(花と暮らす、花を楽しむ)北海道のガーデンを巡る

(撮影・時津剛)

その土地の風景や特色を生かしつつ、豊かな植物や花々で私たちの目を楽しませてくれるガーデン。特に北海道には、地形や植生に応じた特色あるガーデンが、各地にあります。今回は、帯広と札幌周辺に点在するガーデンをご紹介。北海道ということもあり、どのガーデンも、寒さの厳しい11月から翌4月の末までは閉園してしまいますが、ゴールデンウィークの頃には開園されます。今から、来春の訪問の予定を立ててみるのも楽しいかもしれません。

【写真特集】北海道のガーデン

花と食と農のテーマパーク「十勝ヒルズ」

丘陵地から眼下に一望できるのは帯広の市街地。広い青空の下、日高山脈や十勝平野を望む雄大な景色には、思わず息を飲んでしまいます。「十勝ヒルズ」は、2009年に開園したガーデン。「花と食と農のテーマパーク」をコンセプトとしています。

ガーデン部分は、七つのテーマガーデンで構成されています。ピンク色の植物でデザインされたカラーガーデン「アニーカの庭」、フルーツやお茶の香りがするバラを植栽した「ローズガーデン」、ピクニックエリアに広がるペレニアルボーダー「アルフレスコ」、「エディブルフラワーや果樹、野菜、ハーブを育てている「ヴィーズ・ポタジェ」、西洋ヤナギとスイレンが咲く「ナチュラルオアシス」、一年草や宿根草で彩る花の小島「フラワーアイランズ」、青と白の花で十勝の空をデザインした「スカイミラー」です。

ヘッドガーデナーを務めるのは、高田玲子さん。7人のスタッフと管理を手がけています。いつ訪れても楽しめる庭づくりを心がけているそうですが、
「ここは遮るものがない開放的な眺望が特徴なので、私の好きなナチュラルな淡い色合いの花を多くセレクトするとぼやけてしまいますので、強い色もバランスよく選ぶようにしています」

これに加えてヒルズファーム、ファームレストラン ヴィーズも併設されています。 ヒルズファームでは無農薬で市場にあまり出回ることが少ない珍しい野菜を育てていて、その恵みをレストラン ヴィーズでいただけるのです。またヴィーズでは、本国から一流シェフを招いて、ハンガリー料理を提供。目玉は「マンガリッツァ豚」です。ヘルシーで、通常の豚よりも脂の融点が低いため、ラードをバターのようにパンにつけて食べられるのが特徴です。

花、食、農、三つのジャンルをすべて堪能することで、忘れていた自然のありがたさ、感動を、五感で味わうことができるつくりになっているのです。

菓子店包装紙に描かれた花々が咲く「六花の森」

(撮影・時津剛)

北海道のお土産といえば、六花亭のお菓子。白地に山野草柄の包装紙を、みなさん、一度はどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。この花柄包装紙に描かれた草花でいっぱいの森を作りたい、との思いから、02年に誕生したのが「六花の森」です。

日高山脈を背にした10万平方メートルの敷地には、なだらかな緑の丘が広がり、澄んだ水をたたえた三番川が流れています。樹齢100年のニレの木や、六花亭の包装紙に描かれた六花――エゾリンドウ、ハマナシ、オオバナノエンレイソウ、カタクリ、エゾリュウキンカ、シラネアオイ――なども季節ごとに楽しむことができ、散策していると、まるでどこかの村に迷い込んだような錯覚を覚えてしまうほどです。

庭内には、安西水丸作品館、坂本直行記念館などの美術館が点在し、アートを堪能することもできます。展示棟はすべて、クロアチアの古民家を移築したものというこだわりぶり。ヨーロッパの建物が、この北の土地の風景にしっくり馴染んで心を和ませてくれます。

また、オリジナルグッズを販売するショップとカフェを併設した「六‘ café(ロッカフェ)」では、名物のバターサンドや濃厚なヨーグルトを使ったスイーツなどを味わうこともできます。自然と芸術に触れ、日頃の疲れをゆっくり癒せそうです。

未来に向けてカーボンオフセットを目指す「十勝千年の森」

(撮影・時津剛)

十勝毎日新聞社の森づくりによる環境貢献活動「カーボンオフセット(炭素相殺)」が原点となって生まれたガーデンです。「新聞は大量の紙を使う。環境破壊を毎日繰り返している仕事だ。ならば、植樹をして森をつくっていけば、カーボン(炭素)をオフセット(相殺)できるはずだ」という考えの下、スタートしたプロジェクトでした。

対象となった清水町御影地区の土地500ヘクタールは、かつての放置された開拓地。当初は2メートルにも及ぶクマザサが生い茂る荒地を整えていくにつれ、自生していた木々は成長し、色々な山野草も咲いていきました。

地球環境のことを1000年単位で考えよう。そして、森、庭、農、アート、食と、様々な手段で人と自然が触れ合える機会を設けよう。その考えからたどり着いたのが、この「十勝千年の森」でした。

中核となるのは、「アースガーデン/大地の庭」「メドウガーデン/野の花の庭」「フォレストガーデン/森の庭」「ファームガーデン/農の庭」の四つのガーデン。このうち「アースガーデン」と「メドウガーデン」は、イギリスのガーデンデザイナー、ダン・ピアソンの設計によるものです。

森の小道を抜けると突然現れるのが「アースガーデン」。広大な緑の大地と、日高山脈を背にした丘が織りなす雄大な風景に、まずは圧倒されます。広々とした芝の上を、寝転んだり、セグウェイを走らせたり、自然と一体となった感覚を存分に味わえるのが魅力です。

そして、十勝の大自然からインスピレーションを受けたガーデンデザイナー、ダン・ピアソンによってデザインされた「メドウガーデン」は、長い時間をかけて独自の植生のリズムを築いて進化し、1年ごとの庭の変化を楽しめるようなつくりになっています。

「アースガーデン」と「メドウガーデン」はイギリス・ガーデンデザイナーズ協会(The Society of Garden Designers)主催SGD AWARDS 2012で大賞(Grand Award)と国際賞(International Award)を受賞。そのほかにも「アースガーデン」は15年日本芝生文化大賞の大賞受賞。さらに17年には、ガーデンそのものが、土木学会デザイン賞最優秀賞を受賞しました。

そのほかアートが点在していたり、チーズづくりや乗馬なども楽しめたりと、アクティビティも充実。北海道ならではのスケールの大きな自然を味わうならぜひお勧めしたいガーデンです。

「おとぎの国」に迷い込んだような「銀河庭園」

(撮影・時津剛)

恵庭市にあるテーマパーク「えこりん村」。その中の施設のひとつ銀河庭園は、10ヘクタールの敷地に数々のテーマのガーデンとエリアが広がる、06年オープンのイングリッシュガーデンです。デザインを手がけたのは、英国チェルシー・フラワーショーのベストガーデン賞を皮切りに金賞を6回受賞したバニー・ギネス。16年からは、吉谷桂子さんが、ガーデンスーパーバイザーに就任。より親しみやすいガーデンを目指して、新たな魅力の開拓に努めています。

春はゴールデンフラワーウィーク、初夏はブルーフラワーウィーク、夏はローズウィーク(バラ祭)、そして秋はダリアウィークの期間が設けられていて、季節の花々が庭を華やかに彩ります。恵庭市の風土に合った植栽を行い、庭園内で使われる用水には地下水を使用したり、植物の栽培についても、農薬を使用しない方法を継続的に実践していたりと、環境に配慮したイングリッシュガーデンを目指して管理しています。

印象的なのは、庭園内に広がる高低差を利用したダイナミックなランドスケープと、バラエティに富んだテーマ設定。池の中に石の大蛇が潜んでいる「スネークガーデン」や廃棄された鉄筋や車から蘇った廃材作品で作られた「サルベージガーデン」など、子どもでなくともワクワクするものもあれば、気品あふれる「ローズガーデン」など、美しさを堪能できる庭もあり、いくら時間があっても足りません。

まるで「おとぎの国」に迷い込んだような気分になるガーデンです。プリンセス風の衣装を纏い、庭園内で写真撮影ができるイベントを行うこともあります。子どもからお年寄りまで幅広い層に人気だそうで、この際、その気になって楽しんでしまうのもいいかもしれませんね。

森の空気に体の隅々まで癒やされる「イコロの森」

(撮影・時津剛)

「イコロ」とはアイヌ語で「宝物」を意味する言葉。苫小牧市の林の中に静かに作られた11のテーマガーデンは、まさにこの土地の宝物、天から与えられた自然の恵みをあらゆる角度から味わえる豊かなガーデンです。4人のガーデナーの手によって、自然の植生を生かしながら、それぞれのテーマを大切に作られています。

イコロの森を代表する山野草や北海道に自生する水辺の植物を楽しめる「ナチュラルガーデン」、このガーデンの代表でありローズグロワーの工藤敏博さんプロデュースのバラの庭「ローズガーデン」、約90メートルの美しい芝と柔らかい色彩のボーダー花壇のコンビネーション「ボーダーガーデン」、さまざまなトーンの白い花や斑入のグリーンを集めた「ホワイトガーデン」など、それぞれのテーマを楽しみながら散策していると、静謐な森の空気に体の隅々まで癒やされるような気持ちになります。

敷地内には、ガーデンを構成する宿根草、花木、バラやガーデナーが選んだ、北海道の気候に合った自家製産苗、輸入苗などを売るナーセリーや、食事や自家焙煎のコーヒーを楽しめるカフェやコーヒースタンド、またガーデナーによるセレクトショップや乗馬クラブも併設されています。森の香りを胸いっぱい吸い込みながら、土地の植物をじっくり味わいたくなるガーデンです。 

北海道の大人の庭 「ノーザンホースパーク」

(撮影・時津剛)

馬を中心としたさまざまなアトラクションを擁する、馬と自然のテーマパーク。今年で開園30周年を迎えました。乗馬や観光馬車、馬そりなどが体験できるほか、サイクリング、テニス、クロスカントリー、スノーラフティングなどアウトドアアクティビティも楽しめ、馬だけでなくいろんな角度から楽しめる施設。

目を引くのは、やはり敷地内のボタニカルガーデン。1000品種の草花が楽しめます。2003年の着工の際、ガーデンディレクターの梅木あゆみさんに伝えられたオーナーからのコンセプトは「大人の庭」。植物や地形のもつ複雑な個性も生かしつつ、互いにいい影響を与えて成長するガーデンを目指しています。バラ園に咲く、様々な種類のバラも見事ですが、あえて直線ではなく、ランダムに植えられたパンジーの鮮やかさにも目が留まります梅木さんが大事にしているのは、組み合わせ。

「花って隣に来る花で良くも見え、悪くも見えるんです。ですから組み合わせは大事にしていますね」

中央を流れる川を挟んでバラ園があり、カシワやナラや白樺の林があり、それらを俯瞰して見える景色は、まさに大人が楽しめる庭という印象。実は10年前に大きな台風がこの地を襲ったときに、木がバタバタと倒れたのだとか。そのあとに広葉樹を植えて、それが今、ようやく馴染んできて、いい状態の林を造りつつあるのです。

季節を通してさまざまな花が絶えず咲き、いつ来ても新しい景色を見ることができるガーデン。ぜひ訪れてみたいものです。

【各庭園URL】

 

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