「好きなことを仕事にする」仕事に行き詰まった女性起業家が気づいたこと

スタイリストの相沙希妃香さん(撮影・西島本元)

「ひとりを楽しむ」をテーマに、女装する小説家・仙田学が女性起業家や経営者にインタビューするこの連載。今回は、スタイリストの相沙希妃香(あいさき・ひめか)さん(45)に話を聞きました。

8年前に独立した相沙希さんは、企業や個人を対象として、スタイリングに関する研修やアドバイスを行っています。そんな相沙希さんが独立をしようと思ったきっかけは、友人のある一言でした。

何が幸せかわからなかった

――元々メイクやスタイリングに興味があったんですか?

相沙希:子どもの頃から、お人形遊びが大好きでした。お洋服を変えるだけで、印象がガラッと変わるのが楽しくて、夢中で遊んでいました。

19歳で結婚して、3人の子どもを授かってからは、頑張れば幸せになれると信じて子育てをしてきました。でも、頑張れば頑張るほど何が幸せなのかが分からなくなっていって…。

子どもが小さい頃は化粧品の訪問販売の仕事をしていましたが、好きなことを仕事にして、可愛い盛りの子どもたちに囲まれているのに、仕事と家事と育児に追われる日々で、幸せどころか、何をしても満たされないと感じていました。

(撮影・西島本元)

――仕事はそんなにハードだったんですか?

相沙希:その訪問販売の会社は、エステサロンもしていたので、オーナーになったんです。訪問販売員の時は、目標と在庫に追われていつも背中に重い石が乗っているみたいな感覚がありました。その辛さから逃れるための選択でした。

でもサロンの経営を始めてみると、人を育てていくための大変さが加わったんです。気持ちが空回りしてついつい強く言ってしまって反発されたり辞められたり。家に帰っていつも泣いていました。

「人生は楽しむものなんだよ」

――エステサロンを経営しながら3人のお子さんの育児をする生活は、本当に大変だったでしょうね。

相沙希:その頃のことは、忙しすぎてほとんど記憶がありません。子どもたちを保育園に預けて、仕事をして、お迎えに行って、ご飯を食べさせて、お風呂に入れて、寝かしつけて、その後に仕事の続きをして…。それが毎日続いていました。夫も経営者で忙しくしていましたし、なかなか家族でゆっくり時間を過ごすというわけにもいきませんでした。

――エステサロンのオーナーを辞めて起業しようと思ったきっかけは?

相沙希:ある友人のひと言がきっかけでした。その方は2度の離婚を経験して、子育てをされていました。「人生は頑張るんじゃなくて、楽しむものなんだよ」って。私は当時35歳でした。それを聞いて、好きなことを仕事にしたいと強く思うようになりました。独立すると決めてから2年間、エステサロンは続けながら、少しずつお客様を手放していきました。それと同時に、いろんなスクールに通って、色彩とファッションと心理学を新たに学びました。

好きなことを仕事にする

「好きなことに注力することにした」と話す相紗希さん(撮影・西島本元)

――どういう事業を始めようとされたんですか?

相沙希:「色」と「メイク」で女性をハッピーにする、という漠然としたコンセプトはあったものの、なかなか形にならず、悩みました。そんな中、ある起業塾の先生に出会ったんです。そこで、自分には何が向いているのかを知ることができたことが大きかったです。

例えば、エステサロンの経営をしていた頃、私は文章を書くことは苦手ですけど、集客に繋がると思って無理やりブログを書いていました。でもほとんど集客には繋がりませんでした。それは向いていないことを無理やりやっていたからだなって気がついたんです。だから向いていること、好きなことに注力することにしたんです。

――それではどんなことが好きなことだったのですか?

相沙希:子どもの頃、お人形遊びが好きだったことを思い出しました。着せ替え人形で遊んでいると、服を替えただけで印象がガラッと変わるのが楽しくて。同じ顔なのに、全く別の顔に見えてくるんです。大人になってからもそうで、人にメイクをしていると楽しい。メイクでその人の印象が変わって、喜んでもらえると、とても嬉しいです。

人前に出るのも好きです。趣味でベリーダンスをやっていますが、きれいな衣装を着て人前で踊るとテンションが上がります。そんなことが分かるようになってきて、ネットでの集客は減らしました。私にとってはお客様の顔が見えるかどうかがとても大切なんだなと気づいたんです。

だから実際にお会いして、目の前の方に私の提供できるサービスをおすすめすることにしました。ブログは今はやめていて、インスタを日々更新しています。好きなことをしていると、お客様は自然と増えていきました。

――好きなことを見つけるって意外と難しいですよね。でもそれが事業を継続させていくうえで大切なことなんですね。

相沙希:好きなことでも親や周りの人たちに反対されて諦めてしまうことがありますよね。でも自分で「やっぱり好き」って認めることって大切だと思います。それを徹底していくことで、認めてくれる人も出てくる。

人生って、誰と出会って誰と一緒にいるかで何もかも変わってくると思います。その誰かに出会うためにも、自分が好きになれることを見つけることは必要だと思いますし、願わくは私がその誰かになりたいと思っています。

(撮影・西島本元)

 

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