串揚げは究極の蒸し料理。和食と中華がコラボした高級串揚げに酔いしれる

ミディアムレアに揚げた「三河牛フィレ肉」

長年にわたってグルメ取材をしてきたが、いまだによく分からないのが串揚げ。寿司と同様に安さをウリにした大衆店もあれば、食材にこだわった高級店もある。ただ、寿司と違って火を通すため、安かろうが高かろうが味に大差はないと思っていた。ある店と出会うまでは。

5500円の高級串揚げおまかせコース

長いエントランスの先に店の入り口がある

それは、中華と和食がコラボした和中折衷の串揚げ店『創作串揚げ たいが』。店は名古屋最大の繁華街、錦3丁目にある。店はビルの1階。長いエントランスを通って店の入り口へ。高級感溢れる雰囲気に胸が高鳴る。

店内へ入ると、カウンターに案内された。メニューはコースのみ。私が予約したのは、5500円の「おまかせコース」。さて、どんな串揚げが出てくるか楽しみだ。

彩り豊かな「生野菜」。塩や味噌、マヨネーズなどを付けていただく

ドリンクは「生ビール」(650円)を注文。そして、最初に出されたのは「生野菜」。巷の串揚げ店ではザク切りしたキャベツがどんと出てくるのだが、ここはプチトマトやパプリカ、キュウリ、ヤングコーン、ブロッコリーなど彩り豊か。しかも、しっかりと冷やしてあって、濃厚な野菜の旨みが楽しめる。1/3ほど食べて、あとは箸休めにすることに。

「北京ダックと焼きパイナップル」。焼きパイナップルが複雑な味わいを一つにする

続いて、串前菜「北京ダックと焼きパイナップル」。ノッケから高級中華を象徴する北京ダックとは! その下にはパイナップルとバオビンで包んだ野菜とフォアグラ。

それぞれの味がケンカすると思いきや、焼いて甘みを引き出したパイナップルが見事に味をまとめ上げている。口の中にいつまでも残る味の余韻を名残惜しいと思いながらも、ビールで洗い流して、次の串揚げをスタンバイ。

尾っぽまで旨い「天使の海老」と素朴な味わいの「柿」

こちらは「天使の海老」(手前)と「柿」(奥)。“天国に一番近い島”と呼ばれるニューカレドニアの海で養殖した海老で、揚げてあってもやわらかく、旨みと甘みもしっかり。半分だけ薄く衣がつけてあるのも味と食感を考慮してのことだろう。ニクイねぇ。こんな海老は食べたことがない。

一方、柿は先ほどのパイナップルと同様に、火を入れてあるので甘みがすばらしい。しつこい甘さではなく、どこまでも繊細で上品な甘さ。ホント、すばらしいとしか言いようがない。

ジューシーな「手羽先」

次に出されたのは、「手羽先」と「ポロ葱」。名古屋では馴染み深い食材である。某手羽先唐揚げ有名店でも手羽先に餃子の餡を入れた「手羽餃子」なるメニューがあるが、食べてみるとまったく違っていた。

詰めてあったのは、海老のすり身。そこに鶏の旨みがギュッと凝縮されている。辛子明太子がアクセントになっていて、旨みの後からくるピリッとした刺激にビールが止まらない!また、ポロ葱もほのかに甘く、口の中で広がった手羽先の後味とベストマッチ。

食材の旨みを引き立てる四川風のソース

料理長の中村大介さん

コースも中盤に入ったところで料理長の中村大介さんが席まで挨拶に来てくれた。中村さんはもともと中華の料理人。ホテルの中華レストランなどで働く中でオーナーと出会い、串揚げと中華を融合させる話を聞いて、創作意欲を刺激されたのだという。

「今までにない業態ですからね。串揚げにアレンジすることで中華の奥深さを知っていただければ」と、中村さん。

「クリームチーズ」と「牡蠣」。甘口と辛口の串揚げが出てくるのもここの特徴

中村さんが手にしていたのは「クリームチーズ」(手前)と「牡蠣」(奥)。クリームチーズにはハチミツがかかっていて、柚子胡椒がちょこんとのせられている。この柚子胡椒は、名古屋市天白区にある『西家(にしや)』のものを使用。青唐辛子の辛さが際立っていて、クリームチーズとよく合う。

「牡蠣」にかかっている四川風のピリ辛甘酢ソースが牡蠣の旨みを引き立てる。これぞ中村さんの真骨頂。中華のコースでひと皿ずつ味わうのもイイが、どうしても食べているうちに飽きてしまう。その点、串揚げならばいろんな味が楽しめる。

箸休めとして出された3品。お酒にもよく合う

ここで箸休めとして出されたのは、さっぱりとした味わいの「もずく酢」(左)と山椒の香りが心地良い「北京風きゅうり」(中)、そしてオイスターソースとニンニクで味付けした「つぶ貝煮」。いずれも口の中をリセットさせるだけではなく、酒の肴としてのポテンシャルも十分。

香ばしさがたまらない「蟹爪」

続いては「蟹爪」。衣に使われているのは、トルコ料理に使われる極細麺、カダイフ。油を吸っているので、クドそうなイメージを抱きがち。ところが、食べてみるとまったくクドくはなく、パン粉よりも油の香りが際立つ。

そんな衣の奥には海老のすり身が巻きつけられた蟹爪。ただでさえ蟹爪は旨みが濃厚なのに、海老のすり身まで……。もう、こんなの反則だ。旨いに決まっているじゃないかぁ!

「揚げ油は中華料理で使われるピーナッツ油と米油を使っています。香ばしく、さらっとした口当たりが特徴なので、重たく感じることはないと思います」と、中村さん。

だし巻き卵を揚げた「ランニングエッグ」とミディアムレアに揚げた「三河牛フィレ肉」

いよいよ、コースも終盤。「ランニングエッグ」(手前)と「三河牛フィレ肉」(奥)。ランニングエッグは愛知県岡崎市にある飼料会社が手がけた、玉子かけご飯におすすめの卵だそうで、“かけ”にちなんで“ランニング”という名前が付けられたとか。

ちょっと意味が違うと思うが、この際旨けりゃどうでもイイ(笑)。串揚げの中身はその卵で作っただし巻き。で、上にはイクラの形をしただし醤油と大根おろし。だし巻きで食べても十分に美味しいだろうが、油のコクが加わって旨さは{増している。

そして、三河牛フィレ肉。絶妙な火加減でしっとりとした食感に仕上げている。しかも、衣に旨みを閉じ込めてあるから、フィレ肉であってもしっかりとした旨みが堪能できる。これが揚げ物の醍醐味だろう。

「鰻と山芋」と「安納芋」。いずれもシンプルだが、かなり手が込んでいる

最後の串揚げは、「鰻と山芋」(手前)、「安納芋」(奥)。鰻と山芋はもともと相性の良い組み合わせ。さらに、四川風の甘醤油がかかっている。まさに中華風の蒲焼き、いや、蒲揚げといったところか。鰻のフワフワ食感と山芋のシャキシャキ食感が相まって旨い。

安納芋は、生の芋をそのまま揚げたのではなく、30分ほどかけて焼いて作った焼き芋を揚げている。そのため、より甘く、食感もホクホク。上にのっている発酵バターがより甘みを引き出している。うーん、秋を感じるねぇ。

「揚げ物は究極の蒸し料理」を実感

やさしい味わいの「干し貝柱の中華粥」と「搾菜」は〆にぴったり

〆のご飯ものは、「干し貝柱の中華粥」と「搾菜」。干し貝柱ならではの奥行きのある旨みがお米の一粒一粒に染み込んだやさしい味わい。身体にスッと浸透していく。搾菜もやわらかくて旨い。これはジャンルに限らずどんな店にもいえることだが、〆のご飯が旨い店は何を食べても間違いない。それが今回も証明された。

デザートの「杏仁豆腐」は、甘さを抑えた大人の味

デザートもやはり中華の定番、「杏仁豆腐」。甘さが抑えてあり、鼻から抜ける香りがたまらない。もう2、3杯はイケるな(笑)。

これにて「おまかせコース」は終了。安酒場で食う衣たっぷりの串揚げも旨いが、やはり専門店の、それも高級店のそれはまったく違う。

以前、ある料理人から「揚げ物は究極の蒸し料理である」と聞いたことがある。衣をつけた食材を高温の油で瞬時に蒸し上げるので、旨みが逃げないから、究極というわけだ。ここの串揚げはまさにそれ。味はいうまでもなく、シチュエーションもサービスも完璧だった。うん、大満足!

 

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