思わぬ秋を感じたハンガリーとクロアチアの旅~石川浩司の「初めての体験」

ハンガリーの温泉で秋を感じる(イラスト・古本有美)

最近の日本は天候が変だ。パンツ一丁の夏が終わったら、すぐにドテラを着る冬が来てしまう。四季の国のはずなのに、秋がほとんど消滅してしまったような気がする。こう感じたのには理由がある。今月、ハンガリーの首都ブダペストとクロアチアの首都ザグレブの両都市を初めて訪れたのだが、そこには日本になくなりつつあると感じる「秋」があったからだ。今回のコラムでは、ブダペストとサグレブの思い出について綴りたい。

昼間は妻と別行動

今回は妻とふたりで行ったのだが、そこはDANROのコラムニストであり「ひとり好き」の僕である。妻も同じくひとりが好きなので、昼間はそれぞれ別行動でひとりを楽しみ、飯だけ一緒に食うというようなことが多かった。

こんな日もあった。クロアチアのザグレブに滞在しているときだ。妻が「今日はどうする?」と聞くので、「昼まで部屋でゴロゴロして、それから街にコレクションの缶ジュースを探しに行くよ」と言ったら、「じゃあ、あたし朝からひとりで出かけてくるね~」と言って部屋を出て行った。夕方帰って来たので「どこ行ってたの?」と聞いたら「スロベニア」との返答。

なんと妻は、日帰りで国境を越えて隣国まで行っていたのだ。こんな感じで予定もあまり決めず、自由な旅を楽しんできた。

ブダペストで秋を感じる

ブダペストの公園にて

今回はブダペストに5泊、ザグレブに4泊した。最初の1泊だけは普通のホテルだったが、後は全部アパートメントタイプの宿だ。オーナーから鍵を借り、古い建物の部屋を借りるのだ。

たいてい60平米以上あり、リビング、寝室、キッチンが独立している。ちょっといいソファーやテーブルなどもあるのに、ホテルよりもリーズナブルだ。その町に生活する様にゆっくりと過ごすには、オススメの宿泊施設である。

秋のブダペストの街並み(Photo by Getty Images)

まず向かったのは、ハンガリーのブダペスト。実は、ブダペストは「温泉の町」。市内各所に温泉施設がある。僕らが入った「キラーイ温泉」は、オスマン帝国領時代の建物で500年近くも前に建てられたそうだ。中央には八角形の風情ある大浴場がある。日本と違うのは水着で入るところだ。日本よりもぬるい温度設定なので、長時間入っていられて、これは気持ちよかった。

大浴場のほか、サウナなどいくつか風呂はあるのだが、なんといっても露天風呂がサイコーだった。デッキチェアーに寝転がって、ホカホカになった体を冷ましていると、大きなイチョウの木から黄色い葉っぱがヒラリヒラリ。なんとも贅沢な秋を感じてしまった。

自分の足で見つけたものの価値

ブダペストにて。荒木経惟さんの個展会場

街に出ると文化的な香りもしていた。ちょうどアラーキーの愛称で知られる写真家、荒木経惟さんの写真展が立派な美術館でやっていた。陽子さん(荒木さんの亡くなった奥さん)の写真を久しぶりに拝見して、なんとも感慨深いものがあった。

食べ物はハンバーガーやピザの店が多かったが、アジア系ではベトナム料理の店が多く、おいしかった。妻はガイドブックにも載っていないスイーツ主体の格式あるレストランを発見し、小学生が描くような栗の絵を描いてスタッフに見せて、見事モンブランを食すことができた。

やはり自分の足で見つけたものには一段上の感激がある。昔から旅をしていてよく思うことである。

列車の移動で旅情を感じる

ザグレブの街並み(Photo by Getty Images)

ブダペストに滞在した後は、次の目的地であるクロアチアの首都ザグレブを目指す。二等車でも個室という優雅な列車に乗って移動した。

外国では電車よりもバスの方が、移動手段としてはポピュラーなことが多いのだが、列車はやはり旅情がある。ずっと紅葉した木々の向こうに大きな湖を見て走るのだが、それをボーッと眺めてるだけの時間が心地よく、「あぁ旅だなぁ」と感慨にふけった。

しかしそんな思いは長くは続かなかった。ザグレブに到着し、早速スーパーマーケットで缶ビールと缶ジュースを購入したのだが、その時にちょっとしたトラブルが起こった。

ザグレブのスーパーで思わぬトラブル

ザグレブにて。頭に変なものをのせているわけではない

支払いを済ませたのだがレシートをくれず、これが僕のザグレブでの最初の買い物だったので、その時は「まぁそういうシステムなのかな」と思った。

しかし、店を出て計算してみると、どう考えてもお釣りが足りない。200クーナ(約3200円)を支払ったのだが、30クーナ(約500円)しかお釣りがない。レシートが無いので確かめようもない。

ちょうど別の場所に行っていた妻と合流したのでそのことを伝えると、「それ、騙されたね。あたし行ってくる!」とスーパーに猪突猛進。「あのおばさんだね」と言うや身振り手振りでお釣りが足りないことを激しくアピール。おばさんは黙って100クーナ札を返してきた。

明らかなちょろまかしだった。僕ならだまし通せると思ったのだろうが、妻の勢いに対しては「返って面倒なことになる」と瞬時に判断したのだろう。妻の圧勝であった。

レストランで見た懐かしいもの

その後は特にトラブルもなく観光を楽しんだ。レストランでは思わぬ発見があった。飲み物の料金設定が日本とは違うのである。水、コーラ、ビールの値段を比較すると、ビールが一番安く、水が一番高いという場合がある。日本の酒税が高いのか、クロアチアの水が高いのか…。

カフェでは懐かしいものを見つけた。隣の女性客たちの元に運ばれて来たのは、ストローが添えられいる水が入ったグラスだった。「炭酸水かな?」と思ったら、おもむろに付属の小袋を開けてグラスに注いだ。

次の瞬間、グラスは緑色に。なんとしばらく見ていなかった"粉末ジュース"だったのだ。昔駄菓子屋でよく買ったものが、こんなところでお目にかかれるとは。妙に懐かしくなってしまった。

趣味の空き缶収集もはかどり、両都市で60缶の空き缶を手に入れることができた。思わぬ秋を感じることができたブダペストとザグレブの旅。細かい予定は決めずに、自由気ままな旅を楽しむことをオススメしたい。

今回の旅で買った缶ドリンクは60缶

 

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