日本酒の「ひとり飲み」にオススメ 酒屋に併設された「角打ち」の魅力

角打ちでは豊富な種類の日本酒が楽しめる(イラスト・古本有美)

このごろますます日本酒が好きになってきました。「とりあえずビール」ではなく、初めから日本酒を頼むことも増えました。

飲み屋を選ぶ基準も、おいしい日本酒が豊富にそろっているかどうかが重要になっています。たくさん食べなくても満足できるようになってきたので、日本酒をちびちび飲みながらつまみを楽しめるお店が性に合うようになってきたみたいです。

日本酒の魅力の1つは、種類の豊富さ。やはり、日本で造られているので驚くほどたくさんの日本酒があります。日本酒の品揃えが良いお店に行くと、毎回、初めて目にする銘柄に出会えます。

それに、日本全国で造られているので、都道府県で選ぶ楽しみもあります。私は福島生まれなので、福島のお酒があるとつい頼んでしまいますし、その日の気分で何となく好きな県のお酒を選ぶのも、ちょっとした旅気分が味わえます。

酒屋に併設された角打ちの魅惑

そんな日本酒飲みの私にとって、最近のお気に入りは、酒屋に併設された飲み屋、「角打ち(かくうち)」です。酒屋がやっているのでお酒が安く、種類も豊富。お店によって形態もさまざまで、普通にお酒を注文してついでもらう店もあれば、酒屋から勝手に取ってきて飲む方法もあります。(もちろんお金は払いますが)

後者のタイプで以前通っていたのが、東京・恵比寿から代官山に向かう途中にある酒屋です。そこは酒屋の脇にカウンターがあって、お店で買ったお酒やおつまみをすぐさまいただくことができます。要するに、イートイン形式の酒屋というわけです。

普通に酒屋の値段で買えるし、日本酒に限らずお酒の種類が豊富なので、飲み屋だと高くてあまり頼めない酒をここぞとばかりに買っては飲み、また買っては飲むということをくり返してしまい、気がつけば正体をなくしかけるほど危険な場所でした。

カウンターのすき間にもぐり込む

最近よく行く店の1つが、酒屋の隣にある立ち飲み酒場です。そこは日本酒メインの酒屋で、毎回見たことがない酒が日替わりのメニューに書かれていて、私を幻惑します。

常にお客さんで賑わっているので入るのがためらわれるのですが、酒のためならと気を強く持ち、少しのすき間を見つけてカウンターにもぐり込みます。まずは日本酒を選び、お猪口に注がれたお酒が五臓六腑に染み渡るのをゆっくりと感じてから、つまみを注文します。

ふと周りを見渡すと、会社帰りと思われる2、3人のサラリーマンや男女2人連れ、ひとりで来ている常連客などがひしめき合って、思い思いに楽しんでいます。私はひとり、定位置を持たない落ち着かなさを感じながらも、なるべくゆったりとした雰囲気を醸しつつ、お酒を味わっていきます。

仲良くならないよう身構えてしまう悪い癖

隣に私と同じようなひとり客が来たときは、ふとした機会に会話が始まるかもしれないというゆるやかな緊張感が走ることもあります。私は誰とも話したくないという強い意志を持っているわけではありませんが、特に会話を求めてもいないので、自分から話しかけることはあまりありません。

実は私には、飲み屋ではなるべく馴染みになりたくないという思いがあります。だからお店の人ともあまり仲良くなろうとはせず、何度も来ているのにいつも初めて来た客のような、よそよそしい態度のままでいます。

そこが気に入ったお店であればあるほど、馴染みにならないように気をつけているくらいです。仲良くなるのは楽しいのですが、それによってそのお店に行きづらくなってしまうのがいやなのです。

たとえば、ふと隣の人と話して意気投合したとします。「また今度」などと言って別れ、後日再びその店に行くと、またその人がいるので自然と隣に行き、会話するという流れになるのがちょっといやなのです。

ひとりで飲みたいときもありますし、そもそもひとりになりたくてこうした酒場に行くので、話し相手が固定化されてしまうと、おそらく自分はその店から足が遠のいていくだろうと思います。

たまたま隣にいた人が出張で来ていて、おそらくもう二度と会わないだろう、といった刹那的な出会いなら歓迎なのですが……。このあたりは、まったくもって大人になれないなあと思います。

「都度払い」は底なしの誘惑

そういうわけで、もっぱら酒と会話しているわけですが、これが楽しいのです。

最近よく行くお店は、都度お金を払うシステムです。今日は3000円で終わらせるぞと誓い、1000円札3枚を場に置いて、飲みを始めます。

持ち金が減るのに伴って、残りを酒に投下するか、つまみを頼むかで迷い始めます。たとえば1200円残っている場合、400円の日本酒を3杯飲むか、もう1品頼んで酒を2杯にするかで、しばし葛藤します。

今日は3000円以内で収めるぞ、とあらかじめ上限を定めていても、残り金が200円になると、あと200円足せばもう1杯飲めるな、などと邪(よこしま)な考えが生まれ、ついまた頼んでしまいます。

それをちびちび飲んでいるうちに、今度はもう1品つまみがほしくなって、じゃあもうちょっとだけと、結局1000円札をもう1枚差し出してしまうのです。まるでギャンブルにはまっているかのような、底なしの誘惑におぼれ、単価が安いだけにもう少し、もう少し…と飲む量が増していきます。実におそろしいシステムです。

とはいえ、角打ちはおいしいお酒が豊富なので、お酒が本当に好きな人たちが集まるのが魅力です。彼らのお酒談義をそれとなく聞きながら、盃を乾かしていくのはなんとも贅沢な時間なのです。

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