「かわいそうなカワウソ」の行方を追い、ひとり大阪へ(かわうそ一人旅・4)

かわいそうだったカワウソの、現在の姿

カワウソの密輸で有罪判決

2020年3月18日、税関の許可を受けずにコツメカワウソ2匹をタイから密輸しようとして2019年11月に逮捕された大阪府堺市の50代男性が、罰金30万円の有罪判決となったことが関西地方でニュースになった。

私はカワウソが好きだ。カワウソのためなら割とどこへでも行く。よく動きよく食べてよく鳴き、水場を必要とする沼臭い香りのするカワウソは、ペットにできるものではないとわかっているからだ。しかし2010年代に入った頃からたびたびメディアで取り上げられるようになり、以来カワウソカフェやペットのカワウソを題材にしたYouTube配信など、愛玩化が進んでいる。

これまでカワウソはワシントン条約(CITES)の付属書Ⅱにより、商業目的の取引は輸出国の許可があれば可能ながらも、制限されている動物だった。ただちに絶滅はしない。でも個体数の減少が懸念されている。なのに最近では値がつくからと親から子を引き離して、売りに出されることもあるそうだ。

カワウソかわいそう!

と思っていたら2019年11月26日、ワシントン条約締約国会議において、コツメカワウソとビロードカワウソ(あとインドホシガメとアンナンガメとパンケーキガメ)は、商業目的の国際取引が禁止される付属書Ⅰに格上げされることになった。アジアでのペットブームが関係していると言われている。

くだんの50代男性は2019年9月、スーツケースに収納した紙箱に2匹のコツメカワウソを入れ、タイからこっそり国内に持ち込もうとしていた。しかし関西国際空港の税関職員が鳴き声に気づいたことで、お縄になった。

税関職員さん、グッジョブ!

でもこの時保護されたカワウソは一体、どうなったのだろう……? 気になって検索してみたら、大阪税関による「カワウソかわいそう」なるYouTubeが見つかった。

こ、これは有罪判決の50代男が持ち込んだカワウソではないか? 映像では税関長が自ら「コツメカワウソの密輸は税関として絶対に許さない」というメッセージを発信している。さらに「大阪税関は、コツメカワウソの味方です」とも言っている。なんと心強い人達! 毎回毎回海外旅行帰りに税関職員に対して「課税されるような買い物なんかしてないのに、めんどくせ」とか思って本当に申し訳ない。

ただこのYouTubeでは、肝心の「カワウソのその後」がわからない…。そこで大阪税関に連絡し、話を聞きたいと交渉。意外にも快諾していただき、大阪行きを決めた。

かわいそうなのは、カワウソだけじゃない

大阪税関は大阪港近くの天保山地区にあり、身分証明書が必要ながらもPRルームは一般公開されている(平日9時~17時まで)。そしてカワウソマニアの聖地のひとつ、海遊館のすぐ向かいにある。そう、海遊館に寄ることも旅の目的だったのだ。しかし大阪メトロ大阪港駅に着いた瞬間、「海遊館 臨時休館」の文字が視界に飛び込んできた。コ、コロナめーーー!

人の気配も車の気配もなく、スタッフが黙々と作業を続けていた海遊館。早くまた行きたい

ウイルスは誰のせいでもありゃしない。諦めて海遊館を眺めながら大阪税関に向かうと、広報室長の久保一雄さんが出迎えてくれた。

久保さんによると大阪税関が関税法違反で取り締まる物品は、大麻や覚せい剤などの不正薬物や偽ブランド品、金の密輸が大多数を占めている。とはいえワシントン条約に該当するものも、コンスタントに発見されている。ランやサボテンなどの植物や、同条約で規制されている成分が入った漢方薬などを知らずに購入するケースもあり、すべてを事件化しているわけではない。しかし生体の場合はそのほとんどを事件化していて、必要に応じて警察が身柄を拘束しているという。

久保一雄さん。後ろ右のコツメカワウソポスターが、ツッコミを入れているようなアングルに…

「生きた動物の密輸は転売目的と言うと罪が重くなるので、『自分で飼うつもりだった』 『他の規制されていない動物と思っていた』などと供述する傾向にあります。しかし押収した証拠と供述が矛盾するケースも多く、調査の結果、そのほとんどが懲役罰相当として検察官への告発につながっています。カワウソはタイなどで安価で売られていますが、国内では高値で取引されるので、利ザヤを稼ごうとする運び屋のターゲ ットにされることがありました。昨年のケースは、ワシントン条約改定前の駆け込み密輸と見られます」(久保さん)

2018年に大阪税関が発見した9件の動物はすべてカメだが、東京税関が2016年と2017年にそれぞれ、タイからコツメカワウソを持ち込もうとした人間を発見している。カメもランもサボテンもかわいそう…。しかしカワウソの場合は鳴き声を出してくれたから発見できたものの、カメ類やオオトカゲ、コイ(いずれも2018年に発見された生体)などはどう見つけてきたのだろう? 久保さんに聞くと、細かいことは秘密と言いつつも、ある程度は事前に情報をつかんでいたり、長年のカンで「これは」という人物を検査してきたと教えてくれた。

カワウソはかわいそう、大麻はタンマ?

PRルームでは税関のイメージキャラクター、カスタム君がお出迎え

税関と言えば何かとお堅い印象を持っていたが、久保さんはじめ非常にフレンドリーかつ動物好きな方ばかりで、ついカワウソ談義に熱が入ってしまう。それにしても「カワウソかわいそう」はどうなのか。聞けば大阪府警が2019年、社会問題化していたあおり運転の防止を啓蒙すべく、アオリイカのキャラクターを使ったYouTubeを公開し、大いにバズったのにインスパイアされたそうだ。

しかし「カワウソかわいそう」はまだまだバズりが足りないと、久保さんは目を伏せた。確かに大阪府警はこれまでも「チカンアカン」など、秀逸なコピーを生み出してきた実績がある。大阪税関は大麻の違法性を訴える「ちょっとタンマ! これぜんぶ大麻!」なるポスターも作成しているが、色々な意味でもっとアピールする必要がありそうだ。

「2019年に保護されたカワウソは、今どこにいますか?」

今日の本題を切り出すと久保さんは、現在はある動物園にいて、なんとこれから案内してくれると言う。つ、ついにかわいそうなカワウソとの対面が叶う瞬間がやってきた! 次回はそのご報告をしようと思う。

 

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