「かわいそうなカワウソ」は、関西で元気にかわいかった!(かわうそ一人旅・最終回)

食事をもっとよこせとねだるカワウソ。まさに野生の証明

かわいそうだったカワウソのいる、関西の某動物園へ

2020年3月18日、税関の許可を受けずにコツメカワウソ2匹をタイから密輸しようとして2019年11月に逮捕された大阪府堺市の50代男性に、罰金30万円の有罪判決が下された。この男性は2019年9月、スーツケースに2匹のコツメカワウソを入れてタイから持ち込もうとしたところを、関西国際空港で税関職員に発見された。その時保護されたカワウソは今、関西地方のある動物園にいるという。実は執筆段階では名前を出していたのだが、動物の安全のために名を伏せて欲しいと関係各位から連絡があったのだ。たくさんの人にカワウソの魅力を伝えたいから、ぜひ会いに行って欲しい! でもカワウソの安全が第一。なので忸怩たる思いもありつつもあとは読む人に委ねることにして、今回は名を伏せることにした。

高層ビルに囲まれた大阪港界隈とは違った雰囲気の、広い空間にその動物園はある。取材当日は新型コロナウィルス対策で休園していたものの、園長さんはじめ職員が出勤していたことから、カワウソとの対面許可を頂けた。しかも大阪税関広報室長の久保一雄さんと、職員でフクロウ好きの山中陽子さんも同行してくれることになった。またいつもの「ひとり旅だけどひとりじゃない」パターンだが、旅は道連れとばかりにかの地に向かった。

カワウソはまだ赤ちゃんで「よく生きていた」と思った

「こんな小っちゃくて目もまだ開いてなくて、よく生きていたと思いましたよ」

園長さんはそう言いながら、手の平を広げる仕草をした。

2019年9月下旬、日本に連れて来られた2匹のカワウソを保護してほしいと、経済産業省から連絡があった。税関で押収した動物たちは、経産省に管轄が移されるのだ。同園はコツメカワウソの飼育実績があり、JAZA(日本動物園水族館協会)に加盟している。このことから白羽の矢が立った。ちなみにこれまでもワシントン条約附属書IIに該当する他の動物や、爬虫類なども保護してきた。

「生まれてまだ間もなかったこともあり、人工保育器に入れて1日に10回ほどミルクをあげる必要がありました。小さいうちは温度管理や病気予防のケアもしなくてはならず、およそ一般家庭で飼えるものではありません」(園長)

現在はバックヤードに滞在しているが、拡張工事中のカワウソ舎がオープンしたら、一般公開される予定だ。また今後、他の園から9匹のコツメカワウソを譲り受けることになっている。たくさんのカワウソが見られるのは嬉しいけれど、そんなに大所帯でケンカとか起きないの…?

「コツメカワウソは単独生活のユーラシアカワウソとは違い、群れで行動する習性があるので大丈夫です」

そうだった、韓国カワウソセンターでもそう聞いていたんだった。さらに園長さんは「ニホンカワウソが絶滅したのは、カワウソ同士のケンカが原因ではない」と語った。

「ニホンカワウソは毛皮目的に乱獲されてきましたが、とくに戦時中、空軍パイロットの風防用に需要が高まりました。それで個体数が激減したので、ヌートリアやマスクラットの毛が代用されるようになったんです」

日本では戦争がカワウソの激減に影響していたとは! 戦争が憎い! 密輸も戦争もダメ、絶対!

「実は僕らもカワウソの認知度が上がればいいと思い、過去に人気投票をしてきたことを反省しています。これからは国家間の正当な取り引きを支持し、保全に興味を持ってもらえる取り組みをしていくことを目指したいと思っています」(園長)

再公開に向けて、元気に日々を満喫するカワウソたち

「続きはカワウソを見ながら」という言葉に甘え、園内に足を踏み入れる。ゲストのいない動物園はこれが初めてなので、ちょっと不思議な気持ちに。おたけびをあげるヨーロッパフラミンゴや、静かなること山の如しのハシビロコウをはじめ、動物たちは変わらない日々を送っているようだった。

「ギョギョッ」と鳴き声をあげながら近くまで来てくれた、ヨーロッパフラミンゴ
動かない鳥として有名なハシビロコウだが、この日はガバッと起き上がる瞬間を目撃してしまった

バックヤードに到着すると、ケージにいる2匹のカワウソが待ってましたとばかりに大騒ぎを始めた。歓迎されているのかと思ったものの、飼育担当の方が持っている、ワカサギと鳥のむね肉を欲しているようだ。それを証拠に食事を掲げると、手をのばして食らいつく。メスはなんでも食べるが、オスは魚より肉派だとその方が教えてくれた。まさかカワウソ界でも、若者の魚離れが進んでいるとは…。

ワカサギにカワウソまっしぐら。あまりに動きが早くて撮影が困難であった

同園では、コツメカワウソには鶏肉やワカサギ以外は甲殻類や、結石を予防するためのペーハーコントロールがされているペレットなどを与えているそうだ。魚離れが気にならないでもないが、元気ならそれでいい。たっぷり愛でてカワウソ舎にての再会を約束したのち、ケージをあとにした。

ハシビロコウもレッサーパンダも、命はすべて尊い

人がいようがいまいが、動物たちは1日1日を自分たちなりに過ごしている。その命は人間が支配できるものでは決してない。確かに動物園にも「狭い檻に閉じ込めてかわいそう」といった批判はある。しかし動物園には設備が揃っているし、飼育のノウハウもある。また種の保全や繁殖を研究するための機関でもある。個人のエゴでペットにするよりも、はるかに公益性があるのは事実だろう。

レッサーパンダは同園の人気者

動物と人間が共存しながら持続可能な世界を作ることが自分の夢だから、カワウソのペット化には強く反対している。税関は野生動物の違法な取り引きに日々目を光らせているし、密輸されても保護できる場所はある。しかしそれでいいという話では決してない。だから私も、自分ができることは何かを考えていきたいと思う。だって人間も、動物の一種に過ぎないのだから。

これからもカワウソはじめ、多くの動物を訪ね歩くことを誓いつつ、DANROでのかわうそ一人旅を締めくくりたい。もしどこかで弛緩しきった顔でカワウソを見つめる私に出会っても、決して笑わないように!

 

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