『SW』シリーズ生みの親ルーカス監督は「ジョブズ的」な人だった(スター・ウォーズひとり旅)

ロサンゼルスにあるThe Petersen Automotive Museumに期間限定で展示されている『スター・ウォーズ』に登場するランド・スピーダー(撮影:喜久知重比呂)

「すべてが終わる」。40年以上にわたり我々を熱狂させてくれた『スター・ウォーズ』シリーズがついに完結する。12月20日に公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。映画の街ロサンゼルスでもそこかしこにポスターや映像、オモチャ、グッズがあふれていた。

カリフォルニア・ディズニーランド スター・ウォーズ:ギャラクシー・オブ・エッジ(撮影:喜久知重比呂)

私は市内から車で40分ほどのアナハイムにあるディズニーランドでアトラクション「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」を楽しんできた。実物大の高速宇宙船「ミレニアム・ファルコン号」が迎えてくれ、『スター・ウォーズ』の世界にどっぷり浸かれるアトラクション。

カリフォルニア・ディズニーランド スター・ウォーズ:ギャラクシー・オブ・エッジ(撮影:喜久知重比呂)

映画でルーク・スカイウォーカーが飲んでいた青いミルクを飲めたり、チューバッカなどキャラクターに会えたりするファンにとっては夢の世界。ミレニアム・ファルコン号に乗るアトラクションでは、パイロットとガンナーに分かれ4人1組で搭乗し、宇宙の戦いを体感できる。新作公開を前に多くのファンで盛り上がっていた。

この日は夜行われるクリント・イーストウッド監督の新作のプレミアの準備中だったチャイニーズ・シアター

ハリウッドの観光名所としても有名なグローマンズ・チャイニーズ・シアター。ここは『スター・ウォーズ』の聖地とも言える場所。1作目のヒットを記念して映画に登場するロボットC-3PO、R2-D2、ダース・ベイダーの手形足形がある。この劇場には、ファンの間では有名なエピソードがある。

1977年、公開ギリギリまで編集に追われクタクタだったジョージ・ルーカス監督は、妻とハンバーガーを食べながら、通りを挟んだ劇場の行列を見て「いいなあ、あんなにヒットして」と話していたら、それが自身の映画『スター・ウォーズ』の記念すべき第一作の入場を待つ大行列だったという。

この話、ルーカス監督が公開を知らないわけないじゃないか、嘘だろうと思って調べてみたら、ウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬』の制作が遅れ、『スター・ウォーズ』の公開が早められたためで、しかもルーカス監督にこのことが知らされていなかったからだそう。予算の問題や制作中もスタッフと衝突するなど苦労の連続だったルーカス監督。映画も大失敗に終わったと思っていたのだ。しかし、この日から彼の人生は大きく変わっていったのだ。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

天才ジョージ・ルーカスによって1977年に誕生してから40年以上。公開待ち遠しい『スター・ウォーズ』の新作。シリーズの大ファンで友人のフランス人フローラン・ダバディ氏と一緒に「スター・ウォーズ アイデンティティーズ:ザ・エキシビション」の会場(東京・天王洲)で子供時代の話からルーカス監督の話まで盛り上がった。

『スター・ウォーズ』は「何世代もインスパイアされた物語」

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ーーあらためて、展示物を見てどう?

ダバディ:すごく細かいところまで作ってあったんだと感心するね。40年以上、ルーカス監督と『スター・ウォーズ』の世界を作ってきたスタッフ、アーティストが何世代もインスパイアされてきた物語だということをあらためて実感するね。性別に関係なく全世代が楽しむことができる世界だよね。

ーーダバディはスポーツの解説で活躍しているけれど、日本に来て最初の仕事は映画雑誌の編集だよね。

ダバディ:そう、『PREMIERE(プレミア)』というアメリカの映画雑誌の日本版の編集をやってたの。『エピソード1』(1999年)とかの頃かな。

フローラン・ダバディ フランス・パリ出身。母語のフランス語、日本語、英語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語と7か国語を操る。(『スター・ウォーズ』の通訳ロボットC-3POのようだ)。サッカー日本代表の監督だったフィリップ・トルシエ氏のアシスタントで注目される。現在はテニス、サッカー、ラグビーなどスポーツの解説者として活躍。1998年から2004年までアメリカの映画雑誌『PREMIERE』(フランスで創刊)の編集に携わる。

ーーオモチャとかのマーチャンダイズ(版権ものの商品化)で稼ぐっていうのは、『スター・ウォーズ』が最初だよね。

ダバディ:そのへんがルーカスの先見の明があるというか、洞察力とかがすごい人だよね。

記念すべき第1作目『エピソード4』を観た日の少年時代の筆者

ーー初めてというと、日本では公開がアメリカに遅れて1年後だったんです。新聞に何度も観た人の話が載っていて、多い人は100回以上観たとかという記事が載っていて、僕も初日に連れて行ってもらって、その日のうちに2回観た。

ダバディ:何回も観るっていう、リピーターもこの映画が最初だよね。フランスではなぜか2作目の『帝国の逆襲』(1980年)が人気だった。

ヨーダ、オビ・ワン、ボバ・フェット……一匹狼で孤独なキャラクターたち

ーーダバディが好きなキャラクターは?

ダバディ:まずはヨーダかな。日本語を勉強するきっかけになった禅。その禅マスター的なキャラクターだし、彼の教えや哲学が好き。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ーー孤独な人生を送るキャラクターが多いよね?

ダバディ:確かにね。ヨーダもオビ・ワン・ケノービも仙人みたいになって、ひとりぼっちで隠れてた。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ーー(『スター・ウォーズ』は)黒澤明監督の影響が大きいから。

ダバディ:サムライで浪人だよね。そして、(『スター・ウォーズ』の)映画全体はダイバー・シティ(多様性)だよね。

ーーSF映画は、人間vs宇宙人の構図が定番だったけど、『スター・ウォーズ』は宇宙人も人間も味方で一緒になって戦う。

ダバディ:キャスティングもうまかった。

ーー大きな猿人や小さな砂漠のガラクタ集めとかね。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ダバディ:そのへんもね(笑)イギリスの俳優とアメリカの俳優を上手く使い分けている。オビ・ワン役のアレック・ギネスとか皇帝役のイアン・マクダーミドとかはイギリスの俳優で、やんちゃなハン・ソロ、ランド・カルリジアンはアメリカの俳優。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ーーハン・ソロはカウボーイだもんね。

ダバディ:配置が上手い。ルーカス監督は世界観を作るのがとにかく上手かった。それも成功した理由かな。

筆者と俳優イアン・マクダーミド

ーーイアン・マクダーミドに会ったことがあるんだけど、あの低い声で普段から重厚なの(笑)。スコットランド出身の紳士ですごく優しい人だったけど。この人はシリーズにたくさん出ている役者の一人。『エピソード1』から『3』、『6』、そして、新作の『スカイウォーカーの夜明け』でシスの暗黒卿ダース・シディアス、パルパティーンが復活するしね。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ダバディ:僕が一番好きだったのは、ボバ・フェット。『帝国の逆襲』に出てきた一匹狼で、謎の多いバウンティ・ハンター。このキャラも一匹狼で孤独だね。カリスマだったよね。バックグラウンドがないわけないと思ってたら、やっぱりあったよね。父親が出てきて、ストーム・トルーパーはそのクローンだったとかね。

「スター・ウォーズ アイデンティティー」より

ーーオモチャも売れたもんね。

ダバディ:そう、売り切れて買えなかった。

私とダバディが見たジョージ・ルーカス監督の素

ーー『スター・ウォーズ』はとにかくジョージ・ルーカスという天才の頭の中で作られたものだから、『特別編』の時にプロデューサーのリック・マッカラムがイベントでファンに「もしも、ルーカス監督の身に何かあったら『スター・ウォーズ』はどうなるんですか?」と質問されて、「ルーカスに万が一のことがあったら『スター・ウォーズ』は終わりです」って答えてた。

それだけ、ルーカス自身がすべてを考えてきたってことなんだってことだよね。今じゃディズニーのものになったけど。ダバディがルーカス監督に会ったのはいつ?

ダバディ:イベントの時が最初かな。『エピソード1』のイベントの時に501部隊っていう団体に入っていて、ストーム・トルーパーの格好をして参加したんだけど、イベントのスタッフに背が高いからダース・べイダーをやってて言われて、ダース・べイダーのコスチュームを着てルーカス監督の後ろに立ったんだよ。

ーーあの時、僕が見たダース・べイダーはダバディだったんだ(笑)

ダバディ:映画のプレミアに呼ばれた時は、ストーム・トルーパーの格好で行ったんだけど、新聞とかに叶姉妹と一緒に撮られた写真ばかり載ってた(笑)

筆者とジョージ・ルーカス

ーー僕はジョージ・ルーカスに3回会ったことがあるんだけど、的確に無駄なくしゃべる感じだった。ネルシャツにジーンズとかでラフな感じ。会った時は一応ジャケット着てたけど。

ダバディ:変わった人だよね。スティーブ・ジョブズ的なね。

ーーILMという会社を作って、『スター・ウォーズ』の新作のCGを作るためのソフト開発とかからやってるのがすごい。テレビドラマで人気だった『HEROES(ヒーローズ)』のマシ・オカは、そのプログラムを考えていたスタッフだったんだよね。

ルーカス監督が企業とのコラボのPRで来日してて、わりと自由に話せる機会があって、その時に「新作の発表と同時に、撮影の舞台裏や技術を明かしているけど、真似されるのが心配じゃないですか」って聞いたら、「また次の新しい技術を産み出すから平気だよ」って言われて、カッコイイなって思った。たしかにジョブズっぽいところがある。

筆者がジョージ・ルーカスから頂いたサイン入りのカード

映画にも孤独なキャラクターが登場するけど、1作目の時はスタッフが言うこと聞いてくれなかったり、ルーカス監督自身も孤軍奮闘したんだよね。孤独なルーク・スカイウォーカーは、ルーカス自身を投影していると言われているし。ダース・べイダーが誕生するまでのエピソードを後から作ったのは、将来映画の技術が発達してから、大きな戦争が起きる前の華やかだった時代を描こうとしたからだって言ってた。

ダバディ:将来を見据えた、先見の明がある人だよね。

――新作も楽しみ。みんないろいろ文句を言ったりするけど、結局楽しんじゃうよね。

ダバディ:ルーカスのDNAが生きている『スター・ウォーズ』の世界を今回も存分に楽しみたいね。May the Force be with you!

映画『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』は12月20日公開。「スター・ウォーズ アイデンティティー」は2020年1月13日まで開催されている。

上映直前の筆者(右)とダバディ氏

 

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