初めて歌舞伎町に行ったときのほろ苦い思い出~石川浩司の「初めての体験」

はじめての新宿・歌舞伎町(イラスト・古本有美)

新宿・歌舞伎町。飲み屋や風俗店が軒を連ね、さまざまな欲望が交差する日本最大級の歓楽街だ。今回のコラムでは、この歌舞伎町に僕が初めて行ったときの話をしたいと思う。手痛いながらも甘酸っぱい経験であった。

エッチなことに興味があった学生時代

僕はエッチなことに人一倍興味があった。中学生の時は国語の辞書のエッチな言葉すべてにラインマーカーを引いて、エッチな知識を得ていた。その辞書は「石川のスケベ辞典」として、いつしかクラス中のみんながむさぼり読むようになった。

それだけでは飽き足らず、僕は担任の先生を主人公にしたエロ小説を書くようになった。ざっくり説明すると、担任の先生が生徒達にハレンチな行為をするというものだ。そのエロ小説はものすごく評判を呼び、自分のクラスだけではなく、他のクラスの連中にも回し読みされるようになった。

ところが、誰かが不用意に教室のロッカーの上にそのエロ小説を放置していたものだから、先生に見つかってしまった。この問題は先生たちの頭を悩ませ、僕の処遇については職員会議の議題となった。

喧嘩だの万引きだのの一般的な問題であれば、どのように対応すべきかが練られていたようだが、「エロ小説を書く生徒」への対応はなかったらしい。その後、僕は担任の先生に呼ばれてお説教をくらったが、担任の先生が主人公のエロ小説だったため、「石川・・・お前は・・・こういうの・・・良くないぞ・・・」と、しどろもどろ。僕への指導に苦慮しているのが分かった。

淡い期待を胸にいざ歌舞伎町へ

このようにエッチなことに強い関心があったのだが、実際は男版の耳年増。知識はあるものの実際の行為にはまったくの奥手で、さくらんぼ少年だった。そんな僕に転機が訪れたのは、新宿・歌舞伎町に初めて行ったときのことだ。

1980年初頭、僕がまだ20歳そこそこだった頃、ちまたを騒がせていた風俗があった。それは、ウエイトレスが下着を身につけないで接客をする「ノーパン喫茶」だ。

僕は直接女性に触れるような風俗は怖くて行けなかったが、これには興味を持った。と言ってもやはり度胸なしの大学生。とてもひとりで行く勇気はなく、やはり興味津々だった悪友を誘ってふたりで行くことにした。「ニヒヒ...」という表情が消えないまま、歌舞伎町に足を向けた。

あっという間に時間制限

この街には何件ものノーパン喫茶が軒を連ねていた。それまで歌舞伎町に行ったことがなかった僕らは一瞬たじろいたが、散々迷ったあげく、比較的入りやすそうな店に入った。店頭には、「オールドリンク1500円」と大書してある店だった。

席に着くとコーラやウーロン茶の他にビールもあった。「オールドリンク1500円ならビールの方が得だよな~」と思って、ウエイターに「ビールふたつで」と言いそうになったが、一応確認した。

「あ、ビールも1500円ですよね?」

すると黒服のウエイターは黙ってメニュー表を指差した。するとそこには虫眼鏡じゃないと見えないような小さな小さな文字で「ビール5000円」と書いてあった。

アッブネー!、と慌てふためきコーラを頼んだ。しばらくすると、お目当てのノーパンウエイトレスが無表情でコーラをふたつ運んで来るも、なんと飲み物を置くとさっさと壁際の方にお盆を持って行ってしまった。

これではノーパンかどうかも全くわからないではないか…。それからふたりで、キリンの水飲みのように首を変な角度にかしげながらウエイトレスの方をチラチラ見ていると、ものの10分ぐらいだろうか、先ほどの黒服のウエイターがやって来て静かに言った。

「お客様、お時間です」

なんと、どこにも書いてないのに時間制限があったのだ。僕らはあっという間に、何も見ずに追い返されたのだ。うーむ。

お通し3000円の居酒屋

そんな肩透かしをくらった僕らは、「験直しに居酒屋で一杯引っ掛けようぜ」と、そのまま街をうろうろした。見るからに怪しげな店は避け、何の変哲もない一軒の居酒屋を見つけた。

外から店内の壁に貼ってあるメニューを見ると、200~300円台のメニューが多い。ここなら安心と思って、入ることにした。

飲み物を注文してしばらく経つと、なぜか立派な舟盛りがテーブルの上にドーーーンと置かれた。

「えっ? あの、これ、頼んでないんですけど」

そう言うと、ドスの効いた声でこう返された。

「・・・お通しです。みなさんに召し上がってもらっています」

僕たちはブルブル震えながら舟盛りを食べた。味はろくにわからなかった。結局、単品のメニューは安かったが、このお通しがひとり3000円。歌舞伎町の恐ろしさを知った瞬間である。

もっともこれは30~40年も前の話。今はそういうお店も少なくなっているとは思うのだが、みなさんも一応注意はした方がいいかもしれない。尚、客引きには絶対についていかないようにねっ!

 

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