ひとりを大切にした番組を作りたい テレビ東京・佐久間宣行さん 後編

(撮影・斎藤大輔)

テレビ東京の大人気番組『ゴッドタン』『ウレロ』シリーズの演出・プロデューサーとして知られ『ゴッドタン』シリーズでは映画監督も経験。4月からはパーソナリティーとしてラジオ番組に出演し、リスナー感謝イベントは抽選になるほど大人気の佐久間宣行さん。番組プロデューサー以外でも幅広い分野で活躍を続ける佐久間さんに、ラジオパーソナリティーや番組作りに寄せる思いについてお話を聞きました。

【前編】学生時代は「カルチャーオタク」でした・・・ テレビ東京・佐久間宣行さん

番組作りは組織作り

――ご自身の著書『できないことはやりません~テレ東的開き直り仕事術~』に「番組作りは組織作り」とありました。

佐久間:テレビ番組は始まると終わりなき旅、マラソンのようなものなんですね。視聴率が取れなくて終わるか、面白くなくなって終わるかです。1回の特番であれば個人の努力で作れますが、連続もののバラエティー番組の場合は、組織作りをしっかりやらないとクオリティーが保てません。

それから、僕の作るタイプの番組は毎回企画が違うので「これが面白いと思う」という共通項やコアな価値観の共有も大切です。「この部分は面白いけど許せない」「これはやるのは失礼だし、下品だからやめよう」「一見下品に見えるけど面白いね」というような物事に対する感じ方が同じでないと、一緒にやれないんですね。組織作りは、共有できる価値観を持つ人を集めることを重視しています。

――他に番組作りの上で心がけていることはありますか?

佐久間:入社当時は難しいかもしれませんが、20代も後半になると「自分のできることとできないこと」が分かってきます。例えば、自分はデザインセンスを元にしたビジュアル作りは不得意かもしれないけど、コミュニケーションが得意なので、タレントさんと物事を進めることはできる、というようなことです。

そうやって自分のできないこと、できることが分かってくると、チーム編成にとって大切なのは「自分のできないこと」を見極めることだと分かるんですね。

自分のできないことを見極める

――どういうことでしょうか?

佐久間:自分が得意なことは自分が頑張ればいいのですが、一人では解決できないことが出てくると「この人の力が必要だ」となります。頼りにしたい人が分かるようになれば、自分ひとりで行き詰まっても何とでもなるので。

後輩にもよく言うのですが、20代で幅広く勝負をして、早く自分の「できること」と「できないこと」を見極められるようになった方がいいですね。

――『ウレロ』シリーズのオープニングがとてもかっこいいと思いました。

佐久間:あのオープニングを作っているのは現在、NHKの大河ドラマ『いだてん』のオープニングも手がけている映像作家の上田大樹さんで『ゴッドタン』の題字も書いてもらっています。今やプロジェクション・マッピングも駆使する日本一のビジュアリストですが、8年前に彼に依頼しました。

僕自身はビジュアル作りが得意ではないのですが、普段から作品を観て気になった人はチェックしているので、得意な人を見つけるのは上手いんです。上田さんは劇団「ナイロン100℃」などの劇中映像で知っていました。

――新番組『ソクラテスのため息~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』(水曜22:00~)でMCを務める滝沢カレンさんのコメントが絶妙ですね。台本はあるのですか?

佐久間:滝沢さんのコメントはすべてアドリブです。台本にこだわらず、滝沢さんに楽しんで頂けるように番組を作っています。滝沢さんは物を知らないギャルやいわゆるおバカを芸風とするタレントなどとは完全に違った存在です。

中学生の時に友達と「勉強はしない」と約束して勉強はやめたらしいのですが、世の中に対するや知識欲、何かを知るということに対して喜びを感じられる人です。

――滝沢さんのキャスティングのきっかけは何だったのでしょうか?

佐久間:『徹子の部屋』で徹子さんと話している様子がキラキラしていました。切り返しが早く、学ぶことも好きな方であるということが番組で分かったんですね。知識欲と学ぶ機会がなかったことのギャップが面白いと思いました。そこで、番組で学ぶ機会を用意して、これを機に学んでいただこうと出演を打診しました。

ラジオパーソナリティーで得たもの

(撮影・斎藤大輔)

――ニッポン放送の『オールナイトニッポン0(ZERO)』(水曜27:00~)のパーソナリティーが好評です。話す練習はしたのでしょうか?

佐久間:特にしていませんね。ただ、ラジオの台本は、オープニングとコーナーで話さなくてはならないことが決められている場合以外は、フリートークなんです。CMの2ブロック目は台本に「フリートーク」とだけ書いてあるんですね。なので、フリートークは毎週15分考えています。

――深夜の生放送が終わったあと、そのまま朝、お嬢さんのお弁当を作る話が面白かったです。

佐久間:オールナイトニッポンの他のパーソナリティーは若く、家庭を持っているのは僕だけなので(笑)。話が被らないのは面白いかもしれませんね。

――テレビの仕事はラジオの仕事に生かせていますか?

佐久間:サラリーマンとしてテレビの仕事をやっているということは、天才ではないわけです。天才はもう10代の頃からやっていて、会社に入らなくても仕事をしていけます。

僕はたまたまサラリーマンとしてもの作りに関わってきて、その中で作風もチーム編成も人並みに悩み、同時に家庭も持ちながら組織のはざまで働いてきました。そういう意味ではもの作りや組織について考える時間が長く、リスナーのみなさんの悩む気持ちが理解できます。

自分が何者かになりたいけれどもなれない学生、仕事を始めたばかりで今の仕事が向いているのかどうかも分からない20代のサラリーマン、ある程度の年次まで頑張ってきて「サラリーマンって大変だよな」と思っている50代の方から、よく「聴いているよ」と言われますね。

――あらゆる悩める世代のことが分かるのですね。

佐久間:ラジオのパーソナリティーは専業でやっている方もいますが、多くが何かの分野でスターになった方ばかりです。僕のように組織人で、それなりに働いて苦労もしてきた人間が話すことで、いつものラジオとは異なる価値観の話を聴いて頂けるのではないかと思っていますね。

――ではラジオの仕事がテレビの仕事に生かせたことはありますか?

佐久間:もちろんあります。僕のやっている番組の見逃し配信の再生回数が倍になりました。制作の裏側を話すので、視聴者の方は観たくなるようですね。

番組の反響はSNSなどで探りながら番組を作っていましたが、毎週、お便りを読んで質問に答え、リスナーのみなさんと向き合う中で、ダイレクトに感じたことは番組に生かしやすいですね。

「ひとり」を大切にする番組作りを

(撮影・斎藤大輔)

――ひとりの時間はどのように過ごしていますか?

佐久間:映画も芝居も全部自分ひとりで行くんですよ。誰かを誘って行ったことは15年間ありません。誰かと行く人が信じられないという感じですね。昔と違って今は、感想を語り合いたければSNSで共有すればいいですし。本当にひとりが好きですね。

行きたい映画を四つぐらいカレンダーに書いておいて、隙間の時間を見つけて観に行っています。

――インターネットで好きな情報にしかアクセスしない今の若い世代は、共通の価値観を持つことが難しくなっています。そのことについて、どのように思われますか?

佐久間:確かに、若い世代は価値観がタコツボ化していますよね。そうした状況でテレビにできることは、自分と地続きの世界に別の世界があることを伝えることです。例えば、今この瞬間にも貧困や災害に苦しむ人たちがいるというようなことですね。もう一つは、多様性、つまり自分と他人は違うということを伝えることだと考えています。

――なるほど。

佐久間:その中でも「みんなそれぞれ違っていて、究極的にはひとり」ということを意識して番組を作っています。ひとりを大事にしてひとりで楽しむ方法を覚えた方が、結果的に他人も大事にできるのではないかと。

世の中にはこんなに変わった人間もいて、あなたも私もそれぞれの人生を生きている。みんな「ひとり」でそれを認め合いたいという気持ちが、番組作りの根底にあります。そのことを伝えていくのが僕の役割だと思っていますね。

 

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