『男はつらいよ』山田洋次監督が寅さんの愛称「フーテン」に込めた思い

映画『男はつらいよ』50作目を監督した山田洋次監督。

「『生まれてきてよかったなー』って思うことが、なんべんかあるじゃない。そのために人間生きてるんじゃないのか」。映画『男はつらいよ』の主人公・寅さんが、甥っ子の満男に、人間が生きる意味を問われた際の返答です。テキ屋(露天商)として、ひとりで日本中を飛びまわる「フーテン」の寅さんは、作中でこうした名言をいくつも残しています。

映画『男はつらいよ』の第1作目が公開されたのは1969年。50周年目となる今年12月には、ちょうどシリーズの50作目となる『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開されます。

映画の公開に先立ち、『男はつらいよ』の生みの親・山田洋次監督は10月3日、東京・千代田区にある日本外国特派員協会(FCCJ)で、東京国際映画祭の関係者らとともに記者会見に出席しました。山田監督は現在88歳。最新作でも監督を務めています。

東京国際映画祭でJapanNow部門を担当する安藤紘平氏(左)と山田監督。

会見では、寅さんの愛称「フーテンの寅」の「フーテン」が、英語字幕で「free-spirited fool」と訳されていたことについて質問が飛びました。「フーテン」は「あちこちぶらぶらと暮らす人」を意味する言葉。spirit(精神)よりもむしろ、場所から自由であることを示す言葉で英訳したほうがよいのでは? というのです。

山田監督は「翻訳の問題だからなかなか難しい」と前置きしたうえで、「僕は(寅さんが場所だけでなく)精神が自由な男と考えたいですね。だから表現も自由である」と、昨今話題となった「表現の自由」とからめて答えました。

目的地に早く着くことは「寅さんにとって全然喜びではない」

最新作『お帰り 寅さん』では、寅さんの甥っ子・満男が、前作まで務めていた会社を辞め、ひとりで働いています。これについて筆者が、「彼が仕事を変えたのには(いわば究極のフリーランスともいえる)寅さんの影響があったのか?」と質問すると、山田監督は「満男は寅さんから受けた影響、寅さんから学んださまざまな人生についてのこと、いかに食べていくかという課題を表現するために」仕事を変えたと話し、「あくまで物語の都合でそうなったということなんですけど、その選択はそんなに間違ったことではないと思っています」と語りました。

また、この会見のためにわずか2日間の滞在スケジュールでフランスからやってきたという記者は、『男はつらいよ』シリーズで汽車や電車、駅が多く描かれることに触れ、「監督のこだわりについて聞きたい」と質問がありました。

これに対して山田監督は、「寅さんは年じゅう旅をする人間。しかも車なんか運転できない。在来線のゆっくり走る汽車に乗って、汽車のなかでお酒を飲みながら友達を作るのが好き」という寅さんの性格を表現するために、電車や駅の場面が多くなったと話しました。

さらに「列車に乗って旅をするのは楽しいことだから、早く(目的地に)着くことなんか、寅さんにとって全然喜びではないわけですね。早く着いてしまうのに、なぜ高い料金を払わなきゃいけないのか」と寅さん独特の考え方を説明し、記者たちを笑わせていました。

映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』予告編

『男はつらいよ お帰り 寅さん』は12月27日、全国公開されます。それに先立って、10月28日から始まる第32回東京国際映画祭では、オープニング作品として上映されることになっています。

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