幻の『SASUKE』! 人生は他人の「キャラ設定」で決まる(談慶の筋トレ道)

(撮影・斎藤大輔)

筋トレを開始して12年以上が経過しました。

現在、落語家の数は東西合わせて1000人を超えるとのことです。この20年で相当増えました。不景気が続き、サラリーマンをやっていても安定どころか給与カットが当たり前となり、副業を前提とする雇用体系になりつつあります。30年ほど前のワコール勤務時代、土日は福岡吉本でタレント活動をさせていただいていましたが、無論まだ研修生扱いでギャラはもらえなかったとはいえ、直属の上司には「副業を認めてほしい」と訴えて、思い切り却下された思い出とは隔世の感があります。

公務員はともかくも一生安泰という仕事にありつけないのだったら好きなことを仕事にしようという心理の現れでしょうか、昔に比べて落語家になる敷居は明らかに低くなっているような雰囲気につれて、落語家の数も増えているのかもしれません。

同業者が増えるということは競争相手も必然的に増えることを意味します。なんとか私の肩書である「慶應卒初の真打ち」というブルーオーシャンは辛うじて確保はしていますが、実際東大卒の落語家も、春風亭昇吉さんのほかにも談四楼師匠門下の半四楼くんという40過ぎの前座さんも入門し、「大卒キャラ」はかぶりつつあります。そうなんです、キャラは似てしまったら一緒くたに処理されてしまうものなのです。

そしてキャラというものはとにもかくにも、「自称は痛い」のであります。SNSでも、「自費出版レベルなのに作家を名乗る人」がいたり、「路上で数曲歌う程度なのに歌手を肩書きにしている人」などがいます。キャラとか肩書きは、他人に呼ばれて初めて認知されるものなのです。詐欺事件の犯人なんかは大概「自称コンサルタント」と相場は決まっていますもんねえ。職業の名称の上に「自称」が付くと一気にインチキ臭くなってしまうものなのでしょう。

つまりキャラとは他人から認知されるべきもので、信じられないほどの信頼関係が積み重なった結果発生する最終現象とよぶべきものでしょうか。

信頼は「失敗をしでかすリスク」と隣り合わせ

以前「俺は江戸っ子だから毒舌キャラなんだよ」と自分で言い放って他人の悪口しか言わない人にお会いしたことがありますが、いやはや見ていて辛くなったものです。有吉弘行さんやマツコ・デラックスさんは、「毒舌キャラ」で通るまでには地獄の道のりがあったはずです。自分でそう呼んだ形跡などありません。

談志自身も毒舌キャラで世間様には認知されていましたが、そこにたどり着くまでには世間からのバッシングも含めた甚大なる投資があったはずです。沖縄開発庁の政務次官を36日間でやめたりとか師匠である先代柳家小さん師匠からの破門などがその一例です。

逆にそんな有吉さんからあだ名を付けられるのを喜んでいるのは、キャラのしっかりした著名人からキャラ認知してもらえたことにほかならないからです。

新入社員が失敗をしでかして、「私はおとぼけキャラですから」などと自称すればそのコミュニティでは生きてはゆけないはずです。やはりゆるぎない信頼を得るにはその同じ場所で何度も失敗をしでかすというリスクを負わない限り無理なはずなのです。

自分の居場所は希少性と付加価値で決まっていく

私も、筋トレを開始してから12年以上が経過し、身体つきも含めてやっと「筋トレマニア」だと世間様に認知してもらえるようになりました。数年前はアウトデラックスに出演し、「本業よりも筋トレを優先する落語家」としてマツコさんにいじられました。そして「継続は力なり」でしょうか、さらに週3,4回のトレーニングを積み上げて来た結果、あのTBSの『SASUKE』への出場依頼が、この度舞い込んできました。

20年以上続く大みそか恒例の特別番組です。

が、喜びは束の間、結論からお話ししますと、収録日当日が荒天のため非常にレアなケースでの順延となってしまい、翌日が以前から決まっていた仕事のため、出られないという実に落語家らしいオチがそこに待っていました(笑)。

出場していたとすれば、54歳で最高齢だったはずですし、落語家だとしたら余計に珍しがられたはずでもありました。無論タレント枠ではありましたが、「50過ぎでベンチプレス100キロ以上挙げる落語家」というキャラがテレビ関係者の目に留まり出場者100人の枠に入れてもらえた「筋肉芸人」としての存在感はやはり嬉しいものでした。どちらかというと敏捷性を競うのが『SASUKE』ですから、出場したとしても出オチに近いことはほぼ確実でしたが、地道に日々トレーニングを続けていれば見てくれている人はいるのだなあと捲土重来を誓いながら緑山スタジオを後にしました。

落語家は1000人いますが、自分の場合そこに「慶應卒」、「元サラリーマン」などの要素を掛け合わせることによって、希少性と付加価値が高まり、そんなバックボーンからサラリーマン向けの本を書いてくれと出版依頼が相次いでいます。さらにそこに「筋トレ」という新たなアイテムが加えられようとしています。そうやってゆくと自分の居場所がおのずと決まってくるような感じになります。

何が言いたいのかというと、「筋トレはキャラ化されやすい」ということです。正しいフォームと正しい回数と正しい栄養と正しい休暇を加えれば誰もが筋肉が付き、そしてその結果として見た目からキャラがとてもわかりやすくなります。時間は確かにかかりますが、取り組んで行って損はないどころか、身も心も健康になる最高の暇つぶし、それが筋トレなのです。

10年後、あなたがどんなキャラで認知されるか。人生100年と言われ始めた世の中だからこそ、やってみませんか、筋トレ。この私が変わったように、あなたも変わるはずです。

 

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