「片付けで人生は変わる」 整理収納アドバイザーが語る片付けの力

整理収納アドバイザーの岩城美穂さん(撮影・西島本元)

女装する小説家・仙田学がひとりで働く女性にインタビューするこの連載。今回は「お片付けサービス」を提供するM’s Arrangement代表の岩城美穂さん(42)に話を聞きました。

整理収納アドバイザーの資格を持つ岩城さんは、滋賀県から全国に出張して家庭の片付けのアドバイスをしたり、企業やNPO法人、学校などに出向いて講演をしたりと幅広い活動をしています。そんな岩城さんに、起業の経緯や片付けの魅力について聞きました。

片付けをすることで時間とお金に余裕が生まれた

ーー整理収納アドバイザーをする前はどのような仕事をしていたのでしょうか?

岩城:子どもの頃から、親に言われるがままに何でも決めてきました。中学受験をしたのも、短大で幼稚園教諭の免許を取って保育園に勤務したのも親の勧めです。でも仕事は全然好きになれなくて。毎朝、家を出るときに吐いてから職場に向かっていました。フルタイムで働いても手取り10万円ももらえなかったですし。とにかく辛かった。でもそれが当たり前なんだって思っていました。働くって、辛くて当たり前なんだと。

――保育園で仕事をしながら、子育てもされていたんですよね。

岩城:短大を卒業してすぐ、20歳で結婚したんです。その年に長女、22歳で長男を出産して、しばらくした頃に保育園での仕事を始めました。27歳で次男を出産した後に仕事を辞めたので、仕事と子育てを両立していたのはその間ですね。いま思えば、仕事をしていた間は人に流される生き方をしていた気がします。何もかも人に決めてもらって、何かあれば人のせいにする…。そんな毎日が、本当は辛くてたまらなかったです。

ーー仕事を辞めてから、生活はどう変わりましたか?

岩城:専業主婦になってまず目についたのは、家の中がぐちゃぐちゃだったってこと。散らかり放題だったので、しばらくは毎日片付けに追われていました。そんな中、4人目の子どもを授かり、その2年後には5人目の子どもを出産しました。日々大変でしたけど、片付けは続けていました。不思議なことに、家がきれいだと、余裕が生まれるってことに気がつきました。時間とお金に余裕が生まれるんです。

ーー片付けることでお金にも余裕が生まれるのですか?

まず、物を減らすことで家事の量が少なくなり、自分の時間が増えました。それから、買い物のスタイルを変えることで、お金に余裕ができました。それまでは安いお得なものをたくさん買っていたんですけど、必要なものを厳選して買うように変えたんです。たとえば1パック98円の卵をいくつも買って、結局使いきれなくて腐らせてしまう、なんてことがよくあったんです。でも産地やブランドを吟味して選んだものなら、1パック250円の卵でも、大事に使いきれる。

食品ロスは1家庭につき1カ月1万円と言われています。買い物のスタイルを変えれば、その1万円を浮かせることができるんです。こうして時間とお金に余裕ができたことで、心にも余裕が生まれました。本が好きなので、毎週30冊くらい読みあさっていました。特に「片付け」や「収納」と名の付く本は片っ端から読みました。整理収納アドバイザーの資格を取るために勉強したのもその頃です。

長女の受験をきっかけに起業

5児の母親でもある岩城さんは、子育てと仕事を両立させてきた(撮影・西島本元)

—―片付けによってお金や時間にも余裕が出てくるというのは驚きです。

岩城:「足るを知る」ということなんだと思います。本当に必要なものって、そんなに多くはないんですよね。私の場合は、不安感や心の隙間を物で埋めていた時期もありました。お菓子作りに憧れて道具を揃えたけど結局1回も使わなかったり、行政書士の資格試験の通信講座に申し込んだけど、2ページしかやらずに押し入れにしまい込んだままになったり。そもそも何をしたいのかがわかってなかったんだと思います。でもそんな通信講座で収納アドバイザーの資格を取ったんです。

―—それが起業されたきっかけだったんですね。

岩城:その少し前に、長女の高校受験があったんです。それにあたって、長女にやりたいことをはっきりさせました。私立と公立を比べると安いのは公立だけど、やりたいことをやれるのは私立のほうだから、お金はかかるけど私立に行かせました。その判断ができたのは、片付けを学んでいたからだと思います。そういう選択をできたことが驚きで、起業のきっかけになりました。

—―単に節約するだけではなく、かけるべきところにはお金をかけるべきということですね。

岩城:5人の子どもたちのうち、上の2人は高校から私立に行かせました。3番目も今年の高校受験は私立専願ですし、その下も私立に行きたいと言われたら行かせたいとは思ってます。家は3回買っています。こう言うとびっくりされるんですけど、夫は普通の会社員で、私は専業主婦でした。それでも、不要なところにはお金をかけず、必要なところにだけかければ可能なんです。たとえば、うちは家族が多いですが、車は軽自動車を2台持っていて、遠出するときにはレンタカーを借りています。全員が乗れる大きな車はコストを考えると要らないし、不便も感じないんですよね。

片付けとは自分軸をはっきりさせること

「片付けは幸せになる手段」と語る岩城さん(撮影・西島本元)

ーーそうした経緯で片付けサービスの会社を起業しましたが、どのようなサービスを提供しているのですか?

個人宅での片づけのコンサルタント、講師業、講演、コラム執筆などをしています。楽しく、自分が幸せになるという目標に向かえるような片付けの提案をしています。

ーーどんなところにやりがいを感じていますか?

単なる片付けですが、できるようになると皆さん顔つきやライフスタイル、性格まで変わります。中には住む場所が変わったり、本当にやりたいことが見つかって新しいことを始めたり。そんな変化を見ると本当に嬉しく、お客様から報告を頂くたびにやりがいを感じます。

―—お客様はどういう方が多いんですか?

岩城:何かを変えたい、変わりたいと思っている方が多いです。たとえば鬱気味で心の中が混乱していて部屋も散らかっていたんだけれど、片付けを通して自分と向き合えるようになり、ヨガのインストラクターになった方もいます。片付けって、生き方を変えることなんですよね。

これは自分にとって必要なものか、不要なものか。物を仕分けしてどんどん捨てていくんですけど、その中で自分軸ができてくるんです。私自身、片付けを通して自分軸を作ってきた気がします。子どもの頃から常に偏差値で判断されて、親に敷いてもらったレールの上をずっと走ってきたような私には、それは大きなことでした。

ーー片付けの目的は、片付けることそのものではなくて、自分軸を作り、価値観をはっきりさせていくことにあるのでしょうか。

岩城:私は、お客様にアドバイスをするときに、捨てるものより残すもののほうに意識を向けるよう話しています。自分にとって大切なものをはっきりさせることができれば、家の中が片付くだけでなく、人生が変わることもあるんです。片付けは、幸せという山頂に行くための手段のひとつ。他にもいろんな手段はありますし、私に関わる方が幸せになってくれれば、という思いでこの仕事をしています。

 

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