmズームレンズ。
超望遠域をスコープがわりに使えて楽しく、その他の焦点域も良好で、旅行のスナップ写真はこれ1台でまかなえる万能さ。

△がんばりましょう△
もたつくコントラストAF。像面位相差AFが欲しい。
7mの最低撮影距離。もうあと2mほど縮めてもらえれば使いやすい。

撮影モデル:楠芽瑠(くすのき・める)さん。
東京都出身。プログレッシヴ・ロックの楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドルユニット「XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム)」のメンバー。2019年9月16日のライブを最後に卒業し、ソロ活動に。

公式サイトにはライブ情報なども掲載しています。

 

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