首里城焼失、言い表しようのない地元の喪失感~沖縄・東京二拠点日記38

在りし日の首里城

11月6日 羽田空港から那覇に移動した。首里城が燃えて1週間が経った。一報を受けて燃え盛る首里城を間近で撮影し、琉球新報の1面をかざったのは「藤井誠二の沖縄ひと物語」の相棒、写真家・ジャン松元さんである。カメラとレンズの何本かをひっつかみ現場へ駆けつけたという。

言葉にあらわしようのない首里城の喪失感

警察官などに近づくのを静止され、最寄りのモノレール駅から撮影したと、あとで本人から聞いた。同連載で一度組んだ又吉カメラマンについては、2019年11月8日付の「琉球新報」ウェブニュースに、一報を受けた同社の記者たちがどう駆けずり回ったか記録されている記事の中に見つけた。

午前4時)同22分、写真映像部の又吉康秀は首里当蔵町にいた。県立芸大前の人混みの隙間から正殿を撮影した。県立芸大で学生時代を過ごし、当たり前のように見ていた首里城が燃える姿を目の当たりにして動揺した。県立芸大の運動場から風向きを確認し、小型無人機(ドローン)で燃える首里城を撮影した。付近を警戒中の警察官に注意され小型無人機を下ろし、映像を本社に送信した。

夜、栄町や安里付近でいつも行っている居酒屋などをまわった。ぼくは2か月に1回ぐらいのペースで、大阪朝日放送の情報番組内で取材報告のコーナーを持っているのだが、そのコーナーで首里城消失についての地元の人々の思いを伝えるためだ。

だいたい40歳代から70歳代まで知り合いにマイクを向けた。最初はしぶっていたが、それぞれの思いを語ってくれた。当然だが世代によって思いはまちまちで、70歳代の男性は「かつては独立国だった象徴が消えた。沖縄戦の10.10空襲で燃えて、30年以上かかって再建したのにショックだよ」と言った。共通していたのは、「いつも首里城はあるのものだと思っていたのに、それが一瞬で燃えてしまい、この喪失感は言葉にあらわしようがない」ということだった。

11月7日 昼までバルコニーの掃除や植物の剪定。自動水やり機の電池切れがちょっと前に起きたらしく、一部の植物が枯れてしまった。電池を交換。沖縄の植物であるガジュマルやクロトンは水さえあたえれば、また芽を出してくる。生命力が強いものがほとんどだ。

スタッフと首里城へ。坂道をゆっくりとのぼり、守礼の門の琉装をしたお姉さんや、まばらな観光客の中に沖縄の方らしき人を見つけると声をかけた。みなさんが半泣きで動揺を抑えられないようだった。

近くのカメラマンの深谷慎平君のオフィスにおじゃまして歓談。浦添の「たぬき弁当」に寄り、三枚肉の煮付けやら、ゴーヤー炒めやら惣菜をあれこれ2パック分買う。ここのはおいしい。泊に移動して「串豚」でスタッフで食事をした。あいかわらずホルモンは絶品だが、めったにメニューにない、生わかめがウマイ。

「串豚」の生わかめ

犬になつかれる写真家

11月8日 カメラマンの平良竜次さんの自宅マンションに、スタッフともどもおじゃまする。首里にあって、直線距離にして500~600メートル。平良さんは動画を撮っていたのでパソコンで見せてもらう。骨組みが燃え落ちる寸前に画面の片隅に消防車の放水が映っていたが、焼け石に水とはこのことだ。

平良竜次さんの自宅マンションから

帰りにいつもの真嘉比にあるスーパー「サンキュー」へいくと、今月いっぱいで閉店するらしく、慌ただしい。沖縄でのぼくの大切なひとり時間を過ごす場所がなくなってしまう。ここで植物コーナーを見て回る時間が大好きだった。いつも拙宅に植物を配達してくれる兄さんが「藤井さんですよね」と声をかけてくれたので、うれしかった。

でかい鉢をふたつ買ってタクシーに無理やり乗せてもらい帰宅。次の予定までに時間があったので、安里の「クレイジードッグカフェ」で珈琲とチーズケーキで一休み。沖縄で最初のジャズ歌手・与世山澄子さんがおられたのでごあいさつ。

彼女の店「インタリュード」はこのすぐ近く。ライブハウスなのだが、スタジオとして使いたいというミュージシャンが多く、UAさんや菊地成孔さんなど有名なミュージシャンがいる。ぼくも那覇市に仕事場を構えたころ、「インタリュード」がすぐ近くにあることがうれしくて、何回か通った。

夕方からフランス名誉領事のジスラン・ムートンさんのフランス語教室へ。「琉球新報」のぼくの月イチ連載の撮影。帰りに写真家のジャン松元さんと横の「カフェ VG」で打ち合わせをした。カフェの飼い犬が他の客には激しく敵意むき出しで吠えるのに、ジャンさんにだけはピタッと寄り添っていた。「俺は動物に好かれるんだよね」とジャンさんは笑っていた。

ジスラン・ムートンさんと
犬になつかれるジャン松元さん

夜は栄町でじゅんちゃんと「アルコリスタ」と「おとん」に顔を出した。「おとん」ではライターの平山ゆうこさんと、吉田拓郎や中島みゆきのバックでドラムを叩く名ドラマーの島村英二さんがおられたので御挨拶。

アルコリスタの矢島裕光さん

知る人ぞ知る立ち飲みバー

11月9日 たまっていた原稿を朝から書く。朝飯は島豆腐。普久原朝充君にある仕事を手伝ってもらっていて、夕方からその打ち合わせをするために栄町で待ち合わせしていたが、合流する前に、広告代理店勤務の杉田貴紀さんから電話があり、栄町市場場内にある「ソリアーノ」へ。生のヒューガルデンが格安で飲める、知る人ぞ知る立ち飲みバーだ。

ソリアーノで、杉田さんとマスターのたかおちゃん

普久原君も来たので、珈琲屋台「ひばり屋」が月に一度やっているイベント「夜ひばり」にいこうという話になり、フレンチの職人が握る寿司を喰うことなった。いやいや、ウマイ。シェフはちかく、栄町に店を出すという(松川英樹さんがやっていた、おでん「べべべ」のあと)。

「夜ひばり」でフレンチの職人が握った寿司

普久原君と「うりずん庵」でさらに寿司などを喰ってから「栄町りうぼう」で食料品を調達して解散した。

(追記)地名に関する記述に誤りがありましたので、修正しました。

 

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