乳がんの手術は2カ月延期です(未婚のひとりと一匹と:15)

うわ…わたしのセキュリティ低すぎ?

独身ひとり暮らしの身の上ながら、捨てられた老猫の面倒くらいなら見られるかもと始まったひとりと一匹暮らし。猫はなかなか懐かないけれど、獣医での検診をがんばったので人間の方もがんばらなきゃならない。薦められたので念のため受けたがん検診で乳がんが見つかった人間の方、コヤナギユウです!

がんとわかったのならば取るしかない。あらゆる検査も終わり、医療費を数万円で済ませられる「高額療養費制度」も申請済み! そして切除範囲も左乳房全摘出にロックオン。

あとは2週間後の入院にを待つだけ、と腹を決めているところです。

【連載】未婚のひとりと一匹と

全乳がん患者に配偶者がいるわけじゃないよね

わたしのパートナーは猫

乳がんと聞いたときはやっぱり驚きました。いまどきがんは珍しい病気ではなく、2人にひとりはかかると聞いていたけれど、それはもっとずっと先の話だと思っていからです。
それに、進行すれば死に至る病でもあるのだから、身体にがんを宿せば、調子が悪くなるはずだと思っていました。

ところが、わたしの乳がんは20代の頃から乳腺症として経過観察していたしこりで、細胞を取って調べるまでがんだなんてわかりませんでした。診断され、手術を2週間後に控えたいまだって、痛くもかゆくもありません。

父や叔父をがんで亡くしていましたが、わたしの乳がんは遺伝とは関係ないそう。また、2人とも手術を必要とするがんではなく、これから自分の身に何が起こるのか見当もつきません。

インターネットでブログの体験記を探してみましたが、悲観的なものが多く読んでいてしんどい気持ちになりました。ブログだと、吐き出すことで自分を癒やしている人が多いのかもしれません。それならばと、乳がん体験記エッセイ本を3冊ほど読んでみたのですが、こちらはこちらで配偶者がいる方ばかり。パートナーがいたらいたでうまく気持ちが伝わらないなどの心配があるのだなぁという発見はあったものの、ひとり暮らしの家事のこと、仕事のこと、いつまでできて、どんな感じで復活していくのかは知ることができませんでした。

そしてなにより、これから乳房を失うという独身女性の心の機微を想像できないことに、「まだこの世にない情報」を感じました。もしかしたら、わたしが出来ることがそこにあるかも?

いよいよ入院準備。それはまるで旅支度

この頃、顔を見てくるようになってきた

入院準備はお金さえ払えば全部病院でやってくれます。わたしは節約したいので、なるべく自分で用意しました。

バスタオルやパジャマ、タオルの用意。洗面用品に着替え、なんだか、旅行前の荷造りと同じです。当然といえば当然。

わたしが入院する病院ではスリッパやサンダルの使用が不可でした。理由は転倒がおこりやすいから。「いつも履いてるスニーカーをご持参ください」とのこと。手術を見込んで「T字帯」という謎のパンツが必要なのですが、売店で買うことができます。

パジャマは前開きの長袖長ズボン。Tシャツと楽なスウェットをパジャマ代わりにしていたのでこれは新調する必要がありそう。いろいろな通販サイトを眺めました。チェック、水玉、無地あたりの王道は、どこか病人風。悩んだ末、南国風のプリントがされた薄手のものにしました。

入院準備で一番大切なことは、わたしが不在の間の猫の世話です。これは、がんがわかったときから考えていました。ズバリ、実家の家族の召喚です。父はすでに他界していますが、母はわたしの扶養でいまも新潟にひとり暮らししています。年金暮らしの無職なので時間の融通は利くのですが、年齢が70を超えたせいか少し面倒臭がりになってきました。でも、娘の有事。きっと勇気を出して上京してくれると踏んでいました。それに、兄も時間に融通が利くため、2人で来てもらえれば断られる理由はないだろうと甘えてみました。

入院予定は4月18日。全摘出なので10日間入院と踏んで、そのままゴールデンウィークに突入して自宅療養です。わたしはフリーのデザイナーですが、週に3日は企業に出社して出稼ぎしているため、出勤日を調整します。収入を下げないため、平日フル出勤で入院期間を捻出することにしました。

もの、人、お金。なんとか入院の準備が済みました。

まさかの落とし穴

いつものように仕事のメールをチェックしていると、【ご確認】と冠に着いたメールが来ました。月に1、2度出入りしている編集部からです。何だろうと、中身を確認してみると、海外取材者が帰国後体調不良を訴えており、調べてみたところ「麻しん(はしか)」だったとのこと。

職場にはしか感染者が出た場合、感染力が強いため出入り業者も含めて抗体を持っていない人はワクチン接種が必要だと書いてあります。はしかの予防接種はほとんどの人が子供の頃にやっているかと思いますが、わたしも覚えていません。抗体があるかどうか調べることもできますが、それなりに費用がかかります。これは、母に直接聞いてみるのが早そうです。

<コヤナギ家メッセージグループ>

わたし「というわけではしかの予防接種してるかな?」
兄「多分、ユウの世代は3種混合受けてるけど、時間経過で交代免疫力は落ちてるかもね。」

母「3種混合の時に熱が出ていて受けてない。入院前なのに大丈夫なの?」

兄「勘違いしてた。3種混合ワクチンはジフテリア、百日せき、破傷風を予防するワクチンです」

母「麻しんも受けてないヨ」

わたし「まじか。わたしのセキュリティーゆるすぎない!?」

担当医に相談だ!

仕方ないことは切り替える

「いつも通り」のくるみの様子

電話して聞いてみたところ、はしかの予防接種をしていないのならばする必要があるそうです。しかし、それを行うと1カ月間全身麻酔ができなくなり、予定していた手術は延期。

手術に立ち会う「3人の医師」の都合もあり、手術日が2カ月後の6月に再設定されました。その間、なにもしないものなんなので、手術後から始める予定だったホルモン剤治療(投薬)を前倒しすることになりました。

覚悟した気持ちがほどけます。

手術はいやでいやで仕方ないけれど、覚悟を決めたはずの嫌な予定が伸びてしまうのはとても苦痛だということが分かりました。

気を抜くとため息が漏れます。だれかに弱音を聞いてもらいたい気分ですが、この弱音を口から出してしまってはさらに落ち込んでしまいそうです。ひとりで抱える不安をじっと見つめてみました。

決まったことも仕方ない。仕方ないことは、切り替えよう。

ひとまず、ゴールデンウィークの予定は白紙です。母には「ならし上京」として予定通りうちに来てもらうことにしました。

急にできた時間で、この乳がんの話の企画書をまとめてみよう。配偶者がいない人の体験記を読みたい人だっているはずです。わたしの強みは、「ひとり」なこと。

あとは、自前のおっぱいがあるうちに、セミヌードでも撮ってみようかな。

 

連載

TAGS

この記事をシェア