貯金の尽きかけた僕が見つけたおいしい仕事・中編~青春発墓場行き(第24回)

(イラスト・戸梶 文)

数カ月経ったある日、僕は、広告代理店から出向のKさんに呼び出された。会議室に入ると、Kさんは渋い顔をしている。これは怒られるなと瞬時に悟った僕は、神妙な顔つきで、何かありましたかとKさんに問うた。

Kさんは、ゆっくりと、僕が始業時間を過ぎたあとに机でサラダを食べていること、他の人達と雑談していること、ホテルや旅館の人との私語が多すぎることを、初めてここに来たときに会った女性社員の人から指摘されたと言われた。そして、君の契約更新はないとその場で告げられたのである。僕はショックだったと同時に、ここは編集部ではなかったのだ、オフィスだったのだと反省した。出版社の編集部のノリで行動していたが、R社は出版社ではない。ここに僕の落ち度があった。そして僕は期間が無事に来てクビになった。また職を探さなければならない。

試しに働くことになった農家で見た「資本主義打倒!」のスローガン

今度、僕がハマったのは、農業だった。農業で食っていければなんと素晴らしいことだろう。自然に囲まれてオーガニックな有機農法で育てた健康な野菜を毎日食べて、自給自足の暮らし……、夢は広がるばかりだ。試しに僕は、WWOOF(ウーフ)というものに登録してみた。WWOOFというのは、登録している農家で農作業をするかわりに寝食を無料で提供してもらえるシステムのこと。僕は、これに登録して、農家ってどんなもんだろうと、体験してみることにした。

ホームページを見て、適当に、直感で決める。僕のWWOOF先は、静岡県K市の農家だった。東京から電車を乗り継いでK駅まで向かう。駅に着くと初老の男性が待っていた。挨拶して、車に乗せてもらう。15分くらい走っただろうか。広大な家に着くと、中にずんずんと入っていく。黒板が目についた。何か書いてある。資本主義打倒! ん? 資本主義打倒、、、え? 何か嫌な予感がする。主人は、もうひとり、女性のウーファーがいることを告げ、今夜は、寝るだけなのでゆっくりしていってくださいと言うと、寝室に案内しどこかへ消えた。僕は、まあ、いい感じじゃないの? と気楽に考えて、明日の農作業に備えて早めに寝た。

 

連載

TAGS

この記事をシェア