(スター・ウォーズひとり旅)オビ=ワンが隠遁生活を送った砂漠を訪ねて

チュニジア南部の風景 (撮影:喜久知重比呂)

「スター・ウォーズ」のロケ地・チュニジアひとり旅回顧録も3回目。今回から旅の回顧録に加え、私が調べたり、ルーカス監督をはじめとする関係者から聞いた、とっておきの話も紹介していきたいと思います。

チュニジア南部、バスや列車では行くことのできない「スター・ウォーズ」のロケ地。現地ではツアーにもなっている。私は、チュニジア南部トズールの街で見つけたドライバー兼ガイドのランドクルーザーに乗り、一人半日ツアー。料金はかなり値切ったので、ツアーよりも安かった。目的地の「スター・ウォーズ」ロケ地以外はドライバーにお任せ。

あちこちに「スター・ウォーズ世界」

まず到着したのは、砂漠の中に小川が流れるまさにオアシスな場所。カフェがやお土産店が並ぶ砂漠の渓谷。あちこちに散らばる「スター・ウォーズ」のような世界で、目にするものが次々とジョージ・ルーカス監督のアイデアのもとになったのではないかと考えるようになってきた。

記念写真用のラクダやお土産物店にいるトカゲもそんな風に見えてくる。砂漠でロボットを探す帝国軍の兵士がまたがるのは、巨大なトカゲのようなデューバック。「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」の冒頭でハン・ソロがまたがるトーン・トーンは顔がラクダじゃないか!

チュニジア南部の風景 (撮影:喜久知重比呂)
砂漠の峡谷シディ・ブベル (撮影:喜久知重比呂)

次に向かったのは、シディ・ブベルという峡谷。このあたりは、「イングリッシュ・ペイシェント」、「インディ・ジョーンズ」など様々な映画のロケが行われた場所。「スター・ウォーズ/新たなる希望」では、この場所であの人気キャラクターが初めて登場する。それは、先日ディズニーのストリーミング・サービスでシリーズ制作が発表されたオビ=ワン・ケノービである。

現地ではスター・ウォーズ・キャニオンとも呼ばれている峡谷で、砂漠の住民サンド・ピープルに襲われたルークを助けるのが、ジェダイ・マスターのオビ=ワン。オビ=ワンは帝国との戦いに敗れ、長い年月砂漠の惑星で、ベン・ケノービと名乗り孤独な隠遁生活を送りながら、フォースの力を持つルークを近くで見守っていたのだ。

砂漠の峡谷シディ・ブベル (撮影:喜久知重比呂)

三船がオファーされたオビ=ワン役

ルーカス監督が尊敬する日本の黒澤明監督。最も黒澤監督の影響を受けたキャラクターと言えるのが、オビ=ワン・ケノービ。日本が誇る世界的スター・三船敏郎が、その役をオファーされたことでも有名。

三船が断り、イギリスのオスカー俳優アレック・ギネスが演じたが、三船が受けていたら、「スター・ウォーズ」はもちろん、日本の映画界も大きく違ったものになっていたことだろう。白い髭を蓄えたアレック・ギネスの重厚な演技や表情は、重たい過去を背負っていることを想像させた。

「スター・ウォーズ アインデンティティー」より)

その姿は、江戸時代の日本、戦いに敗れ主君や家を失った侍たちが浪人となった姿ともオーバーラップする。大学生の時に観た黒澤明監督の「七人の侍」に衝撃を受け、SF版「七人の侍」を作ると言って「スター・ウォーズ」を制作したルーカス監督。

黒沢明「用心棒」がヒントに

黒沢明監督(左)とジョージ・ルーカス監督。(C)朝日新聞社

「スター・ウォーズ」には、黒澤監督の映画からヒントを得た演出がある。オビ=ワンたちが訪れた酒場で、ルークにいちゃもんをつけてきた宇宙パイロットの片腕を問答無用でライトセーバーで斬り落とす。“片腕を斬り落とす”という演出は、シリーズ中に何度も登場する。

オビ・ワンに腕を斬り落とされるポンダ・バーバーのマスク。スター・ウォーズ アイデンティティーより

旧3部作では、C3POがサンド・ピープルに襲われて片腕をもぎ取られ、雪の惑星でルークが雪男のようなワンパから逃れる際にも片腕を切り落とす。ダース・ベイダーと初めて対決をしたルークは、ベイダーにライトセーバーを握る右腕を切られる。2度目の対決では、ルークがベイダーの機械の腕を切り落とす。

新3部作では、のちのベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーと火山で対決。オビ=ワンは、アナキンの片腕と両足を斬るが、とどめは刺さない。ジェダイの騎士は相手の腕を斬り落とすことで戦意を喪失させ、無意味な殺傷をしないのだ。

オビ=ワン・ケノービの衣装 「スター・ウォーズ アインデンティティー」より
ジェダイの騎士の武器ライトセーバー 「スター・ウォーズ アインデンティティー」より

ルーカス監督が影響を受けたのは、黒澤監督の「用心棒」。三船敏郎演じる三十郎が、3人のヤクザをあっという間に斬り倒すシーン。2人には致命傷を負わせ、1人は片腕を斬り落とす。観客を興奮させてくれ、三十郎の刀の腕を分からせる名シーンである。

40年以上前、日本の時代劇、北アフリカの砂漠で見た風景、想像のテクノロジーを融合させたことで、これまで誰も見たことのない世界を生み出したルーカス監督。SF映画の金字塔はこのようにして誕生したのだ!

今後も、チュニジアの旅回顧録、スター・ウォーズのトリビアをお届けします。

May the Force be with you!

 

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