美術館で「ミシュラン一つ星」店プロデュースのフレンチをリーズナブルに

車で1時間かけてでも行きたい店

そういえば、長いことフレンチを食べていない。最近ではもっぱら名古屋めしやB級グルメばかり。そのため「名古屋めしライター」と呼ばれることもしばしば。誰が何と言おうと、私はフードライターなのである。ってことで、久しぶりにフレンチを食べに行った。

豊田市美術館。東名高速道路豊田ICから約15分。無料駐車場も完備している

自宅から車を走らせること約1時間。到着したのは、豊田市美術館(愛知県豊田市)。えっ? 食事前に美術作品を鑑賞するのかって? いやいや、目的のレストランは美術館の中にあるのだ。本来は美術館での観覧(別途観覧料要)とセットで楽しむのがオススメだろうが、今回はレストランの利用のみにした。

レストラン入り口へと続く階段

レストランは、館内からも館外からも入ることができる。館外からの場合、案内に従って階段を上っていく。美術館だけにとてもお洒落な空間。否が応にも気分が盛り上がる。

『味遊是』外観。営業時間は10:00~17:30(17:00L.O.)

すると、レストランの入り口に辿り着く。ここが2019年6月、豊田市美術館のリニューアルに伴ってオープンした『味遊是(ル・ミュゼ)』だ。私が車で1時間もかけてここまで来たのはワケがある。実はここ、名古屋市東区葵にあるミシュランの一つ星店『壺中天』の姉妹店なのだ。

『壺中天』も新栄のヤマザキマザック美術館が入っているマザックアートプラザの地下2階にある。和洋中のジャンルに限らず、美味しいものは五感で楽しむ芸術であると私は思っている。『壺中天』も『味遊是』も美術館に出店するのは、そんなこだわりがあるのかもしれない。

グラスワインやビールも用意している

垣間見える“壺中天イズム”

店の入り口にはメニューが置いてあった。11時~14時半までは、2800円と1800円のコースとカレー、ホットサンドが楽しめる。14時半以降はカフェタイムとなり、ドリンクとハッシュドビーフなどの軽食を用意。また、10時~11時まではドリンクのみの提供となる。

席へ案内されて店内を見渡すと、ほぼ満席。そりゃミシュラン一つ星店プロデュースの味がリーズナブルに味わえるのだ。とくに女性グループの姿が目立った。皆、情報に敏感なんだなぁ。で、注文したのは、1800円のコース。メインは肉か魚のいずれかを選ぶことができ、私は魚料理をセレクト。

アミューズの2品。コースの最初から衝撃を受けた

目の前に運ばれたのは、アミューズの「人参のスープ」と「白身魚とジャガイモのブランタード」。まずはスープをひと口。おおっ、スープを覆っているエスプーマ(泡)からタイムの香りが。そして、スープは人参本来の素朴な甘みがふわっと広がる。最初は上品にスプーンでひと口ずつ飲んでいたが、タイムの香りと人参の旨みのダブルパンチで食欲に火がついてしまい、器に口をつけて飲んでしまった(笑)。

一方、白身魚とジャガイモのブランダードは、ブラックペッパーとピンクペッパーのバランスが秀逸。ペースト状にした白身とジャガイモのなめらかな舌触りとカリカリに焼いたバゲットの食感のミスマッチさがまたイイ。これなら20個くらいは食べられる。いや、食べたい(笑)。

魚料理「天然鯛のヴァプール」。マッシュルームのソースと蒸した鯛のマッチングが最高!

アミューズを食べ終えた時点で空腹はピークに。食いしん坊にとって、次の料理が出てくるまでの時間は苦行そのもの。しかし、絶妙なタイミングでメイン料理の「天然鯛のヴァプール」が運ばれた。

ヴァプールとは、フランス語で「蒸気」という意味で、フランス料理における蒸し料理の総称だ。ヘルシーなので五十路の私にはありがたいメニューだ。

ふっくらと仕上がった鯛に合わせるのは、マッシュルームがベースのクリームソース。重たいかも……と思いきや、実にさっぱりとした口当たり。にもかかわらず、マッシュルームの味と香りのほか奥行きのある複雑な味が鯛の淡泊な味わいを引き立てる。そこに作り手の“壺中天イズム”を垣間見た気がした。バゲットでソースを一滴残らず拭ったのは言うまでもない。

デザートとコーヒー。最後まで存分に楽しむことができた。

コースの締めくくりは、デザートの「アーモンドのブランマンジェ アプリコットソース」とコーヒー。クリーミーな舌触りとともにアーモンドの香りが鼻から抜ける。そして、素朴な甘みとアプリコットの酸味が一つになって広がる。何だか、胸のあたりというか……心が豊かになった。きっと、これを幸せというのだろう。

「ミュゼ」とはフランス語で美術館という意味

しかし、よくもまぁ、限られた予算の中でここまで完成度の高い料理を作ったものである。料理を出すタイミングや所作も非常にレベルが高かった。全国区人気の有名店が地方に出店する場合、それは名ばかりで、実際に店を運営しているのは業務提携した会社だったりする。しかし、ここは紛れもなく星付きレストラン『壺中天』の姉妹店であることを実感した。ご馳走様でした!

 

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