インフラを整えるように、生理を考えたい 起業家・ハヤカワ五味さん

起業家のハヤカワ五味さん(撮影・萩原美寛)

特集「ひとりひとりが考える未来」では、たばこ、タトゥー、自動運転など意見が分かれるテーマについて多様な考え方を伝え、ひとりひとりの読者と共に、日本の未来を考えます。

ワンピースブランド「ゴミ ハヤカワ」、”シンデレラバスト(小さい胸)”向けのランジェリーブランド「FEAST(フィースト)」など、学生時代から次々とブランドを立ち上げてきた起業家のハヤカワ五味さん。2019年5月、新たに女性の生理をテーマとした「illuminate(イルミネート)」プロジェクトをスタートしました。

生理用品やジェンダーに関する書籍を集めた期間限定のセレクトショップや、生理用品大手ユニ・チャームとのコラボレーション、ECサイトの開設と次々と施策を打ち出しています。「生理を特別視しない世の中にしたい」と語るハヤカワさんに、事業の展望を聞きました。

生理のインフラ整える議論を

ーー今、生理を取り巻くどんなことが課題だと考えていますか?

ハヤカワ五味さん(以下ハヤカワ):2019年後半からいい流れができつつありますが、生理が整備されるべきインフラとしてではなく、特別視されてしまうことに課題を感じています。

例えば、海外の大企業ではお手洗いに生理用品が設置されるようになってきています。でも、同じことを日本で提案すると「福利厚生になってしまわないか」となかなか受け入れてもらえません。そのロジックが通るのであれば、トイレットペーパーも福利厚生ということになるはず。しかし、トイレットペーパーは福利厚生でなく、必要不可欠なものとして設置されていますよね。

おしっこやうんちの排泄は、トイレ用擬音装置をつけたり当たり前に配慮すべきことと考えられているのに、生理になると特別視されてしまう。本来、インフラとして整備されてしかるべきことが、生理は個人で内々に解決すべきものと捉えられているから、福利厚生という発想になるのだと思います。

オピニオンリーダーとしてTVなどでも活躍しているハヤカワ五味さん(撮影・萩原美寛)

働く女性が少なかった時代は、家庭内で何とかなっていたのかもしれません。でも、これだけ女性が働くようになっているのに、月に一度ある生理について世の中の整備が進まないことに違和感があります。生理のある人が社会に出て働くためにどういった仕組みがないといけないのか、プライベートなことを語るのではなく、パブリックな議論が必要だと思っています。

ーー代表を務める「イルミネート」プロジェクトでは、期間限定の生理用品のセレクトショップを企画したり、オリジナル商品の開発にも取り組んでいますね。

ハヤカワ:ナプキンやタンポンといった生理用品はドラッグストアでの購入率が65%と言われています。しかし、都市部ではひとり暮らしが増え、そもそもスーパーで買い物しない女性も増えています。そこで「イルミネート」では、生理を特別視せず、どういったパッケージで、どういった使用体験のできる生理用品が最適なのかということを見直しています。

生理用品は店頭の棚で売ることが念頭にあるため、これまではパッケージに商品情報を記載していました。しかし、今はインターネットで買い物ができる時代です。パッケージにわざわざ情報を詰め込む必要はなく、サイトの商品欄で詳細がわかります。パッケージは生理用品だということさえわかればいいのです。シンプルなパッケージならECでの購入だけでなく、職場の近くで買うときにも気後れせず済むでしょう。

こうした観点からオリジナル商品の開発を進めていますが、ナプキンなど大量生産の必要な生理用品の開発はコストと生産ラインの面からハードルが高く、メーカーとコラボレーションしながら進めています。

ブログ記事「私は生理用品が作れなかった。」で、生理事業の試行錯誤を自ら記している(撮影・萩原美寛)

社会課題のひとつとして解決していきたい

ーー「イルミネート」ECサイトの商品ラインナップについても教えてもらえますか?

ハヤカワ:オリジナル商品はもちろん、吸水性パンツ、布ナプキン、月経カップやオーガニックナプキンなど約100品目を取り扱っています。画一的なラインナップになりがちな生理用品のバリエーションを増やす試みとして、汎用品を除く国内の生理用品のほぼ全てを網羅しているのが特徴です。ラインナップのなかでも、来年さらに広めていきたいのは月経カップです。月経カップは漏れの心配がなく交換の回数も少なくて済むので、個人的におすすめしています。

「イルミネート」のECサイトで取り扱っている生理用品(撮影・萩原美寛)

――立ち上げから半年、プロジェクトへの反響や売上の状況はいかがですか?

ハヤカワ:セレクトショップを出店した際は、客単価が1万円ほどになることもあります。生理用品の年間平均消費額は3600円なので、生理用品史上、異次元の売れ方とみていいでしょう。しかし、日常的にお金を払ってもらうという面では非常に渋い。ECサイトについては運営して1カ月で、このままでは継続が難しいと判断していて、方向転換しているところです。そもそも生理用品をECで買う癖がないので、ECで買う習慣のあるものと一緒に生理用品をプラスして買ってもらえるようにしようと準備を進めています。

――この事業をビジネスとして成立させることにこだわりがあるんですね。

ハヤカワ:生理用品など女性向け事業を展開する事業体は、大手を除けばNPO的なものがほとんどです。個人の頑張りで数年は続けられるかもしれませんが、それでは、より長期的な継続は期待できません。売上の軸をつくり「イルミネート」をビジネスとして成立させることは重要です。私の強みはビジネスをハックして構造的に社会課題を解決することだし、この事業でもそれを目指しています。

生理に対するネガティブなイメージをひとりひとりの行動で変えるきっかけ作りたいという(撮影・萩原美寛)

イルミネートのイグジット突破口に

――どれぐらいのスパンで生理事業に取り組もうと考えていますか?

ハヤカワ:女性の体や生理のことを当たり前に話せるような時代が来るのを待っているようなところもあり、時間がかかると思います。ただ、「イルミネート」は2、3年以内にイグジットしたい。私たちが成功事例になることで、同じような課題に取り組む起業家が資金調達しやすくなるからです。女性の問題は根深いので、1社で突破するのは難しいですが、10社ぐらいでガツンとやれば一気に変えられる可能性が出てきます。

――海外では女性のヘルスケアやライフスタイルをサポートするスタートアップが続々と登場して注目が集まっていますが、日本ではそこまでの動きになっていません。

ハヤカワ:先日、サンフランシスコに行って改めて思ったのですが、「ジェンダー平等」の意識が明らかに違います。例えば、プレゼンの審査員は絶対に男女半々でないといけないとか、女性起業家にも投資しないといけないとか、日本人の感覚からすると「やりすぎなのでは?」と思うぐらいに徹底されています。

海外でも男性の起業家や投資家の方が多いということには変わりないのですが、「平等でなくてはならない」と駆り立てられていて、男性だけということが問題視される風潮があります。その空気のなかで、イグジットする女性起業家や女性投資家が出てきていて、女性向け事業にも注目が集まるようになってきています。

日本にはそうした背景はありませんが、お金がないと事業も伸びませんから、女性のヘルスケアやライフスタイルに関する事業が評価される土壌を作れるようにしたい、という思いは個人的にあります。

「イルミネート」で実績をつくりマーケットを活性化させたいという(撮影・萩原美寛)

――最後に、常に全力投球のハヤカワさんが「ひとりの時間」をどう過ごしているか、教えてもらえますか?

ハヤカワ:自然が好きで、よく新宿御苑を散歩します。意思決定が経営者としての私の仕事ですが、プライベートではスケジュールを組んだりするのがとても苦手で……(笑)。旅行も行く場所だけ決めて、あとは現地でやることを決める、とか。決めることをしないようにしてますね。エンタメを楽しむのも体力がいるので、休日は「何もしない」ということをあえてしているかもしれません(笑)。

(撮影・萩原美寛)

 

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