乳がんは「ファーストクラス」が標準治療!(未婚のひとりと一匹と:09)

今回はニンゲン回にゃ

【連載】未婚のひとりと一匹と

法律的には「遺失物」として「物」扱いだった捨て猫のくるみが、前回、晴れてコヤナギ家の猫になった1週間前。人間・コヤナギユウにも進捗が。区の健康診断でみつかった乳がんですが、手術のためにいよいよ「大病院」へ行きました。

どこにメスを入れる? 乳首は?

紹介状を片手に初診の予約の電話をするのは自分。診断を受けた診療所名や、紹介状のあて名に書いてある先生の名前、そして診断のついた病名を電話で告げます。その大学病院では乳がんの対処をする乳腺科を「ブレストセンター」と呼んでいるそう。電話した翌日に予約が取れました。

総合受付で初診の手続きを済ませると、すぐに順番が。診察室に入ると、小柄で朗らかな雰囲気の女医さんT先生が座っていました。彼女が私の担当医です。

診療所から預かってきたCD-Rに入っていたのは、血液検査の結果のほか、腫瘍のエコー写真など。それらを次々に吟味して「ふんふん、ふんふん」と私の状況を解読していきます。

「診療所でも一通り検査してきていると思いますが、間違いがないようにこちらの病院でも検査をします。あと全身麻酔が可能な体質かも採血で検査しますね。さっそくですが、お胸を見せてもらっていいですか?」

シャツをめくり上げて触診してもらいます。
乳がんがあるのは左胸の上部内側。

「ふんふん。くわしく検査して実際に手術してみないと確かなことは言えないのですが、たぶん乳首は残せると思います」

そうか、乳首も摘出する可能性がある、ということにその時初めて気がつきました。
乳がんの位置や進行具合によっては、皮膚も切り取ることになるのです。

「乳がんの手術というと、昔は胸の真ん中にメスを入れ、乳腺だけではなく乳首や大胸筋も切除していたため、術後の傷が大きく目立つものでした。最近の乳がん手術は傷跡が目立たないように配慮しています。全摘出であっても皮膚にがんが及んでいなければ、中の乳腺だけをくりぬくようにして、傷が目立たないようにします。そのための切開も胸のたわみで隠れる部分にメスを入れる予定です」

そうですかーと答えながら胸を見ると、私の胸はささやかすぎて、たわんでいませんでしたが、慰められるのも切ないので黙っておきました。

オリエンテーリングでチェックポイントを通過していくかのごとく、次々と検査をこなす

「じゃあ手術の予約をしちゃいましょう、空いてる日は……」と、次の診察の予約を入れるのとまったく同じダンドリで、手術予定日が決まっていきます。

「はい、では手術予定日は4月19日。入院は前日の18日ですね。逆算して手術の摘出範囲を見極めるMRI検査は3月22日です」

高額療養費は月またぎに注意!

最後に気になるのは、お金。医療費です。
「高額療養費制度」をご存じでしょうか。

高額療養費制度というのは、標準治療の範囲に限り、所得に応じて支払う医療費が免除されるという制度。5つの区分に分かれており、一般的な社会人の自己負担はだいたい「区分ウ」で、およそ8万円程度とのこと。
安くはないけれど、8万円ならなんとかなりそうです。

高額療養費制度(4カ月以上適用されると、さらに自己負担額が軽減されます。出典:全国健康保険協会ホームページ)

一度支払ってしまったあとでも事後申請で還付金を受け取ることもできますが、事前に申請しておけば、それ以上支払う必要がありません。

対象は1カ月単位。たとえば、負担金制限が8万円で1月の医療費が10万円だと、8万円払えばいいわけですが、月をまたいでしまって「1月5万円、2月5万円」となると、同じ病気の治療であっても高額医療の対象外になってしまいます。

私の入院予定は18日。全摘出で入院が10日に延びても、月をまたぐことはなさそうです。

申請方法は簡単でした。国民健康保険ならお住まいの市区町村の国民健康保険へ、会社などの組合保険ならその窓口へ電話して問い合わせてみましょう。わたしは国民健康保険だったので墨田区の国保年金課に電話し、申請書類に住所や被保険者番号、マイナンバーを記入して郵送しました。

連載第1回でも少し書きましたが、わたしの懐事情はかなりシビア。こういった制度は本当にありがたいです。
それに「標準治療」についても、わたしは信頼を寄せています。

「高額療養費制度適用範囲内の標準治療」なんて聞くと、飛行機でいえば「LCCのエコノミークラス」みたいな印象がありませんか。目的地には着くけれど、最低限、みたいな。「標準治療」はそうではないのです。

科学的根拠と、確率の高い実証に基づき推奨されている医療方法が「標準治療」です。
追加費用を払えば受けられる「ワンランク上の治療」や「セレブ用の魔法のような新薬」なんてないのです。もちろん、技術や研究は日々進歩し、さまざまな「最先端医療」が開発されています。でも、それと安全性とはまだ結びつかないから、標準化されていないのです。

なににも変えられない命に直結する医療に関して、不安を抱くのは当然のことだと思います。でも、より確率が高い医療法を選択するなら、「標準治療がファーストクラス」なんだと覚えておいて欲しいです。

高額療養費制度の申請書を投函し、1週間ほどで「限度額適用認定証」が送られて来ました。
開封すると、昔懐かしい保険証を彷彿とさせる、はがきサイズです。はぁ、これで8万円だけ払えばOKだ、とほっとして区分を確認してみると……エ!

なんということでしょう。懐事情が寒い上に、母を扶養に入れていたため世帯収入が下がっており、 自己負担限度額は 57,600円に!

あ……ありがてぇ、けど、情けない。いや、お得にファーストクラスに乗れるんだ、ありがたいってことだけ覚えておいて、そのあと頑張ろう。

その頃のくるみの様子。

 

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