思っていたのとは違う「ニューヨーカー」が集う残念なカジノ

左奥の建物がリゾート・ワールド・カジノ・ニューヨークシティ (photo by Mars Matsui)

2018年の秋、ぼくはニューヨークに行った。

かなり久しぶりで、その前に行った時は、まだあのワールドトレードセンターがあったから、少なくとも20年以上前ということになる。

この間ニューヨークでは様々なことが起きた。9.11同時多発テロでワールドトレードセンターが無くなってしまったり、カジノ王のトランプ氏が大統領になったりしたが、他にも気になることがひとつあった。

それはニューヨークにカジノが出来たことだ。それが2011年に新設された「リゾート・ワールド・カジノ・ニューヨークシティ」だ。カジノ好きのぼくとして、これは見ておかなくてはならないと思い、現地に着いてまず行ってみた。

カジノへの送迎バスを待つ人 (photo by Mars Matsui)

日本で買ったガイドブックには、このカジノがニューヨーカーに人気を博していると書かれていたが、果たしてどんな様子なのか、ぼくは自分の目で確かめたいと思った。

カジノが競馬場の隣に作られたワケ

リゾート・ワールド・カジノ・ニューヨークシティはクイーンズにあるアケダクト競馬場に併設された「レーシノ」というタイプのカジノだ。この名称に聞き慣れない人もいるだろう。レーシノとは「レース」+「カジノ」の造語であり、競馬とカジノの融合をうたい文句にした、近年増加中のカジノである。

どちらもギャンブルではあるが、内容がまったく異なるものをなぜ隣接させて作るのか?

それは競馬のほうに事情がある。

アメリカでは競馬人気がガタ落ちで、経営難に陥るところが増えている。

この日のアケダクト競馬場の様子 (photo by Mars Matsui)

ぼくが行った日のアケダクト競馬場もお客さんが少なく、人より鳥のほうが多いといってもよいくらいで、閑散としたベンチで、内田裕也に似た人がひなたぼっこをしながら弁当を食べていた。

日がな一日過ごす内田裕也似の老人 (photo by Mars Matsui)

こんな具合では経営が立ちゆかなくなるのもうなづけるが、そんな状況を打破するため、カジノを併設するアイデアが実行された。

実は、最初に競馬とカジノの融合と聞いた時、てっきり競馬場のあちこちにテーブルゲームやスロットマシンが置かれ、レースの合間に遊べるものと思っていた。しかし、実際は単に競馬場の隣にカジノを作っただけ。拍子抜けしたのはぼくだけではないだろう。

画面のなかのディーラーと勝負する人たち

アケダクト競馬場とカジノは建物の中で直結され、行き来も自由。さっそく入ったところ、ぼくはいきなり絶句した。

すべてのゲームがマシン式のゲームだったのだ。つまり人間のディーラーがひとりもいないカジノだったのだ。

ゲームは全てマシン式 (Illustrated by Mars Matsui)

ブラックジャックは大きな画面にCGのディーラーが映し出され、客の相手をしているし、ルーレットに至ってはディーラーのCGさえなく、マシンの穴から玉が出てきて回転盤に転がるだけ。遊んでいるのはどれも老人だ。

スロットマシンもズラリと並んでいたが、それらで遊んでいるのも老人ばかり……。

客のほとんどは老人で、中年がちらほら見えるだけ。まわりを見渡しても若者の姿が目に入らない。

客の大半が老人 (Illustrated by Mars Matsui)

そんなはずはない。なぜなら日本で買った旅行ガイドブックには、このカジノが「ニューヨーカーに人気」と書かれていたからだ。

だがそれはぼくの思い違いだった。ニューヨーカーと聞いて、ぼくは反射的に若者を想像したが、ニューヨーカーという言葉には、若者でなければならないという意味はない。何歳であってもニューヨーカーはニューヨーカーだ。

カジノは老人の遊びになっていくのか?

老人は我を忘れたようにスロットのスタートボタンを叩いていた。

ぼくはこっそり彼らの背後に回った。

スロットはパチンコのお化けほどの大きさで、巨大な液晶画面の中をキャラクターがめまぐるしく飛び回り、見ているこちらも目が回るほど。

そんなスロットに釘付けになり、まるで夢遊病者のようにボタンを押し続ける年老いたニューヨーカーを見て、パチンコのようにカジノもやがて老人の遊びになってしまうのだろうかとぼくは思った。

 

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